マルマエは反発の動き、23年8月期減益予想だが上振れの可能性

 マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開している。中期事業計画「Innovatuin2025」では成長戦略として、消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進を打ち出している。23年8月期は市場停滞や先行投資の影響などで減益予想としている。第1四半期は想定を上回る大幅増収増益だったが、第2四半期以降の慎重な見通しを据え置いている。ただし上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する場面があったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工およびEBWを展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開している。22年8月期の分野別受注高は半導体分野が44.9%増の70億27百万円、FPD分野が25.9%増の14億61百万円、その他分野が3.0倍の7億円、分野別売上高は半導体分野が51.2%増の63億82百万円、FPD分野が84.0%増の15億42百万円、その他分野が2.6倍%増の4億45百万円だった。半導体分野は良好な市場環境を背景に過去最高水準だった。FPD分野は市場が横ばいだったがシェア拡大が牽引した。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注が増加した。

 半導体・FPD製造装置の真空パーツを作るノウハウ、同業他社に比べて高い生産性・低コスト、急変動する半導体・FPD市場に柔軟に対応できる設備力、ワンストップ受注に対応する多工程生産能力などを強みとしている。

 また、作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。

■シェア拡大やESG経営を推進

 長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指し、中期事業計画「Innovatuin2025」では、成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進、目標数値として最終年度25年8月期売上高140億円、営業利益42億円、資産ベースROIC23%以上、負債ベースROIC19%以上、配当性向35%以上、年間最低配当額20円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資計画(CFベース)は、増産投資およびカーボンニュートラルに向けた太陽光発電投資を中心に23年8月期20億円、24年8月期20億円、25年8月期12億円としている。

 売上拡大戦略として、22年8月期実績見込(全社売上高83億円)に対して、半導体分野の既存顧客からの受注拡大で+29.5億円、新規顧客からの量産受注拡大で+20億円、FPD分野・その他分野で+7.5億円を目指す。半導体分野は引き続き需要が拡大基調である。FPD分野は23年末までテレビ向け液晶G10.5関連の設備投資が停滞する見込みだが、EBW活用によるシェア拡大や有機ELのパネル大型化が寄与する見込みだ。なお消耗品の売上構成比は22年8月期実績で半導体分野が65.6%、FPD分野が19.7%となっている。更なる消耗品受注の拡大で受注安定化を狙う方針だ。

 また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。自社の再生可能エネルギー活用によってCO2削減を推進し、2030年に50%削減、2050年に100%削減を目指す。さらに人材力最大化に向けて、6つの向上施策(多様化の推進、人材戦略の推進、誰もが働ける職場環境の整備、人事制度改善、育成プラン作成、育成計画推進)を推進する方針だ。なお21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明した。また22年3月には統合報告書を発表している。

■23年8月期減益予想だが上振れの可能性

 23年8月期の業績(非連結)予想は、売上高が22年8月期比1.3%増の87億円、営業利益が28.9%減の16億80百万円、経常利益が29.9%減の16億60百万円、当期純利益が33.9%減の12億円としている。配当予想は22年8月期比12円減配の36円(第2四半期末18円、期末18円)としている。予想配当性向は37.9%となる。

 第1四半期(9月~11月)は、売上高前年同期比28.3%増の24億87百万円、営業利益が12.4%増の6億68百万円、経常利益が11.8%増の6億63百万円、四半期純利益が10.7%増の4億67百万円だった。市場が停滞傾向となって受注高が減少したが、半導体分野の前期末の豊富な受注残の消化で大幅増収となり、受注損失引当金および棚卸資産評価減の減少なども寄与した。

 全社の受注高は27.3%減の18億15百万円で、分野別の内訳は半導体分野が30.2%減の13億07百万円、FPD分野が77.9%減の1億36百万円、その他分野が3億71百万円(前年同期は3百万円)だった。分野別の売上高は、半導体分野が受注残の消化で29.7%増の18億73百万円、FPD分野が市場停滞の影響で39.6%減の2億23百万円、その他分野が太陽電池製造装置部品の出荷検収本格化で441.6%増の3億41百万円だった。

 コスト面では、売上増加に伴って外注加工費が18百万円、労務費が79百万円増加し、設備投資に伴って減価償却費が66百万円増加したが、増収効果に加えて、受注損失引当金および棚卸資産評価減の減少(39百万円の損益改善要因)なども寄与して大幅増益だった。売上総利益率は36.3%で4.4ポイント低下、販管費比率は9.4%で0.6ポイント低下した。

 通期予想は据え置いている。売上面は市場全体が停滞傾向でも、シェア拡大などで高水準に推移する見込みとしている。分野別売上高の計画は、半導体分野が7.6%増の68億66百万円、FPD分野が50.3%減の7億66百万円、その他分野が2.1倍の9億21百万円としている。

 半導体分野については、半導体市場の需要鈍化で装置市場も停滞傾向となり、第2四半期~第3四半期に市場減速の影響を見込んでいる。重点施策として消耗品と新規客向けの受注拡大に注力する。FPD分野は全般的に市場停滞傾向の見込みだが、新品種獲得などでシェア拡大を狙う。その他分野は太陽電池向け装置の需要が活発のため、FPD分野の余力も活用して営業活動強化や内製比率改善を推進する方針だ。

 利益面は、設備投資増加に伴う減価償却費の増加や、人員増先行による利益率低下などが影響して減益見込みとしている。なお新規設備投資については市場動向に合わせて実行する方針としている。

 第1四半期は想定を上回る大幅増収増益だったが、第2四半期以降の慎重な見通しを据え置いている。ただし第1四半期の進捗率が高水準(売上高28.6%、営業利益39.8%、経常利益39.9%、当期純利益38.9%)だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象

 株主優待制度は、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

 株価は地合い悪化も影響して22年12月末に昨年来安値を更新する場面があったが、その後は調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。1月23日の終値は1693円、今期予想PER(会社予想のEPS95円03銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約2.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS578円06銭で算出)は約2.9倍、そして時価総額は約221億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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