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インテージホールディングスは反発の動き、23年6月期2桁増益予想
- 2023/1/24 09:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開し、さらなる成長と企業価値向上に向けて脱リサーチへの事業拡張など戦略投資を加速させている。1月20日に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。市場環境の変化に対応し、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。23年6月期は2桁増益予想としている。主力のマーケティング支援(消費財・サービス)が牽引し、戦略投資による費用増加を吸収する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げる展開だったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。なお2月7日に23年6月期第2四半期決算発表を予定している。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。22年6月期のセグメント別構成比は売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援64%、ヘルスケア分野のマーケティング支援24%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援49%、ヘルスケア分野のマーケティング支援47%、ビジネスインテリジェンス3%だった。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。
21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。21年10月にはアジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になった。21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携した。
ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。
22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。22年12月にはインテージテクノスフィアが、クラウド型健康管理システム「すこやかサポート21」の豊富な機能の中から利用頻度の高い機能だけを厳選したライトプラン「すこやかサポート21 Light」の提供を開始した。
なお海外事業に関して1月20日に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。第3四半期連結決算にCSG香港株式売却益30百万円(利益にプラス)、CSG香港向け貸付金に関する貸倒引当金繰入2億80百万円(利益にマイナス)、さらにIAHに対する投資に係る将来減算一時差異について繰延税金資産を計上し、同額の法人税等調整額6億80百万円(利益にプラス)を計上予定である。市場環境の変化に対応して、アジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。
■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上
第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間の連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な戦略投資やM&Aも継続して実施する方針だ。
資本政策については、資本効率を重視し、最終利益を全額、成長投資と株主還元に振り向ける方針としている。配当は連結配当性向40%、DOE(自己資本配当率)4.5%以上を目標としている。自己株式取得も機動的に対応する。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。さらに子会社リサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォーム(仮称、CXMPF)の開発を推進する。
SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。22年1月現在の投資実績は23社、合計約24.8億円となっている。
また、ESG経営・SDGsへの取り組みの一例として、日本赤十字社の「ACTION!防災・減災プロジェクト」に参画している。さらに、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」に認定された。
■23年6月期2桁増益予想
23年6月期の連結業績予想は売上高が22年6月期比6.3%増の640億円、営業利益が11.8%増の52億円、経常利益が13.1%増の56億円、親会社株主帰属当期純利益が17.0%増の40億円としている。配当予想は22年6月期比4円増配の42円(期末一括)としている。連続増配予想である。
第1四半期は、売上高が前年同期比2.3%増の141億19百万円、営業利益が34.4%減の5億73百万円、経常利益が4.6%減の9億07百万円、そして親会社株主帰属四半期純利益が11.6%減の6億91百万円だった。
売上面は主力のマーケティング支援(消費財・サービス)のパネル調査やカスタムリサーチが牽引して増収だったが、利益面は前年の投資・経費執行遅れの反動や、マーケティング支援(ヘルスケア)のリサーチ事業の回復遅れなどで減益だった。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は売上高が6.5%増の91億79百万円だが、営業利益が70.0%減の1億12百万円だった。売上面は主力のパネル調査やカスタムリサーチが堅調に推移し、子会社リサーチ・アンド・イノベーションや海外事業も寄与して増収だったが、利益面は前年の投資・経費執行遅れの反動などで減益だった。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は売上高が5.1%減の32億89百万円で、営業利益が13.0%減の3億74百万円だった。CRO(医薬品開発業務受託機関)は構造改革で収益改善したが、主力のリサーチ事業が前年のリソース再配置に伴う案件抑制からの回復が遅れた。
ビジネスインテリジェンス事業は売上高が4.2%減の16億50百万円、営業利益が24.7%増の86百万円だった。売上面は子会社インテージテクノスフィアにおいて、コロナ禍の影響が残る旅行業界を中心に既存業界向けソリューションが低調だったが、利益面は原価低減や経費削減の効果で増益だった。
通期連結業績予想は据え置いている。マーケティング支援(消費財・サービス)が牽引し、戦略投資による費用増加を吸収して2桁増益予想としている。セグメント別計画は、消費財・サービス分野のマーケティング支援の売上高が7.3%増の413億円で営業利益が8.7%増の25億円、ヘルスケア分野のマーケティング支援の売上高が5.1%増の153億円で営業利益が9.2%増の24億円、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスの売上高が3.1%増の74億円で営業利益が198.7%増の3億円としている。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、既存事業の着実な成長と投資成果の積み上げを推進し、CXMPFの開発とSCIの刷新に約6.5億円の投資を予定している。ヘルスケア分野のマーケティング支援では、リサーチ事業の復調やCRO事業の底打ちを見込んでいる。成長投資は約1億円を予定している。ビジネスインテリジェンスでは、旅行業界BPOはコロナ禍影響が継続するが、DXセンター機能とローコード開発の拡大を見込んでいる。
次期中計に向けた注力ポイントとしては、消費財・サービス分野のマーケティング支援におけるCXMPFの開発、ヘルスケア分野のマーケティング支援におけるビジネス領域の拡大、ビジネスインテリジェンスにおけるDX事業の成長などを推進する方針だ。第1四半期の進捗率は低水準の形だが、マーケティング支援(消費財・サービス)が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は反発の動き
株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げる展開だったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。1月23日の終値は1519円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS101円93銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の42円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS776円32銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約614億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)