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イトーキは昨年来高値更新の展開、22年12月期大幅増益予想、23年12月期も収益拡大基調
- 2023/2/3 09:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で、物流機器などの設備機器関連も展開している。中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、新製品・新ソリューション投入などを強化している。2月1日には、2月9日を「学習机の日」として記念日登録を申請し、正式に登録されたと発表している。22年12月期は大幅増益予想としている。ワークプレイス事業においてオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調に推移し、設備機器・パブリック事業も堅調に推移している。さらに固定資産売却益計上も寄与する見込みだ。構造改革プロジェクト推進で体質改善効果が継続し、23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は昨年来高値更新の展開で水準を切り上げている。そして18年以来の高値圏だ。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお2月13日に22年12月期決算発表を予定している。
■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開
オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器などの設備機器関連も展開している。製販一貫体制を特徴としている。21年5月には公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。
米国のパートナー企業との協業で17年7月に設立した連結子会社GlobalTreehouseについては22年3月に解散した。23年4月にはグループ経営の効率化を図るためイトーキ北海道を吸収合併予定である。海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。
21年12月期のセグメント別(21年12月期から区分変更)売上高構成比はワークプレイス事業が70%、設備機器・パブリック事業が29%、IT・シェアリング事業が2%、セグメント利益(営業利益)構成比はワークプレイス事業が77%、設備機器・パブリック事業が38%、IT・シェアリング事業が▲15%だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。
ワークプレイス事業は、従来のオフィス関連事業のオフィス家具・営繕・FMPMコンサル、および設備機器関連事業の内装・建材、その他事業の家庭用家具で構成する。設備機器・パブリック事業は、従来の設備機器関連事業の内装・建材以外、およびオフィス関連事業の公共施設関連で構成する。IT・シェアリング事業は、従来のオフィス関連事業の什器レンタル・オフィスシェア関連サービス、メンバーシップ事業、およびソフトウェア開発関連サービスで構成する。
本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナの「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れた。
22年5月にはCrossa(クロッサチェア)とpulizea(プリーゼア)がレッドドット・デザイン賞2022(ドイツ)を受賞し、Akimiru(アキミル)とCrossaがiFデザインアワード2022(ドイツ)を受賞した。22年10月には日本デザイン振興会主催の2022年度グッドデザイン賞で8件受賞し、このうちグッドデザイン・ベスト100にADDCELL(アドセル)とLINEA(ニネアチェア)の2件が選出された。22年11月にはオフィスの象徴となるビッグテーブルシルタが、ウッドデザイン賞2022において最優秀となる経済産業大臣賞を受賞した。23年1月にはCrossaが、German Design Award 2023(ドイツ)でWinner(優秀賞)を受賞した。
2月1日には、2月9日を「学習机の日」として記念日登録を申請し、一般社団法人日本記念日協会より正式に登録されたと発表している。同社は1962年に日本で初めてスチール製学習机を発売した。
■ポストコロナの働く環境づくりをリード
中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。
目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。
基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。
22年4月にはグループ会社のエフエム・スタッフが栃木県矢板市と「矢板SLOW WORK推進コンソーシアム」を設立し、地域共創型シェアオフィス「スローワーク矢板」を開設した。また、NTTコミュニケーションズおよびNTTドコモと共同で、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始した。
22年6月には「働く人」を中心とするDXの実現に向けて、オンライン共創ラボ「ITOKI Open―DX Lab」ウェブサイトをオープンした。22年7月には、多様化する新しい時代の働き方に寄り添い、クリエイティブを触発するオフィス家具「common furniture」を発売した。
22年9月には、在宅ワーク環境をアップデートする人気チェアを対象に、イトーキ公式オンラインショップでAR(拡張現実)が体験できるサービスを開始した。また22年9月には、完全予約制のコンシューマー向けチェアショールーム「ZA SALON TOKYO(坐サロン東京)」を東京京橋にオープンした。
22年11月には、静岡聖光学院との実証研究プロジェクト(メタバースを用いた仮想空間と現実空間の学習環境のデザインと教育カリキュラムの構築プロジェクト)が、文部科学省「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進業」に採択された。
23年1月には新たなモノづくりの形として滋賀工場APセンター(アセンブル・プロセスセンター)の本格稼働を予定している。自社製品の保管・組立・出荷を一元的に行うセンターで、オフィス商品のアセンブル生産方式を強化し、生産性向上および収益拡大を推進する。
■構造改革プロジェクトを推進して企業価値向上と持続的成長を図る
20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。
なお、テレワークの導入・活用を進めて実績を積んだ企業として総務省が実施する令和3年度テレワーク先駆者百選に選定されている。さらに、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2022大規模法人部門(ホワイト500)に認定されている。オフィス家具事業を展開する企業としては初の6年連続認定である。
22年7月には、テレワーク勤務制度を改定し、従来の在宅勤務に加えて、自宅以外で従業員が準備・選択した「マイプレイス」でのテレワーク勤務も可能とした。さらに、サステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した「統合報告書2022」を発行し、2050年カーボンニュートラル目標を表明した。22年8月には、女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業として、厚生労働省より「えるぼし」の3つ星(3段階目)認定を取得した。
22年9月には特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンが主宰する「イクボス企業同盟」に加盟した。22年10月にはワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同した。22年11月には、性的指向や性自認などにおける多様性を尊重し、誰もが自分らしく働ける職場環境を目指して「LGBTQアライ宣言」し、LGBTQに関する職場における取り組みの評価指標である「PRIDE指標2022」において「ブロンズ」を受賞した。
22年12月には東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2022」において、三重大学およびダルトンとの共同研究の一環として、ドリップ後に出る「コーヒーの豆かす」を活用して試作した植物由来のボード「Coffee Grounds board」を参考展示した。また、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が実施する「令和4年度第2回国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)」において「事業継続および社会貢献」の認証を取得した。
23年1月には、事実婚や同性のパートナー、およびその子、親に対し、法律上の配偶者や家族と同様に福利厚生や規程を適用する「パートナーシップ制度」を導入するとともに、ハラスメントに関する規程の改定、および同性婚の法制化を推進するBME(Business for Marriage Equality)への賛同を発表した。
■22年12月期大幅増益予想、23年12月期も収益拡大基調
22年12月期通期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響は軽微、22年8月8日付で上方修正、22年12月23日付で売上高を据え置き、各利益を2回目の上方修正)は、売上高が21年12月期比6.1%増の1230億円、営業利益が64.1%増の42億円、経常利益が68.2%増の41億円、親会社株主帰属当期純利益が4.5倍の50億円としている。配当予想は21年12月期と同額の15円(期末一括)としている。
ワークプレイス事業においてオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調に推移し、設備機器・パブリック事業も堅調に推移する見込みだ。なお特別利益に非事業用資産の土地・建物を譲渡して固定資産売却益約65億円、特別損失にソフトウェア等に係る固定資産除却損13億77百万円を計上する。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比7.0%増の899億61百万円、営業利益が2.4倍の40億86百万円、経常利益が2.5倍の41億25百万円、親会社株主帰属四半期純利益が4.1倍の35億17百万円だった。
需要が好調に推移し、構造改革プロジェクトの推進による売上総利益率上昇や販管費抑制なども寄与して大幅増益だった。特別利益では固定資産売却益が減少(前年同期は11億83百万円計上、今期は1億39百万円計上)したが、子会社Global Treehouseの解散に伴う債務免除益7億79百万円を計上した。特別損失では前期計上の減損損失8億64百万円が剥落した。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が15億31百万円増加、売上原価が12億33百万円増加、営業利益、経常利益、および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ2億97百万円増加している。
ワークプレイス事業は売上高が5.1%増の632億05百万円、セグメント利益(営業利益)が66.7%増の24億47百万円だった。ニューノーマル時代の新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調だった。原材料価格高騰の影響があったが、増収効果に加えて、構造改革プロジェクトの推進によって売上総利益率が改善した。
設備機器・パブリック事業は売上高が13.0%増の254億91百万円、営業利益が2.4倍の12億57百万円だった。子会社ダルトンにおいて前期受注したサイエンスパークなどの大型案件が牽引し、物流設備の需要も好調だった。
IT・シェアリング事業は売上高が6.2%減の12億円、営業利益が3億25百万円の黒字(前年同期は3億15百万円の赤字)だった。Global Treehouseの解散で黒字転換した。またシステム開発事業、システム検証事業、オフィス空間シェア事業が堅調に推移した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高353億45百万円で営業利益39億64百万円、第2四半期は売上高284億11百万円で営業利益4億07百万円、第3四半期は売上高262億05百万円で営業利益2億85百万円の赤字だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上期(特に第1四半期)偏重の特性がある。
ワークプレイス事業ではオフィス移転・リニューアル商談が増加傾向であり、設備機器・パブリック事業では大型案件も寄与する。重点戦略として中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、ポストコロナの「働く環境」つくりでリードしていくための商品・サービスの展開を本格化する方針だ。
重点施策として、中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、ポストコロナの「働く環境」つくりでリードしていくための商品・サービスの展開を本格化する方針だ。
ワークプレイス事業では構造改革実行による高収益化、Smart Officeコンセプトに基づく新たな価値の提供、成長に向けた新収益源の掘り起こし、設備機器・パブリック事業では物流施設関連における戦略的投資による商品力・サービスの強化、公共施設関連における営業・設計・業務・生産の効率化、サイネージ関連におけるインバウンド需要復活を視野に入れた製品の機能向上、特殊扉関連における供給体制の拡大、研究施設関連における営業力・商品力・供給力・アフタービジネスの強化、IT・シェアリング事業ではIT関連におけるビジネス発展に役立つ商品・サービスの提供、シェアリング関連における環境や社会と価値を共有するシェアビジネスによる新たな市場の醸成を推進する。
コロナ禍に伴い、感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。働き方改革による企業の職場環境改善の流れなども追い風である。構造改革プロジェクトの推進で体質改善効果も継続する見込みであり、23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は昨年来高値更新の展開で18年以来の高値圏
株価は昨年来高値更新の展開で水準を切り上げている。そして18年以来の高値圏だ。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月2日の終値は710円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS110円42銭で算出)は約6倍、前期推定配当利回り(会社予想の15円で算出)は約2.1%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS992円89銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約324億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)