ゼリア新薬工業は反発の動き、23年3月期2桁増収増益予想、さらに上振れの可能性

 ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。医療用医薬品事業ではアサコール高用量製剤の海外販売国拡大、フェインジェクトやエントコートの市場浸透、ティロッツ社の営業体制強化、コンシューマーヘルスケア事業では既存主力製品に次ぐ製品群の育成、西洋ハーブ剤など特徴ある製品群の市場認知度向上による事業拡大を推進している。23年3月期は2桁増収増益予想としている。第2四半期累計が計画を上回る大幅増収増益だったことを勘案すれば、通期会社予想も上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初に昨年来高値圏から急反落の形となったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業62%、コンシューマーヘルスケア事業38%、その他0%、利益(全社費用等調整前営業利益)構成比は医療用医薬品事業62%、コンシューマーヘルスケア事業36%、その他2%だった。地域別売上比率は日本59%、欧州35%、その他6%だった。

■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども拡大している。20年9月に国内で販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトについては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。また、アステラス製薬の英国子会社が欧州を中心に販売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)については、20年11月に欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継する資産譲渡契約を締結し、21年6月に欧州テリトリーでの製造販売権承継をほぼ完了した。残る地域についても順次承継予定である。

 22年3月期の売上高はアサコールが21年3月期比5.9%増の174億76百万円、ディフィクリアが52億11百万円(21年3月期は2億59百万円)、エントコートが7.0%減の44億80百万円、アコファイドが89.2%増の31億54百万円、その他が0.2%減の66億84百万円だった。なおアコファイドについては、アステラス製薬<4503>との日本での共同販促を21年3月で終了し、21年4月以降は単独プロモーションに切り替えている。

 海外展開については、アサコールは、欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中(21年12月時点でドイツ、フランスをはじめとする19ヶ国で販売中)である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。またイタリアのMenariniグループの中国現地法人に独占的販売権を供与して、中国で21年5月販売開始した。

 アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。

 子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。

■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力

 コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。

 なお22年3月期の売上高は、ヘパリーゼ群が21年3月期比17.5%増の77億70百万円(医薬品が18.9%増の43億45百万円、清涼飲料水・栄養補助食品が15.7%増の34億25百万円)で、コンドロイチン群が4.6%減の51億35百万円、ウィズワン群が5.9%減の13億59百万円、その他(殺菌消毒薬など)が12.0%減の81億04百万円だった。

 事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。

 西洋ハーブ関連では21年12月に、軽度の静脈還流障害による足のむくみを改善する内服薬「ベルフェミン」(要指導医薬品)を発売した。欧州において下肢の静脈疾患(慢性静脈不全症)の治療に伝統的に使用されてきたセイヨウトチノキ種子の乾燥エキスを主成分としている。22年3月には、過敏性腸症候群(IBS)改善薬「コルペルミン」(要指導医薬品)を発売した。ペパーミントのオイルを有効成分とする医薬品である。ティロッツ社によって開発され、1981年に英国で発売されて以降、スイスやドイツをはじめ十数ヶ国でIBSの諸症状を改善する一般用医薬品として販売されている。国内で実施された過敏性腸症候群患者を対象とした臨床試験において有効性と安全性が確認された。

 22年3月には11種類の美容液成分を配合した高機能オールインワンジェル「イオナ スパ&ミネラル エッセンス ジェルEX」を発売、22年4月には11種類の有効成分を配合したOTC点眼薬「ビュークリアHi40アクティブ」(第3類医薬品)を発売、22年8月にはオールシーズン使用可能な多機能除菌スプレー「マジックバリア除菌スプレー」(雑貨)を発売、22年10月にはローヤルゼリーを有効成分として配合した滋養強壮保健剤「ハイゼリー顆粒EX」(第3類医薬品)を発売した。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(22年11月2日現在)は以下の通りである。

 Z-338(自社品、一般名アコチアミド)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を適応症として第3相段階、食道胃接合部通過障害を適応症として第2相(九州大学で医師主導治験)段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。なお九州大学における医師主導治験は、日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に採択されている。

 Z-338の導出では、Faes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてメキシコおよびホンジュラスで承認取得した。またFaes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてチリ、コロンビア、ペルー、エクアドル、ドミニカ共和国、コスタリカ、グアテマラ、パナマにおいて承認申請中、Meiji Seikaファルマが機能性ディスペプシアを適応症としてタイ、インドネシアにおいて承認申請中である。

 高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第3相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。

■アサコールやエントコートの拡大などを推進

 収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業ではアサコール高用量製剤の海外販売国拡大、フェインジェクトやエントコートの市場浸透、ティロッツ社の営業体制強化、コンシューマーヘルスケア事業では既存の主力製品に次ぐ製品群の育成、西洋ハーブ剤など特徴ある製品群の市場認知度向上による事業拡大を推進している。

 また持続的成長に向けて、消化器領域および既存事業との親和性の高い領域の薬剤導入、M&A、自社製品の海外導出を推進する方針としている。

■23年3月期2桁増収増益予想、さらに上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比10.9%増の660億円、営業利益が10.0%増の70億円、経常利益が17.9%増の70億円、親会社株主帰属当期純利益が41.4%増の56億円としている。配当予想は22年3月期比1円増配の36円(第2四半期末18円、期末18円)としている。連続増配予想である。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比17.9%増の337億12百万円、営業利益が120.6%増の58億94百万円、経常利益が66.3%増の51億82百万円、親会社株主帰属四半期純利益が89.0%増の39億98百万円だった。

 期初予想(売上高330億円、営業利益35億円、経常利益35億円、親会社株主帰属四半期純利益28億円)を上回る大幅増収増益だった。医療用医薬品事業の海外の好調が牽引し、コンシューマーヘルスケア事業も回復基調となった。なお営業外では為替差損益が悪化(前年同期は為替差益4億17百万円計上、今期は為替差損7億48百万円計上)した。

 医療用医薬品事業は売上高が19.5%増の215億05百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が90.4%増の58億67百万円だった。海外市場において、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールが高用量製剤アサコール1600mgを中心に好調に推移した。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコート(国内販売名ゼンタコート)も伸長した。クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアも営業リソースの積極投入で売上拡大した。主要製品の売上高は、アサコールが16.2%増の98億81百万円、ディフィクリアが70.9%増の38億95百万円、エントコートが30.7%増の29億35百万円、アコファイドが2.4%減の15億41百万円だった。

 コンシューマーヘルスケア事業は売上高が15.2%増の121億31百万円で、利益が24.2%増の24億54百万円だった。ヘパリーゼ群についてはコロナ禍の影響が残っているものの、医薬品ヘパリーゼ群やコンビニエンスストア向けヘパリーゼW群が大幅に伸長した。コンドロイチン群は積極的な広告宣伝投資の効果で堅調だった。植物性便秘薬ウィズワン群は競合品の影響などで減収だった。主要製品の売上高はヘパリーゼ群が45.1%増の46億98百万円、コンドロイチン群が1.5%増の26億34百万円、ウィズワン群が4.1%減の6億20百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期売上高が163億05百万円、営業利益が29億77百万円、経常利益が29億74百万円、第2四半期は売上高が174億07百万円、営業利益が29億17百万円、経常利益が22億08百万円だった。第2四半期は営業外費用で為替差損が拡大した。

 通期の連結業績予想は据え置いて2桁増収増益予想としている。主力製品が堅調に推移し、研究開発費(4.4%増の50億円)や広告宣伝費(47.7%増の29億円)の増加を吸収する見込みだ。医療用医薬品事業は海外市場においてディフィクリアやアサコールの伸長、国内市場においてアコファイドや20年9月に販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトの伸長を見込み、コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群をはじめとする主力品の回復を見込んでいる。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が51.1%、営業利益が84.2%、経常利益が74.0%、親会社株主帰属当期純利益が71.4%となる。コロナ禍影響や為替動向の不透明感を考慮して通期予想を据え置いているが、第2四半期累計が計画を上回る大幅増収増益だったことを勘案すれば、通期会社予想も上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈している。なお22年3月末対象から、株主優待品コース内容を変更(旧Dコースのコンドロイチン配合夜間集中美容液を、新Dコースとしてスパ発想のオールインワン化粧品に変更、詳細は会社HP参照)した。

■株価は上年初来高値圏で堅調

 なお5月11日に発表した自己株式取得(上限80万株・18億円、取得期間22年5月16日~22年11月4日)については、11月2日に取得期間を23年5月12日まで延長すると発表している。

 株価は年初に昨年来高値圏から急反落の形となったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。1月18日の終値は2136円で、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS126円73銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1236円09銭で算出)は約1.7倍、そして時価総額は約1135億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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