TACは23年3月期3Q累計減益だが、通期営業・経常増益予想据え置き

(決算速報)
 TAC<4319>(東証スタンダード)は2月6日の取引時間終了後に23年3月期第3四半期累計連結業績を発表した。売上面では法人研修事業が堅調に推移したが、個人教育事業において学生を主な受講生とする講座の申し込み状況が低調に推移し、出版事業における巣ごもり需要の減少も影響して減収減益だった。ただし通期営業・経常増益予想を据え置いた。生活様式の多様化への対応などの取り組みを推進する方針だ。通期ベースでは積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は反発力が鈍く昨年来安値圏だが、徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。目先的には第3四半期累計業績を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが下値限定的だろう。

■23年3月期3Q累計減益だが、通期営業・経常増益予想据え置き

 23年3月期第3四半期累計の連結業績は、売上高(前受金調整後の発生ベース売上高)が前年同期比4.2%減の149億49百万円、営業利益が48.8%減の3億41百万円、経常利益が50.3%減の3億52百万円、親会社株主帰属四半期純利益が55.3%減の2億04百万円だった。

 法人研修事業が堅調に推移し、個人教育事業においてコスト削減も推進したが、個人教育事業において学生を主な受講生とする講座の申し込み状況が低調に推移し、出版事業における巣ごもり需要の減少も影響して減収減益だった。なお同社が重視している前受金調整前の現金ベース売上高は5.2%減の147億29百万円だった。

 個人教育事業は現金ベース売上高が7.7%減の78億02百万円、現金ベース営業利益が5億25百万円の赤字(前年同期は2億43百万円の赤字)だった。高いDX需要を受けて情報処理講座に推移し、次年度(令和5年度)の試験より受験資格要件が緩和される税理士講座も好調だったが、コロナ禍も影響して学生を主な受講生とする講座(公認会計士講座、公務員講座など)の申し込み状況が低調だった。コスト面では、講師料、教材制作のための外注費、賃借料などの削減を推進して営業費用が4.2%減少したが、減収影響をカバーできなかった。

 法人研修事業は現金ベース売上高が0.4%増の34億04百万円、現金ベース営業利益が7.9%減の7億79百万円だった。売上面は企業のDX推進と相俟って研修需要が堅調に推移したが、営業費用が3.1%増加したため減益だった。

 なお受講者数は個人受講者が4.7%減の9万4022人、法人受講者が3.6%減の7万0674人、合計が4.2%減の16万4696人だった。

 出版事業(TAC出版、W出版)は売上高が5.5%減の31億15百万円、営業利益が12.4%減の7億23百万円だった。売上面は巣ごもり需要が一巡して減収だった。営業費用は3.2%減少したが、減収影響をカバーできず減益だった。人材事業は売上高が2.4%増の4億45百万円、営業利益が12.8%増の1億02百万円だった。会計系人材事業の広告売上および人材紹介が順調に推移した。医療系人材事業の売上は前年並みだった。

 なお四半期別(売上高は前受金調整前現金ベース)に見ると、第1四半期は売上高が47億39百万円で営業利益が5億49百万円、第2四半期は売上高が56億80百万円で営業利益が3億91百万円、第3四半期は売上高が43億09百万円で営業利益が6億円の赤字だった。利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

 通期連結業績予想は据え置いて売上高(前受金調整後の発生ベース売上高)が22年3月期比0.1%減の204億50百万円、営業利益が57.3%増の6億50百万円、経常利益が37.4%増の6億08百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が10.1%減の4億円としている。配当予想は22年3月期と同額の6円(第2四半期末3円、期末3円)としている。

 親会社株主帰属当期純利益は特別利益が剥落して減益予想だが、生活様式の多様化への対応、個人教育事業の早期回復、新たな事業領域への挑戦を中心とした施策に取り組んで営業・経常増益予想としている。第3四半期累計は減益だったが、通期ベースでは積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株価は下値限定的

 株価は反発力が鈍く昨年来安値圏だが、徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。目先的には第3四半期累計業績を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが下値限定的だろう。2月6日の終値は206円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS21円62銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS333円22銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約38億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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