Jトラストは戻り試す、23年12月期も収益拡大基調

 Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業を展開している。22年12月期は金融事業の成長や事業ポートフォリオ再構築の成果で、前期の一過性要因を除いたベース営業利益に対して大幅増益予想としている。さらに事業ポートフォリオ再構築に伴って新たな成長フェーズに入り、23年12月期以降の営業利益率は飛躍的に向上する見込みとしている。23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値を切り下げる形だったが調整一巡して切り返しの動きを強めている。好業績を評価して戻りを試す展開を期待したい。なお2月14日に22年12月期決算発表を予定している。

■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開

 日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで、金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開している。グループビジョンには「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」を掲げ、国内外におけるM&Aも積極活用して、銀行業および債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスの提供を目指している。

 21年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益、20年12月期の数値は継続事業・非継続事業の分類変更を考慮した遡及修正後数値)は、日本金融事業がパルティール債権回収における貸倒引当金繰入額増加などで20年12月期比5.6%減の45億88百万円、韓国およびモンゴル金融事業が貸出資産増加に伴う利息収益増加などで58.9%増の32億08百万円、東南アジア金融事業がコロナ禍に伴う貸倒引当金繰入額増加やのれん減損損失計上などで63億72百万円の赤字(20年12月期は55億41百万円の赤字)だった。投資事業はシンガポール控訴裁判所における勝訴判決全額履行(受領額78億47百万円)で54億45百万円の黒字(同16億51百万円の赤字)だった。その他事業は4億30百万円の黒字(同3億10百万円の赤字)だった。なお収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業ポートフォリオ再構築

 成長加速に向けて事業ポートフォリオ再構築を推進している。子会社売却に伴って増加する換価性の高い資産は、積極的なポートフォリオ再編に活用する。

 日本金融事業は日本保証が保証業務、パルティール債権回収が債権回収業務を展開している。21年8月には子会社Frontier Capitalを設立してファクタリング事業を開始した。23年1月には日本保証が博多不動産販売と、不動産投資型クラウドファンディングサイト「ライフフィールドファンド」を通じて、博多不動産販売が所有する対象不動産への買取保証業務を開始すると発表した。

 なお20年11月に、Nexus Bank(旧SAMURAI&J PARTNERS)と株式交換によってJトラストカードおよびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外としたが、その後22年4月にNexus Bankを株式交換によって完全子会社化し、Nexus Bank傘下の子会社3社(SAMURAI TECHNOLOGY、Nexus Card、JT親愛貯蓄銀行)も連結子会社となった。SAMURAI TECHNOLOGYについては22年4月に全株式を譲渡して連結除外した。

 日本保証の子会社であるRobotシステムは、22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始し、22年4月のバージョンアップによって小規模不動産特定共同事業にも対応可能となった。そして22年6月にはRobotシステムが、経済産業省が推進する「IT導入補助金」においてIT導入支援事業者として採択され、対象ITツールとして「fundingtool」が認定された。

 22年3月に子会社化したエイチ・エス証券については、22年10月1日付で商号をJトラストグローバル証券(JTG証券)に変更した。22年12月にはJTG証券が主幹事を担当したアップコン<5075>が名証ネクストに上場した。TOKYO PRO Market上場支援と、一般市場へのステップアップ上場支援を1社完結で実現させた実績を持つ国内唯一の証券会社である。さらに23年2月1日付でミライノベート<3528>を吸収合併した。シナジー効果で不動産事業を拡大する方針だ。

 韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却したが、Nexus Bankを完全子会社化したことに伴ってグループに復帰した。韓国・JTキャピタルについては21年8月に全株式の譲渡を完了して連結除外した。韓国・JT貯蓄銀行については、株式売買契約締結期限までに契約内容の合意に至らなかったため株式譲渡を中止した。

 この結果、韓国およびモンゴル金融事業は、韓国・JT貯蓄銀行、韓国・JT親愛貯蓄銀行、および債権回収業務の韓国・TA Asset、割賦業務のモンゴル・JトラストクレジットNBFIが展開している。JT貯蓄銀行とJT親愛貯蓄銀行を合計すると、総資産および貸出金で韓国の貯蓄銀行79行のうち7位規模(21年9月現在)となる。

 22年6月にはJT親愛貯蓄銀行が未婚・片親家庭のための寄付金を福祉施設エランウォンに贈呈した。23年1月にはJT親愛貯蓄銀行が「2023大韓民国ファーストブランド賞」で8年連続貯蓄銀行部門大賞を受賞した。顧客優遇金融商品発売および社会貢献活動により地域社会に持続的に尽くしてきた功労が認められた。

 東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)がマルチファイナンス業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB)が銀行業務を展開している。

 JTRBは、21年1月に人事評価機関であるHR Asiaの2020HR ASIA AWARDにおいて「2020 Best Companies to work for in ASIA」(アジアを代表する働き方のベストカンパニー)を受賞した。21年11月には、英国の著名な国際ビジネス誌であるGlobal Business Outlook(GBO)から「MOST CUSTOMER CENTRIC BANK―CAMBODIA2021」を受賞した。顧客への商品知識・専門的な対応・優れたサービスの提供、社会的責任等の基準で評価された。22年7月にはコベルコインドネシアと重機のファイナンス投資商品販売で提携した。

 BJIは21年11月に飯田グループのインドネシアの住宅開発・販売会社と住宅販売に係る業務提携契約を締結した。今後も、インドネシア各地に事業展開している飯田グループ各社と業務提携を順次締結し、飯田グループが提供する住宅を購入する顧客を対象に住宅ローン商品を提供する。21年12月にはAsuransi Jiwa Sequis Financialと、生命保険・医療保険の販売を視野に入れた包括的業務提携契約を締結した。

 なおBJIは、21年12月に取締役社長が「2021年度のインドネシアベストリーダー賞」を受賞、22年3月に2022年度トップCSRアワードで2つの賞を受賞、22年5月にインドネシア・インスティチュート・コーポレートディレクターズ(IICD)による「第13回IICDコーポレート・ガバナンス賞」において2つの賞を受賞している。

 投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 GL社に対する訴訟の解決・債権回収が課題となっていたが、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。シンガポールにおいては控訴裁判所の判決(20年10月)に基づいて債権回収が進展している。

 タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLの請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLの上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。また、GLに対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。

 英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル、1ドル=127円換算で約121億円)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

 日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。

 KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主だが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社に異動した。

 非金融事業でITシステム事業を展開している特定子会社Jトラストシステムについては解散を決定している。必要な清算手続が完了次第、清算結了となる。

■22年12月期大幅増益予想、23年12月期も収益拡大基調

 22年12月期の連結業績予想(IFRS、22年8月12日付で営業収益と各利益を上方修正、各利益は22年5月13日に続いて2回目の上方修正)は、営業収益が21年12月期比86.7%増の790億円、営業利益が147.1%増の130億円、税引前利益が171.2%増の160億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が968.4%増の120億円としている。配当予想は21年12月期比9円増配の10円(期末一括)としている。

 東南アジア金融事業の収益改善に加えて、Nexus Bankの株式取得に伴う負ののれん発生益の計上も寄与する。なおJTG証券の業績は市場環境の変動の影響を大きく受けるため連結業績予想に含めていない。セグメント別営業利益の計画は、日本金融事業が37億39百万円、韓国およびモンゴル金融事業が130億39百万円、東南アジア金融事業が2億68百万円の赤字、投資事業が15億41百万円の赤字、その他事業が37百万円としている。

 第3四半期累計は、営業収益が前年同期比84.4%増の564億80百万円、営業利益が61.6%増の126億49百万円、税引前利益が88.3%増の157億38百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が398.2%増の119億85百万円だった。

 金融事業の成長と事業ポートフォリオ再構築の成果で大幅増収増益だった。特に東南アジア金融事業が黒字転換し、韓国およびモンゴル金融事業の負ののれん発生益が寄与した。

 セグメント別営業利益は、日本金融事業が営業費用や販管費の増加で10.4%減の32億53百万円、韓国およびモンゴル金融事業がJT親愛貯蓄銀行の連結取り込みや負ののれん発生益の計上などで4.2倍の118億79百万円、東南アジア金融事業が優良な貸出金の積み上げによる営業収益増加(70.0%増収)や、審査体制見直しによる貸出債権のリスク低下、預金金利低下による資金調達コストの減少などで7億38百万円の黒字(前年同期は29億81百万円の赤字)と黒字転換、投資事業は前年のシンガポールでの勝訴判決に伴う履行金受領の反動で15億75百万円の赤字(同60億28百万円の黒字)だった。その他事業は1百万円の赤字(同22百万円の赤字)だった。日本ファンディングの不動産事業における販売収益で赤字縮小した。

 四半期別に見ると、第1四半期は営業収益が123億51百万円で営業利益が19億42百万円、第2四半期は営業収益が210億80百万円で営業利益が89億85百万円、第3四半期は営業収益が230億49百万円で営業利益が17億22百万円だった。

 通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は営業収益が71%、営業利益が97%、税引前利益が98%、親会社の所有者に帰属する当期利益が100%と利益は通期予想をほぼ達成している。通期利益予想は3回目の上振れの可能性が高いだろう。

 さらに事業ポートフォリオ再構築に伴って新たな成長フェーズに入り、23年12月期以降の営業利益率は飛躍的に向上する見込みとしている。23年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は戻り試す

 株価は上値を切り下げる形だったが調整一巡して切り返しの動きを強めている。好業績を評価して戻りを試す展開を期待したい。2月8日の終値は569円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS105円24銭で算出)は約5倍、前期推定配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.8%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分903円66銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約837億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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