【どう見るこの株】サーキュレーションは23年7月期大幅増収増益予想で中期成長も期待

どう見るこの株

サーキュレーション<7379>(東証グロース)は、高度な専門知識を持つ外部プロ人材の経験・知見を複数の企業でシェアし、あらゆる経営課題を解決するプロシェアリング事業を展開している。23年7月期は大幅増収増益予想としている。稼働プロジェクト数が順調に増加し、人件費の増加などを吸収する見込みだ。第1四半期は人件費の増加で減益となり、通期予想に対する進捗率も低水準の形だが、稼働プロジェクト数が増加基調であること、プロジェクトの積み上げによってストック収益が増加するリカーリング型ビジネスモデルであることなどを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能と考えられる。さらに中期成長も期待したい。株価は地合い悪化も影響して軟調展開だったが、22年12月の上場来安値圏から反発して底打ち感を強めている。出直りを期待したい。

■プロシェアリング事業を展開

21年7月東証マザーズ市場に上場、22年4月の市場再編に伴って東証グロース市場に移行した。ビジョンに「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」を掲げ、高度な専門知識を持つ外部プロ人材(22年7月末時点の登録者総数2万420名)の経験・知見を複数の企業でシェアし、あらゆる経営課題を解決するプロシェアリング事業を展開している。

サービス区分としては、経営・新規事業開発・人事・マーケティング・ファイナンス等ビジネス領域全般の経営課題解決を支援するプロシェアリングコンサルティングサービス、CTO・エンジニアリング・デザイン等の領域で登録エンジニア/デザイナーを活用できるFLEXY(フレキシー)サービス、新規事業起ち上げを支援するOpen Idea(オープンアイデア)サービス、事業承継・M&A等を支援する人が繋ぐ事業承継サービスを展開している。契約形態は準委任(一部請負)で、支援形態は実働およびアドバイザリーとなる。

課金形態は人が繋ぐ事業承継サービスが月額課金と成功報酬で、それ以外は月額課金としている。プロジェクトの積み上げによってストック収益が増加するリカーリング型ビジネスモデルである。

さらに新サービスとして21年8月に、フリーランスマネジメントSaaSのPROBASEの提供を開始した。複数にわたる副業/フリーランス契約を一元管理し、企業の管理オペレーションの効率化とフリーランスの活用促進を図る。

同社の特徴・強みとしては、各分野の一流のプロ人材を揃えていることに加えて、プロ人材の職能データと法人(顧客)の課題データを蓄積していることがある。このデータの蓄積をアップセル・クロスセル戦略によって稼働プロジェクトの増加に繋げている。

なお22年7月期の売上高は21年7月期比29.0%増の71億04百万円、サービス別売上高はプロシェアリングコンサルティングサービスが19.1%増の38億50百万円、FLEXYサービスが49.9%増の30億66百万円、その他サービスが18.3%減の1億78百万円だった。プロシェアリングコンサルティングサービスとFLEXYサービスを両輪としている。

■重要KPI

重要KPIとしては、22年7月期末時点で累積稼働プロジェクト数(全サービス合計)が21年7月期末比3138件増加の1万1769件、累積取引企業数(全サービス合計)が869社増加の3921社、22年7月期の取引企業当たり年間平均稼働プロジェクト数(プロシェアリングコンサルティングサービスとFLEXYサービスの合計)が21年7月期比0.4件増加の2.6件、累積登録プロ人材数(退会されたプロ人材は除外)が2606人増加の2万420人となっている。

23年7月期第1四半期末時点では、累積稼働プロジェクト数が1万2687件、累積取引企業数が4103社で、月次プロジェクト継続稼働率(プロシェアリングコンサルティングサービスとFLEXYサービスの合計)が22年7月期第4四半期比0.5ポイント上昇の98.3%となった。

■プロシェアリング市場は拡大基調

同社は22年7月末時点で、14年1月の創業以来累積1万1769件のプロジェクトを支援した実績を誇っている。そして22年10月には首都圏以外でのプロジェクトが累計3571件となった。

専門知識の高度化と雇用の流動化を背景として、既存のビジネスコンサルティングではなく、プロ人材のスキルシェアという新しい仕組みによるプロシェアリングの市場が拡大基調である。

22年5月には宮城県仙台市からプロフェッショナル人材活用による中小企業の課題解決支援事業を受託した。22年10月には内閣府から令和4年度DX地域活性化チーム派遣実証調査事業を受託した。22年11月には第4回フリーランスパートナーシップアワード2022において、同社のプロシェアリング活用事例が「活用企業部門の大賞」と「エージェント部門の大賞」をダブル受賞した。22年12月には、人が繋ぐ事業承継サービスの活用事例として、フィンテック事業を主力とするデジタルプラスがデジタルクリエイティブ事業を運営するTsunagaruから事業を譲り受けた。

直近の支援事例としては、キリンホールディングスの新規事業化支援、一般社団法人はーとプロジェクトの6次産業化支援、地方のアパレル企業であるフクセンのEC事業支援などがある。

■中期成長戦略

中期成長戦略としては、積極的な投資とデータ活用で事業拡大を加速させる方針としている。

既存領域(ビジネス領域のプロシェアリングコンサルティングサービス、DX領域のFLEXYサービス)では、顧客の売上規模別マーケティング活動(中堅・大手企業のDX領域案件獲得に向けた広告宣伝投資や顧客内の他部署横展開、金融機関等との連携強化による中小・ベンチャー企業の取引先企業数の拡大、SDGs案件や行政案件の獲得など)を推進し、月次稼働プロジェクト数の最大化を図る。また、事業拡大を踏まえて、高い生産性を維持しながら組織体制の強化(コンサルタント人員増など)を図る。22年8月には8つ目の拠点として四国支社(高知県高知市)を開設した。

新領域(Open Ideaサービス、人が繋ぐ事業承継サービス)では、これまで既存領域で裏付けされたプロジェクト創出の仕組みやデータを活用し、成長加速を図る。特に事業承継・M&A領域において、専門のプロチームの組成やコンサルタント人員の拡充によって制約案件拡大を推進する。

新サービスでは、PROBASEの契約社数が22年7月期末時点で1286社、23年7月期第1四半期末時点で1505社となり、順調に成長している。既存サービスとのシナジーで契約社数の最大化を図り、23年7月期末の契約社数2000社を目指すとしている。なお22年9月にはPROBASEが、日本マーケティングリサーチ機構の22年7月期指定領域における市場調査の結果、導入企業数(1286社)および継続率NO.1となった。

さらにプロシェアリング事業を通して、オープンイノベーションによる企業と地域の経済活性化、フリーランスが安心して活躍し続けられる労働環境整備など、サステナビリティ経営支援も推進する。22年6月には脱炭素化社会の実現に向けて、CO2排出量可視化サービスを提供するゼロボード、およびRecursiveと業務提携し、サプライチェーン上におけるGHG(温室効果ガス)排出量の可視化および削減サービスの提供を開始した。

■23年7月期大幅増収増益予想で中期成長も期待

23年7月期の業績(非連結)予想は売上高が22年7月期比30.9%増の93億円、営業利益が13.3%増の6億円、経常利益が13.5%増の6億円、当期純利益が12.5%増の3億90百万円としている。

第1四半期は、売上高が前年同期比16.6%増の19億43百万円、営業利益が38.8%減の1億20百万円、経常利益が38.5%減の1億20百万円、四半期純利益が40.9%減の75百万円だった。

稼働プロジェクト数が順調に増加し、稼働率上昇なども寄与して増収(過去最高)だったが、コンサルテント人員数の増加に伴って人件費が増加したため減益だった。ただし概ね計画水準だったとしている。売上高の内訳はプロシェアリングコンサルティングサービスが10億50百万円、FLEXYサービスが8億57百万円、その他サービスが36百万円だった。

累積稼働プロジェクト数は22年7月期末比918件増加の1万2687件、累積取引企業数は同182社増加の4103社となった。また、月次平均稼働プロジェクト数は1255件(前年同期比134件増加、前四半期比52件増加)、1稼働プロジェクト当たり平均請求金額は507千円(前年同期比23千円増加、前四半期比4千円減少)で、月次プロジェクト継続稼働率は98.3%(前年同期比1.1ポイント上昇、前四半期比0.5ポイント上昇)となった。コンサルタント人員数は108人(前年同期比26人増加、前四半期比20人増加)となった。

通期の大幅増収増益予想を据え置いている。稼働プロジェクト数が順調に増加し、人件費の増加などを吸収する見込みだ。第1四半期は減益となり、通期予想に対する進捗率も売上高が20.9%、営業利益が20.0%、経常利益が20.0%、当期純利益が19.2%とやや低水準の形だが、稼働プロジェクト数が増加基調であること、平均請求単価が安定的に推移していること、月次プロジェクト継続稼働率も高水準であること、プロジェクトの積み上げによってストック収益が増加するリカーリング型ビジネスモデルであることなどを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能と考えられる。さらに中期成長も期待したい。

■株価は底打ち

株価は地合い悪化も影響して軟調展開だったが、22年12月の上場来安値圏から反発して底打ち感を強めている。出直りを期待したい。1月23日の終値は1492円、今期予想PER(会社予想のEPS47円19銭で算出)は約32倍、前期実績PBR(前期実績のBPS282円15銭で算出)は約5.3倍、そして時価総額は約124億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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