【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】コーヒー1日1杯の増加で糖尿病がl0%低下する
膵癌患者さんの既往歴では糖尿病が25.9%と最も頻度が高く、正常人と比べ2倍の危険率といわれます。私たちも含め多くの研究でも、糖尿病患者さんは大腸癌になりやすいことも報告されています。糖尿病を放置しておくと糖尿病性壊疽、失明に至る網膜症や透析が必要な腎症が代表的な合併症ですが、更に怖いのは前癌状態なのかもしれません。
糖尿病予防には運動や食事制限が重要と言われていますが、米国ハーバード大学からコーヒーが糖尿病予防に効果があることが昨年4月報告されました。166万人の4年間追跡で、糖尿病発症リスクが1日コーヒー1杯以上増加した人では11%低下、1杯以上減少した人は17%上昇したとの結果でした。4年間継続して1日3杯以上飲む人では、最も糖尿病になりにくかったことも報告されています。カフェインレスコーヒーや紅茶は、有意な予防効果は認められませんでした。
コーヒーを飲む習慣は、我が国でも毎日飲む人は約50%にも上ります。今年3月国立がん研究センターから、1日のコーヒー摂取量が3~4杯の人では、ほとんど飲まない人に比べて心疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患による死亡リスクが36%・43%・40%も低値であったと報告されました(Am Clin Nutr,2015年3月11日)。コーヒーには、血糖吸収の減弱や血圧低下作用があるクロロゲン酸や、血管内皮機能を改善するカフェイン、抗血栓作用があるピリジニウムが含まれており、これらが死亡リスク低下に寄与したと考えられています。しかしこの研究では、糖尿病患者さんではコーヒーによる全死亡リスクの低下は認められませんでした。
コーヒーの健康効果については十分解明されていませんが、少なくとも1日3杯以上の飲用は案外効果的かもしれません。寝る前の飲用を避けながら、1日2杯飲む人は3杯目を考慮なさってはどうでしょうか。(元気会横浜病院院長・元自衛隊中央病院消化器内科部長)