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ファンデリーは反発の動き、23年3月期黒字転換予想で収益改善基調
- 2023/1/17 09:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ファンデリー<3137>(東証グロース)は、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業、ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業、および周辺領域のマーケティング事業を展開し、ヘルスケア総合企業を目指している。23年3月期は黒字転換予想としている。MFD事業の紹介ネットワーク数拡大による再成長への回帰、CID事業のコアファン獲得などによる損益改善、マーケティング事業の伸長を推進する方針だ。CID事業ではPREMIUMを超えた最高峰ブランド「SUPER PREMIUM」シリーズの販売を開始した。商品構成変化による平均単価上昇も期待される。コロナ禍影響の緩和や積極的な事業展開で収益改善基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して上場来安値を更新する場面があったが、その後は反発の動きを強めている。底打ちして出直りを期待したい。なお1月31日に23年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■健康冷凍食の宅配を主力としてヘルスケア総合企業を目指す
企業理念のビジョンに「豊かな未来社会」の実現を掲げ、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD(Medical Food Delivery)事業、20年7月開始したハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID(Cooking Immediately Delivery)事業、および周辺領域のマーケティング事業(食品メーカー等の企業向けマーケティング支援サービス)を展開している。
22年3月期の事業別売上高構成比は、MFD事業が78%、CID事業が7%、マーケティング事業が14%だった。なお21年4月には、食や健康に関する新たなWEBサービスの提供や収益源の多様化を推進することを目的として、メディア事業部を新設している。
成長戦略としてヘルスケア総合企業を目指し、CID事業の埼玉工場が稼働してSPA(製造小売業)モデルへの事業構造転換を推進している。一人暮らし高齢者、生活習慣病患者、食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。
なお22年3月には、フードロス削減や一食二医社会の実現など、ESG・SDGsへの取り組みを発信するWEBページを公開している。また女性の活躍を支援し、22年4月には女性役員・管理職の人数が10名(女性役員1名、女性管理職9名、女性管理職比率81.8%)に達したと発表している。
22年10月には、ディップ<2379>が主催する小学生を対象としたキャリア教育「バイトルKidsプログラム」への参加を発表した。子供たちの仕事に対する考え方や価値観の育成に貢献することを目指す。
■健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業
MFD事業は、健康冷凍食(冷凍弁当)の通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。製造は外部に委託している。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。
全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」「たんぱく質調整食」「ケア食」そして「パワーアップ食」など多様な健康食の開発やカウンセリングを強みとして、栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。製造は外部に委託している。
アクティブ会員数(過去1年以内に1回以上購入した会員数)は22年3月期末時点で21年3月期末比1184人減少の2万9504人、23年3月期第2四半期末時点で2万8550人となった。定期コース会員数は22年3月期末時点で21年3月期末比571人減少の7302人、23年3月期第2四半期末時点で6905人となった。コロナ禍に伴う外来患者減少などで病院等の紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得が減少しているため、紹介ネットワーク活性化に向けて22年5月に神奈川支社を開設した。営業拠点としては本社(東京都北区)および大阪支社に続いて3拠点目となる。紹介ネットワーク数(23年3月期第2四半期末時点で1万9865箇所)2万3500箇所に向けてアクションを開始した。
■ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業
ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業は、21年3月期第2四半期に開始した自社工場(埼玉工場)で製造する冷凍食の製造小売事業である。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティの高さを特徴としている。
管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」として、週6種類以上のペースで新メニューを発売している。
コスト面では、全国の生産者で構成する「旬すぐ共栄会」を通して、栄養価の高い旬の食材を収穫量が多く価格が下がる時期に仕入れる。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。
商品力強化の面では21年12月に、メニュー評価などでAIが顧客の嗜好を学習し、毎日発売される約250種類のメニューから一人ひとりに最適化したメニューを提案するAI旬すぐサービスを開始した。ワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズ(498円)を販売し、さらにPREMIUMを超えた最高峰ブランド「SUPER PREMIUM」シリーズ(598円以上)を創設して22年12月20日より販売を開始した。商品構成変化による平均単価上昇も期待される。
知名度向上、拡販、収益性改善に向けた各種取り組みでは、21年3月には新メニューを発表するYouTubeチャンネル「旬チューバー」がYouTubeパートナープログラムに承認された。今後はチャンネルの収益化も可能となる。22年5月には支払方法にPayPay決済を導入すると発表した。決済手段の拡張で利便性を向上させる。なお23年3月期第2四半期末時点のアクティブ会員数は8191人、AI旬すぐ会員数は1641人となっている。
■周辺領域のマーケティング事業
マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。
■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」
日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」も展開している。20年4月から3年間の活動を予定している。
賛同企業として20年6月ににんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミン、20年7月に東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、20年8月にピエトロ、湖池屋、宝酒造、20年9月に田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズ、21年3月に雪印メグミルク、21年4月に三幸製菓、くらこん、エースコック、22年2月に味の素冷凍食品、22年5月に宮島醤油、東京ソルト、22年11月にカネリョウ海藻が新規加入し、賛同企業は31社、認定商品は80商品となっている。
■23年3月期黒字転換予想で収益改善基調
23年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が22年3月期比2.5%増の32億円、営業利益が1億05百万円の黒字(22年3月期は1億77百万円の赤字)、経常利益が1億14百万円の黒字(同1億58百万円の赤字)、そして当期純利益が79百万円の黒字(同19億48百万円の赤字)としている。配当予想は復配の3円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比12.6%減の13億97百万円で、営業利益が17百万円の赤字(前年同期は18百万円の黒字)、経常利益が41百万円の赤字(同4百万円の黒字)、そして四半期純利益が41百万円の赤字(同1百万円の黒字)だった。
コロナ禍の影響などで全体として売上回復が遅れ、CID事業における製品評価損の増加も影響して各利益は赤字だった。ただしCID事業における減価償却費の減少や広告宣伝費の期ズレも寄与して、営業利益と経常利益は計画(営業利益35百万円の赤字、経常利益59百万円の赤字)に対して赤字幅が縮小して着地した。
MFD事業は売上高が8.5%減の11億38百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が14.4%減の2億24百万円だった。コロナ禍に伴う外来患者減少などで病院等の紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得が減少した。CID事業は売上高が52.3%減の80百万円、利益が2億20百万円の赤字(前年同期は2億02百万円の赤字)だった。原価率を低減できず、収益が悪化した。マーケティング事業は売上高が3.7%減の1億78百万円、利益が1.6%減の1億27百万円だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が6億74百万円で営業利益が17百万円の赤字、第2四半期は売上高が7億23百万円で営業利益が0百万円の黒字だった。営業損益は改善傾向である。
通期予想は据え置いている。セグメント別の計画は、MFD事業の売上高が22年3月期比0.5%増の24億58百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が1.7%増の5億27百万円、CID事業の売上高が4.1%増の2億42百万円で利益が4億83百万円の赤字(22年3月期は7億50百万円の赤字)、マーケティング事業の売上高が12.3%増の5億円で利益が10.0%増の3億68百万円としている。
MFD事業はプラス成長への回帰を目指す。22年4月から医療機関への訪問を再開し、さらに本社・大阪支社および新設した神奈川支社の3拠点で専任の担当者を配置している。また、特定の栄養素を重点的に補給できるように調整した食事として、メニューに「パワーアップ食」を追加した。CID事業は「AI旬すぐ」コアファン獲得や「SUPER PREMIUM」シリーズ新設などで損益改善を推進する。マーケティング事業は受注が堅調であり、通期ベースでは過去最高を目指す。コロナ禍影響の緩和や積極的な事業展開で収益改善基調を期待したい。
■株価は反発の動き
22年10月17日発表の自己株式取得(上限5万株・25百万円、取得期間22年11月1日~23年2月28日)については、22年12月31日時点の累計取得株式総数が2万2200株となっている。
株価は地合い悪化も影響して上場来安値を更新する場面があったが、その後は反発の動きを強めている。底打ちして出直りを期待したい。1月16日の終値は263円、今期予想PER(会社予想のEPS12円49銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の3円で算出)は約1.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS99円25銭で算出)は約2.6倍、そして時価総額は約17億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)