建設技術研究所は上値試す、23年12月期も収益拡大基調

建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。1月12日には、千葉市・幕張新都心地域において1月21日~22日に自動運転車実証実験を行うと発表した。22年12月期は業務単価上昇や業務効率化なども寄与して増益予想としている。さらに防災・減災対策の強化やインフラ老朽化対策の推進など、国土強靭化関連で事業環境が良好であり、23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は22年12月の上場来高値圏から地合い悪化や利益確定売りで一旦反落したが、好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社としている。

21年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業72%、海外建設コンサルティング事業28%、利益(調整前営業利益)が国内建設コンサルティング事業86%、海外建設コンサルティング事業14%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。

■グローバルインフラソリューショングループ目指す

グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

そして中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024では、目標数値として24年12月期の受注高850億円、売上高850億円、営業利益68億円、営業利益率8%、ROE10%以上、および建設技術研究所単体ベースの売上高550億円、営業利益率10%、社員数2300人を掲げている。

セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が630億円、売上高が630億円、営業利益が60億円、営業利益率が9.5%、海外建設コンサルティング事業の受注高が220億円、売上高が220億円、営業利益が8億円、営業利益率が3.6%の計画としている。

CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。

21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。

22年6月には「知的財産に関する基本方針」を策定した。また、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現に向けて、さまざまな提案に取り組むための方針として「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」を策定した。22年7月にはAIを適切に活用していくことを社内外に宣言することを目的として「CTIグループAI倫理指針」を策定した。また22年7月には、女性活躍推進法に基づく優良企業として、厚生労働大臣から「えるぼし」認定の二つ星(2段階目)を取得した。

22年9月には23年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を12億円(22年12月期は11億円)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算を2億円とした。

12月8日には、22年6月に策定した「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」の宣言内容の実現に向けて、具体的な推進計画を策定・公表した。

■新分野・新事業への展開を加速

22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。

22年2月には陸地コンサルタント(広島県東広島市)と業務提携した。また、東京都豊島区が実施するPPP事業(公民連携事業)である旧第十中学校跡地への野外スポーツ施設整備・管理運営事業において、地域企業を含むコンソーシアムの代表企業として事業を実施すると発表した。

22年3月には、22年1月に公表した「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」について、よりスピード感をもって達成するために、計画期間を従来の「22年1月1日~24年12月31日の3ヶ年」から「22年1月1日~23年12月31日の2ヶ年」に短縮した。また、大分県由布市と「地域自治を大切にした住み良さ日本一のまち・由布市」の実現に向けて、交通・都市・地域活性・防災をテーマに地域の課題解決を推進することを目的に包括連携協定を締結した。

22年8月には、下水管内の以上を早期に検知するためのリアルタイム水位監視および微生物調査・分析に関する技術を開発したとリリースしている。また、AIによる高潮・越波予測システムを開発し、情報提供サービスを開始したとリリースしている。

22年9月には、AIを用いた再現性の高い大気汚染予測モデルを作成し、これに基づく局地的、短期的な大気汚染物質濃度の情報提供サービスを開始した。また、大阪府四条畷市田原地域において自動運転車やデマンド交通の移動支援サービスの実証実験(10月1日~10月30日)を実施すると発表した。22年10月には長野技研コンサルタント(長野県長野市)と業務提携した。

22年10月には、関東バスおよび東日本電信電話と、東京都杉並区荻窪地域(荻窪駅南側エリア)において、グリーンスローモビリティの実証運行およびスマートフォンアプリを活用したMaaSの実証実験を実施(11月3日~13日の間)すると発表した。また、流域の渇水リスクをリアルタイムで評価する水循環予測情報システムの開発と技術サービス開始を発表した。

22年11月には、奈良公園周辺における公園利用者の周遊性向上を目指し、パーソナルモビリティやMaaSによる移動支援サービスの実証実験を実施した。

22年12月には、京都大学のインフラ先端技術コンソーシアムにおいて、構研エンジニアリング、鷺宮製作所、京都大学、北海道大学と共同で、電源を不要としたトンネル照明灯具の取付異常を検知するデバイス「フリークエンター」を開発し、国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」に登録されたと発表している。

1月12日には、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された事業計画(同社、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー、埼玉工業大学、東海理化の6者)に基づき、千葉市・幕張新都心地域において1月21日~22日に自動運転車実証実験を行うと発表した。

■22年12月期増益予想で23年12月期も収益拡大基調

22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、環境総合リサーチを新規連結、22年11月10日付で上方修正)は、売上高が820億円、営業利益が77億円、経常利益が79億円、親会社株主帰属当期純利益が53億円としている。配当予想(11月10日付で期末40円上方修正)は21年12月期比40円増配の100円(期末一括)としている。

前回予想に対して売上高を40億円、営業利益を13億円、経常利益を14億円、親会社株主帰属当期純利益を10億円、それぞれ上方修正した。国内コンサルティング事業における堅調な受注に加えて、業務単価上昇や業務効率化なども寄与する見込みだ。なお収益認識会計基準適用前の21年12月期実績(売上高744億09百万円、営業利益69億91百万円、経常利益71億18百万円、親会社株主帰属当期純利益44億71百万円)との単純比較では、営業利益は10.1%増益、経常利益は11.0%増益、親会社株主帰属当期純利益は18.5%増益となる。

第3四半期累計は、売上高が614億46百万円、営業利益が65億13百万円、経常利益が66億89百万円、親会社株主帰属四半期純利益が45億16百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が69億24百万円増加、売上原価が49億58百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ19億66百万円増加している。なお収益認識会計基準適用前の前年同期実績は売上高が516億02百万円、営業利益が50億03百万円、経常利益が50億65百万円、親会社株主帰属四半期純利益が32億55百万円だった。

グループ合計連結受注高は前年同期比4.4%増の704億59百万円だった。国内建設コンサルティング事業では、政府が推進している防災・減災対策関連やインフラ老朽化対策に関わる国土強靭化関連などが堅調に推移した。海外建設コンサルティング事業もコロナ禍に伴う制限解除で正常化に向かった。なお22年3月にはグループ会社の建設技研インターナショナルがクボタ建設、神鋼環境ソリューション、北九州ウォーターサービス、TECインターナショナルと構成するコンソーシアムで、カンボジア王国カンダール州タクマウ市におけるタクウマ上水道拡張計画を受注している。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が235億38百万円で営業利益が34億90百万円、第2四半期は売上高が183億06百万円で営業利益が19億72百万円、そして第3四半期は売上高が196億02百万円で営業利益が10億51百万円だった。

22年12月期は増益予想と順調である。さらに防災・減災対策の強化やインフラ老朽化対策の推進など、国土強靭化関連で事業環境が良好であり、23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

株価は22年12月の上場来高値圏から地合い悪化や利益確定売りで一旦反落したが、週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返す動きだ。好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。1月12日の終値は3130円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS374円83銭で算出)は約8倍、前期推定配当利回り(会社予想の100円で算出)は約3.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2734円99銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約443億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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