アスカネットは調整一巡、23年4月期は上振れの可能性

 アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力としている。さらに空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業も量産化に向けた動きが加速している。1月17日には、米国ラスベガスで開催された世界最大級の電子機器・IT展示会「CES2023」出展報告をリリースし、ASKA3Dプレートを使用した空中ディスプレイの持つ近未来感やエンターテイメント性が高く評価されたとしている。23年4月期は増収増益予想としている。第2四半期累計が想定以上の大幅増益と順調であり、下期の構成比が高い収益特性なども勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中ディスプレイも推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力として、非接触ニーズでも注目される空中ディスプレイ(空中結像ASKA3Dプレート)の量産化・拡販を推進している。セグメント区分は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業としている。

 22年4月期のセグメント別構成比は、売上高がフューネラル事業43.8%、フォトブック事業53.9%、空中ディスプレイ事業2.3%、営業利益(全社費用等調整前)がフューネラル事業70.9%、フォトブック事業64.1%、空中ディスプレイ事業▲35.0%だった。

 フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 フューネラル事業は、専門オペレーターによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器売上などである。

 1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。22年4月期末時点のハード設置件数は21年4月期末比116ヶ所増加の2694ヶ所、22年4月期の遺影写真加工枚数(新規加工枚数)は21年4月期比13.0%増の40万3363枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約30%(1位)となる。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを使用した焼香台、動画やサイネージによる新たな演出ツールの提供など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破し、全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透している。21年8月にはコロナ禍の影響で報告が遅くなりがちな葬儀の報告をスムーズに行えるサービス「tsunagoo AFTER」をリリースした。

 アライアンス戦略では、22年5月にMARKSと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とMARKSの「成仏不動産」のサービス連携を開始する。また、AGE technologiesと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とAGE technologiesの「そうぞくドットコム」のサービス連携を開始する。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。

 全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け(BtoB)の「アスカブック」と、一般消費者向け(BtoC)の「マイブック」を主力として、NTTドコモのフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を供給するOEMも拡大している。22年4月期末時点のBtoB契約件数は21年4月期比1015件増加の1万5651件、マイブック会員数は10.0%増の30万9684人となった。

 コロナ禍でウエディング関連や旅行関連が厳しい環境のため、BtoBではスタジオ写真向けや建築写真向け製品などの拡販、BtoCでは「子どもの成長記録」や「カレンダーや卒業アルバムなどの季節製品」の拡販、等身大アルバム付き出張撮影サービスなどを推進している。22年1月には「マイブック」が、ワールドスポーツコミュニティ(愛知県名古屋市)が提供するSDGs認定の世界初のスポーツ×教育プログラム「kidss」に参画した。

 22年8月には、仮想空間で活動するメタバースユーザーの「おもい」を表現していく「かえでラボ」を設立し、第1弾として仮想空間上で撮影された写真を現実空間でカタチにするテストマーケティングを開始した。

 22年12月には、結婚式相談カウンターDXサービス「トキハナ」を中心に結婚式サポート事業を展開しているリクシィとの資本業務提携(第三者割当増資引受、出資比率は非公開)を発表した。「マイブック」や「トキハナ」の拡大に向けて相互に顧客紹介を行うほか、両社のノウハウを活用した新たな写真関連サービスやビジネスモデルを共同開発する。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレートの量産化推進

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一して、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートの従来よりも大きい250mm角サイズを開発して21年4月からサンプル販売を開始した。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。さらにタイリング技術の確立によって、中型プレートの23年4月期中の市場投入も目指している。

 生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。

 営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。

 21年7月にはASKA3Dプレートが、ENEOSが実施する非接触セルフ給油機の実証実験に採用された。21年12月にはASKA3Dプレートが、マクセルの空間映像マンマシンインターフェイスAFMIに採用された。従来の空間映像表示装置よりも高輝度かつ高精細な空中映像を可能にした。

 22年1月には、大和ハウス工業およびパナソニックとの「空中タッチインターホン」共同実証実験を発表した。大和ハウス工業が開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」(川崎市高津区)のマンションサロンエントランスにおいて、ASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を行う。

 22年2月には、セブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗(東京都内6店舗)において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。

 22年3月には、NTTドコモのリモート接客システム「TimeRep」とASKA3Dプレートを組み合わせた「完全非接触型リモート接客システム」が、NTTドコモ中国支社から広島県庁に導入された。自治体としては全国で初めての導入となる。

 22年6月には、ASKA3Dプレートを搭載した非接触ホログラフィックエレベータ操作端末が、米国クリーブランド・ホプキンス国際空港に設置された。ASKA3Dプレートの販売代理店である中国のYesar Electronics Technology(Shanghai)がCSA認定を取得し、エレベータメーカーの製品テストをクリアした。

 22年9月には、ASKA3Dプレートの北米地域におけるパートナー企業であるHolo IndustriesがASKA3Dプレートを使用した独自技術の「Holographic Touch」と、Mastercard社のタッチレス決済機能を組み合わせた非接触クレジットカード決済システムを共同開発中とリリースしている。セキュリティなどの実装を経て、22年末までにパイロットプログラムとして特定の加盟店に展開予定である。

 22年11月にはASKA3Dの新プロモーション動画をリリースした。具体的な用途をよりイメージしやすい内容となっている。

 なお1月17日には、米国ラスベガスで開催された世界最大級の電子機器・IT展示会「CES2023」出展報告(ASKA3D北米地域パートナー企業であるHolo Industriesと共同出展)をリリースしている。ASKA3Dプレートを使用した大型キオスク筐体、Hyundai自動車のコンセプトカーに搭載された車載エンターテイメントシステム、Holo IndustriesがMastercardと共同開発した非接触端末、セルフチェックアウト筐体「Bora Bora」などを展示し、ASKA3Dプレートを使用した空中ディスプレイの持つ近未来感やエンターテイメント性が高く評価されたとしている。

■23年4月期増収増益予想、2Q累計大幅増益と順調で通期上振れの可能性

 23年4月期の業績(非連結)予想は売上高が22年4月期比8.8%増の68億90百万円、営業利益が2.3%増の4億50百万円、経常利益が8.2%増の4億90百万円、当期純利益が4.6%増の3億48百万円としている。配当予想は22年4月期比1円増配の8円(期末一括)としている。

 コロナ禍の影響緩和などで増収増益・増配予想としている。売上高の計画は、葬儀関連のフューネラル事業が4.9%増の29億10百万円、写真集関連のフォトブック事業が6.4%増の36億30百万円、空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業が137.1%増の3億50百万円としている。

 利益面は、フューネラル事業における画像処理オペレーターの大幅な人員拡充、空中ディスプレイ事業における積極的な研究開発活動の継続、各事業における原材料費や仕入価格の上昇、展示会再開に伴う広告宣伝費の増加など、コスト増加を考慮して小幅増益予想としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比7.8%増の31億60百万円、営業利益が21.1%増の1億37百万円、経常利益が28.1%増の1億50百万円、四半期純利益が29.4%増の1億03百万円だった。想定以上の大幅増益と順調だった。フューネラル事業において遺影写真加工枚数が想定以上に増加し、写真集関連のフォトブック事業においてはコロナ禍の影響が和らいだ。

 セグメント別(内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は売上高が12.8%増の14億43百万円で営業利益が4.1%増の3億12百万円だった。コロナ禍も影響して葬儀の小規模化傾向が継続しているが、売上面では遺影写真加工枚数が想定以上に増加し、画像処理収入やサプライ品売上が好調だった。全国的な葬儀施行件数の増加、自社営業による葬儀社との新規契約獲得も寄与した。ITテクノロジーを活用した「葬テック」として提供している「tsunagoo」サービスも順調だった。利益面は、画像処理部門オペレーターを中心とする人員増強で人件費が増加し、広告宣伝費や旅費交通費なども増加したが、増収効果で吸収した。

 写真集関連のフォトブック事業は売上高が4.6%増の16億68百万円で営業利益が14.2%増の2億82百万円だった。売上面では、一般消費者向け「マイブック」はコロナ禍による旅行やイベントの自粛、マスク着用の常態化に伴う撮影機会の減少で厳しい状況が続いているが、プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」のウエディング市場において、コロナ禍の影響が和らいで売上が回復傾向となった。家族写真や子ども写真などスタジオ向け写真集も堅調だった。利益面は、原材料価格高騰の影響があったが、増収効果に加えて、売上増加に伴う稼働率回復が寄与した。

 空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業は売上高が89.6%減の51百万円で営業利益が1億61百万円の損失(前年同期は1億70百万円の損失)だった。売上面では、コロナ禍による営業活動制限の影響で、海外を中心に有力案件が長期化傾向となった。利益面は、展示会出展の増加に伴って広告宣伝費が増加したが、研究開発費のコントロールなどで営業損失が縮小した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が15億43百万円で営業利益が52百万円、第2四半期は売上高が16億17百万円で営業利益が85百万円だった。

 通期業績予想は据え置いている。第2四半期累計の進捗率は売上高が45.9%、営業利益が30.4%だが、第2四半期累計がフューネラル事業における遺影写真加工枚数の想定以上の増加などで想定以上の大幅増益と順調であり、下期の構成比が高い収益特性なども勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。21年2月には、利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。1月17日の終値は910円、今期予想PER(会社予想のEPS20円68銭で算出)は約44倍、今期予想配当利回り(会社予想の8円で算出)は約0.9%、前期実績PBR(前期実績のBPS358円24銭で算出)は約2.5倍、そして時価総額は約159億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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