ヤマシタヘルスケアホールディングスは下値固め完了、23年5月期2Q累計減益だが営業・経常利益は通期予想を超過達成

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、九州を地盤とする医療機器専門商社を中心にヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。さらにサステナブルな成長の実現に向けて、30年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定している。23年5月期はコロナ対策補助金による一時的な対策需要が見込めないため減収減益予想としている。第2四半期累計は販管費の増加などで営業・経常減益、特別損失(貸倒引当金繰入額)の計上で最終赤字だった。そして通期減益予想を据え置いた。ただし第2四半期累計の営業・経常利益は通期予想を超過達成しており、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化の影響で反発力の鈍い展開だが、22年9月の昨年来安値を割り込まずに推移して下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・輸入・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営支援や介護施設を含む病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングサービス、イーディライト(21年11月持分法適用関連会社から連結子会社に異動)は医療機関の予約サイト制作取次などのソリューションサービス、エムディーエックス(22年2月設立)はDX新技術を活用した医療・介護施設・在宅向け新製品・サービスの開発を展開している。

 22年5月期セグメント別売上高(セグメント間取引調整前)は医療機器販売業が547億95百万円(一般機器分野が84億41百万円、一般消耗品分野が231億81百万円、低侵襲治療分野が125億63百万円、専門分野が95億61百万円、情報・サービス分野が12億12百万円)で、医療機器製造・販売業が2億87百万円、医療モール事業が68百万円だった。セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が19億74百万円で、医療機器製造・販売業が20百万円、医療モール事業が▲46百万円、調整額が▲10億17百万円だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い特性がある。

■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進

 中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値には最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。

 重点施策には、グループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を掲げている。

 医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

 また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始している。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始している。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

■長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」

 ESG経営・SDGsへの取り組みでは、21年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。21年8月にはESG基本方針を策定し、地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。22年3月には山下医科器械が経済産業省の健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2022(大規模法人部門)の認定を受けた。

 さらに22年7月にはサステナブルな成長の実現に向けて、2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。

 22年9月には、乳がん検査デバイスとなるマンモエコーシステムなど超音波を用いた医療用機器の開発・販売を行うマイクロソニック(東京都国分市)に出資した。ESG活動の一環として、超音波を用いた社会性の高い製品の実現化に寄与することを目的に、マイクロソニックが持つ知財や研究開発を支援する。

■23年5月期2Q累計減益だが、営業・経常利益は通期予想を超過達成

 23年5月期の連結業績予想は売上高が22年5月期比3.7%減の531億17百万円、営業利益が43.6%減の5億25百万円、経常利益が43.5%減の5億66百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が43.2%減の3億95百万円としている。配当予想は22年5月期比36円減配の46円(期末一括)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比1.2%増の276億61百万円、営業利益が9.9%減の5億98百万円、経常利益が10.9%減の6億24百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億01百万円の赤字(前年同期は4億71百万円の黒字)だった。

 低侵襲治療分野や専門分野が牽引して増収だが、販管費の増加などで営業・経常減益だった。営業利益65百万円減益の要因分析は、売上総利益の増加+73百万円、人件費他関連費の増加▲1億11百万円、発送運賃および旅費交通費他の増加▲8百万円、保守料・車両費その他の設備関連費の増加▲19百万円としている。

 親会社株主帰属四半期純利益は特別損失(貸倒引当金繰入額6億11百万円)の計上で最終赤字だった。22年11月に公表したジェミックに対する債権取立不能または取立遅延のおそれの発生について、債権の全額6億11百万円を取立不能見込額として、同額を特別損失の貸倒引当金繰入額として計上した。当該債権については引き続き回収交渉に注力するとしている。

 医療機器販売業は、売上高が1.3%増の275億96百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が3.0%減の10億41百万円だった。売上高の内訳は、一般機器分野が22.2%減の32億69百万円、一般消耗品分野が2.2%増の118億80百万円、低侵襲治療分野が9.2%増の68億14百万円、専門分野が10.1%増の50億31百万円、情報・サービス分野が1.6%減の6億01百万円だった。

 コロナ対策補助金による医療機関の設備投資需要減少などで一般機器分野が低調だったが、新型コロナ検査試薬の増加や検査・手術件数回復に伴う診察材料の増加などで一般消耗品分野、低侵襲治療分野、専門分野が堅調に推移した。

 医療機器製造・販売業は売上高が2.7%増の1億40百万円で利益が21.6%減の3百万円、医療モールは売上高が1.6%減の33百万円で利益が39.1%減の0百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が134億71百万円で営業利益が2億59百万円、第2四半期は売上高が141億90百万円で営業利益が3億39百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。コロナ関連以外の診療や手術症例等については堅調に推移するが、コロナ対策補助金による一時的な対策需要が見込めないため減収・大幅減益予想としている。ただし保守的だろう。第2四半期累計の進捗率は売上高52.1%、営業利益113.9%、経常利益110.2%である。第2四半期累計の営業・経常利益は通期予想を超過達成しており、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化の影響で反発力の鈍い展開だが、22年9月の昨年来安値を割り込まずに推移して下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。1月13日の終値は1542円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS154円92銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約3.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3126円18銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約39億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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