【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ミロク情報サービスの第1四半期は2桁増益と順調、割高感なく99年以来の1000円台も視野

ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売やコンサルティングサービスなどを展開している。株価は7月21日の950円まで上伸した。その後は目先的な過熱感を強めて上げ一服の形だが、第1四半期(4月~6月)は2桁増益と順調であり、16年3月期増収増益基調だ。指標面に割高感はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。99年以来の1000円台(株式分割調整後)も視野に入る。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス収入が収益柱

会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなど業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

収益柱は、システム導入契約売上高(システム導入契約時のハードウェア、ソフトウェア、およびシステム導入支援サービスなどのユースウェアの販売)と、サービス収入(会計事務所向け総合保守サービスTVS、ソフト使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入など継続的な役務の対価)である。

会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業支援にも繫がるトータルソリューションが強みである。全国約8400の会計事務所ユーザーおよび約1万7000社の中堅・中小企業ユーザーを有し、サービス収入などのストック型収益構造を特徴としている。13年10月には、連結会計システム開発のプライマルと資本・業務提携して、連結会計や連結納税までグループ経営支援ソリューションの提供を強化している。

■中期計画でROE17年3月期15%、21年3月期30%目指す

14年5月に発表した第3次中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、経営目標数値として17年3月期の売上高260億円、経常利益40億円、純利益24億50百万円、売上高経常利益率15%、ROE15%を掲げた。さらに新たな成長ステージとなる21年3月期には売上高500億円、経常利益率30%、ROE30%を目指している。

重点戦略としては、顧客基盤拡大に向けた販売戦力増強と販路拡大(市場ポテンシャルに合わせた人的リソース配分適正化、販社M&Aも活用したエリア拡大、顧客サポート体制と経営情報サービスの充実など)、新規顧客を創造する新製品・サービス開発(マルチデバイス対応クラウドサービスなど)、新規事業による新たな収益基盤確立(利益率向上に向けた事業ポートフォリオ再設計、中小企業の事業承継・事業再生支援サービスへの参入など)を推進する。

■M&A・アライアンス戦略も活用して新規事業を積極展開

新規事業関連では、登録会員数約130万人の中小・ベンチャー企業支援ビジネス情報サイト「bizocean(ビズオーシャン)」のクラウド拡充とネットビジネスへの展開、マルチデバイス対応お金管理アプリ「マネトラ」による消費者間取引(CtoC)市場への参入、経済団体・FC企業への会計クラウドサービスの提供などを推進している。

14年5月には全国商工会連合会の会員事業者向け「会計・税務のクラウド型アプリケーションソフト」を開発し、14年8月にはソフトテックス社から完全Web対応クラウド販売管理システム「商い哲人EX」を譲り受け、14年9月には中小企業の事業承継や事業再生を支援する子会社MJS・M&Aパートナーズを設立した。

14年10月にはCtoC向けクラウド型会計アプリ「フリビズbyマネトラ」の提供を開始した。また韓国の電子金融専門企業Webcash(ウェブキャッシュ)社と資本業務提携した。韓国Webcash社と日本法人(14年11月MWIに社名変更)の株式を取得し、新たなクラウドサービスを共同開発して日本国内で事業展開する。14年12月にはクラウド型POSシステムのオフィス24グループと業務提携した。

15年1月には次世代サービス共同開発を目的として、次世代Web標準言語HTML5を活用したWebソリューション開発に強みを持つニューフォリアに出資して資本提携した。

15年4月には一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)へ加盟した。税理士・公認会計士事務所と中堅・中小企業の経営革新を推進し、その繁栄に寄与するという経営方針のもと、日本経済の発展に貢献できるよう企業としての社会的責任を果たせるよう努めるとしている。

■第1四半期は2桁増益で16年3月期増収増益基調

なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億22百万円、第2四半期(7月~9月)56億41百万円、第3四半期(10月~12月)54億77百万円、第4四半期(1月~3月)56億43百万円、営業利益は第1四半期5億96百万円、第2四半期7億06百万円、第3四半期4億56百万円、第4四半期7億66百万円だった。

また15年3月期の連結配当性向は26.9%だった。ROEは14年3月期比1.0ポイント上昇して13.7%、自己資本比率は同4.2ポイント上昇して67.8%だった。

7月31日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.7%増の58億88百万円で、営業利益が同15.2%増の6億86百万円、経常利益が同12.8%増の6億98百万円、純利益が同14.5%増の4億22百万円だった。

販売面では、新規顧客開拓による顧客基盤拡大に向けた多彩なセミナー・研修会の開催、総合イベントへの主力製品の出展など、積極的な販促活動を展開した。開発面では、主力システムの継続的な機能強化に加えて、マイナンバー制度施行に向けた新製品「MJSマイナンバー」の開発を進めた。こうした施策が奏功して増収、2桁増益と順調に推移した。

品目別の売上高を見ると、システム導入契約売上高は同2.2%増の37億33百万円(内訳はハードウェアが同5.7%減の7億22百万円、ソフトウェアが同6.3%増の23億56百万円、ユースウェアが同2.3%減の6億54百万円)だった。

サービス収入は同7.9%増の20億09百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが同1.8%増の4億58百万円、ソフト使用料収入が同11.4%増の2億33百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービスが同9.0%増の8億62百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が同7.4%増の2億89百万円)だった。ストック型収益であるサービス収入の売上構成比が上昇した。

通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.4%増の236億円、営業利益が同18.8%増の30億円、経常利益が同16.0%増の30億円、純利益が同3.0%増の18億10百万円としている。配当予想は前期と同額の年間15円(期末一括)で予想配当性向は26.1%となる。

純利益は投資有価証券売却益の一巡で伸び率が鈍化するが、売上面では15年3月期末のシステム導入契約の受注残高が高水準であり、中堅・中小企業向けERPシステムの拡販、新規顧客の開拓、ソフト保守サービス契約率の上昇などで、システム導入契約売上高およびサービス収入とも順調に拡大する。

売上総利益率の計画は同1.9ポイント上昇の65.9%で、人件費増加などを吸収して増収増益基調だ。16年1月施行に向けたマイナンバー制度関連需要も追い風だろう。

既存のソフトウェア関連事業の拡大に向けて新規顧客の拡大と収益基盤の強化に注力するとともに、クラウドサービスやマルチデバイス対応などの新たな製品・サービス、中小企業の事業承継・事業再生を支援するサービスも強化する方針だ。ストック型の収益構造であり、サービス収入の好調で売上総利益率の上昇も期待される。中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は自律調整一巡して上値試す、99年以来の1000円台も視野

株価の動きを見ると、800円近辺での短期モミ合いから上放れて7月21日の950円まで上伸した。00年2月954円(株式分割調整後)以来の高値水準だ。その後は目先的な過熱感を強めたこともあり、利益確定売りが優勢になって上げ一服の形だが、16年3月期増収増益基調を評価する流れに変化はないだろう。

8月7日の終値867円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円42銭で算出)は15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS411円46銭で算出)は2.1倍近辺である。

週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。そして日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。第1四半期は2桁増益と順調であり、16年3月期増収増益基調だ。指標面に割高感はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。99年以来の1000円台(株式分割調整後)も視野に入る。

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