ベステラは下値固め完了、23年1月期は一時的要因で赤字予想だが、事業環境良好で24年1月期収益拡大期待

 ベステラ<1433>(東証プライム)は鋼構造プラント設備解体工事を展開し、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。23年1月期は受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長など一時的要因で赤字見込みだが、新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」において26年1月期目標値を上方修正している。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、24年1月期以降の収益拡大基調を期待したい。株価は昨年来安値圏で軟調だが、22年10月の安値を割り込むことなく推移して下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお3月10日に23年1月期決算発表を予定している。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどである。

 22年1月期の完成工事高(57億36百万円)の業界別構成比は電力が21%、製鉄が17%、石油・石化が35%、環境が21%、他(3D、ガス、その他)が6%だった。期末受注残高(15億94百万円)の業界別構成比は電力が17%、製鉄が24%、石油・石化が39%、環境が16%、その他が4%だった。構成比は大型案件によって変動する。また、顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、下期に完成工事高が増加する傾向が強い。

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 20年2月には、インターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤(東京都渋谷区)を子会社化した。

 22年7月には日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において、ベステラが保有する「発電用風車設備解体に関する特許技術(転倒工法)の実施許諾契約を締結した。風力発電設備解体工事業における協力体制を強化する。

 22年9月には、民間住宅解体分野において全国約1600社の専門工事会社と施主をマッチングするサービス「クラッソーネ」を運営するクラッソーネと資本業務提携(12.5%出資)した。

 22年10月には、クレーン測定ロボットの開発完了と、当ロボットを用いたシステムによるクレーンレール測定サービスの提供開始を発表した。クレーン検査方法のデジタル技術による効率化、安全性の向上を目的としてイクシス(神奈川県川崎市)と共同開発し、実証実験が終了したため自社およびプラント・工場設備保全会社向けに本格運用する。

 22年12月には、一般的にガスタンクと呼ばれる球形のガスホルダーおよびこれと用途が類する円筒形タンク等の解体に関して、三谷産業<8285>と業務提携した。同社の解体技術と三谷産業のショットブラスト(表面塗装剥離)技術を融合し、除去が困難なPCB含有塗膜を安全に除去する技術を確立する。

 また22年12月には同社が保有している、陸上風力発電設備の転倒に用いる「発電用風車設備解体に関する特許技術」(転倒工法)に関して、長崎県松浦市において転倒を実施したと発表している。転倒方向を確実に制御できるため安全性が高く、大型クレーンの回送や組み立てなどで生じる費用も削減できる工法である。

 なお20年9月にリバーホールディングスを持分法適用関連会社化したが、リバーホールディングスがタケエイと21年10月1日付で共同持株会社TREホールディングス<9247>を設立して経営統合したため、リバーホールディングスは持分法適用関連会社から除外された。業務提携関係は継続するとしている。

■新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」

 受注環境は良好である。第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、同社試算の市場規模は電力関連が約13兆円、製鉄関連が約2兆円、石油・石油化学関連が約8兆円、その他製造業が約20兆円+αとしている。

 22年12月に公表した新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」では基本方針に「脱炭素経営と企業風土の変革による収益力向上」を掲げた。そして数値目標は26年1月期売上高120億円(脱炭素解体ソリューション90億円、DXプラントソリューション30億円)、営業利益12億円、当期純利益8億80百万円、1株当たり純利益(EPS)99円、ROE(自己資本利益率)13%、工事監督員数92人(22年1月期実績44人)とした。従来の「中期経営計画2025」の26年1月期目標値に対して、売上高を20億円、営業利益を2億円、当期純利益を1億28百万円、それぞれ上方修正した。

 重点戦略として、工法によるイノベーションとしての脱炭素解体ソリューション、IT活用によるイノベーションとしてのDXプラントソリューション、さらなるイノベーションを産み出す土台としての人事戦略を掲げている。脱炭素経営を通じて企業価値・ブランド向上を実現するため、脱炭素解体に資する工法開発(リンゴ皮むき工法や風車転倒解体に続く脱炭素解体工法の開発)、解体工事のリユース・リサイクル率向上(脱炭素解体の要素技術確立とトレーサビリティ確保による付加価値創出)、脱炭素経営に紐づいた新規ビジネス創出(プラント解体工事から派生する工事以外のビジネス創出)を推進する。

 投資計画としては3年総額35億円の積極投資を実行する。内訳は、脱炭素解体ソリューションで13億円(工法開発、実証実験、M&A)、DXプラントソリューション16億50百万円(AUSE、天井クレーンロボ、遠隔・無人化施工、ロボット・システム開発、M&A)、人事戦略5億50百万円(採用・紹介、教育、M&A)としている。株主還元については配当性向40%を目安として安定的な配当を実施する。

 21年12月には指名・報酬委員会の設置、株主総会の議決権行使の電子化および機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームへの参加、サステナビリティ基本方針制定およびサステナビリティ委員会設置を発表した。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実・強化を図り、SDGsへの取り組みを強化する。

 また「脱炭素アクションプラン2025」策定を機に、事業環境の変化に対応して変革をより早期に実現するため、社長並びに代表取締役の交代(23年2月1日付予定)を含む役員人事によって執行体制の強化を図るとしている。なお1月23日には監査等委員会設置会社への移行(23年4月下旬に開催予定の第50期定時株主総会の承認前提)を発表している。

■23年1月期は一時的要因で赤字予想だが24年1月期収益拡大期待

 23年1月期連結業績予想(22年12月8日付で下方修正)は売上高が22年1月期比12.0%減の52億50百万円、営業利益が2億70百万円の赤字(22年1月期は6億07百万円の黒字)、経常利益が1億40百万円の赤字(同8億40百万円の黒字)、そして親会社株主帰属当期純利益が2億円の赤字(同14億67百万円の黒字)としている。配当予想は22年1月期比4円増配の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 業績予想については、前回予想に対して売上高を14億50百万円、営業利益を8億90百万円、経常利益を8億06百万円、親会社株主帰属当期純利益を6億69百万円それぞれ下方修正した。受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長で売上高が前回予想を下回り、一部工事における工事損失引当金計上や役員退職慰労金引当計上なども影響する見込みだ。22年1月期との比較で見ると、経常利益と親会社株主帰属当期純利益は一過性利益(持分法投資利益、特別利益)の剥落も影響する。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比5.7%増の38億63百万円、営業利益が97.0%減の7百万円、経常利益が82.6%減の77百万円、親会社株主帰属四半期純利益が98.6%減の16百万円だった。

 売上面はプラント解体事業の大型の進行基準工事が進捗し、21年12月に子会社化した矢澤(アスベスト除去工事に強みを持つ環境対策工事)の連結も寄与して増収だが、外注費の増加などで売上総利益率が低下し、継続的な人材採用・研究開発・広告宣伝投資による販管費の増加なども影響して大幅減益だった。

 プラント解体事業の完成工事高は6.3%増の37億01百万円、完成工事の業界別構成比は電力が13%、製鉄が26%、石油・石化が27%、環境が15%、ガスが5%、3Dが3%、その他が11%だった。環境関連の工事需要の高まりや矢澤のグループ化で環境分野の構成比が上昇している。受注高は84.5%増の56億90百万円、第3四半期末時点の受注残高は35億82百万円となった。受注高および受注残高ベースでは石油化学業界の大型工事案件が寄与した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が16億81百万円で営業利益が2億18百万円、第2四半期は売上高が8億52百万円で営業利益が1億43百万円の赤字、第3四半期は売上高が13億33百万円で営業利益が68百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長など一時的要因で下方修正して赤字予想となったが、新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」では26年1月期目標値を上方修正している。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、24年1月期以降の収益拡大基調を期待したい。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、更なる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により、流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 そして22年4月には、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況を開示した。流通株式数については22年1月31日時点で5万2101単位となり、21年6月30日時点の4万6109単位に対して5992単位増加した。

 業績面では、中期経営計画初年度の22年1月期は売上高が59億66百万円、営業利益が6億07百万円、経常利益が8億40百万円、親会社株主帰属当期純利益が14億67百万円となった。営業外収益と特別利益における一過性利益計上も寄与して、計画(売上高56億円、営業利益4億50百万円、経常利益5億18百万円、親会社株主帰属当期純利益3億60百万円)を達成した。一過性利益を除くベースでも経常利益6億39百万円、親会社株主帰属当期純利益4億15百万円となり、計画を達成した。

 23年1月期は下方修正して赤字予想となったが、受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長など一時的要因が主因であり、これを除けば各種施策が着実に実施されていると評価できるだろう。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年1月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてクオカードを贈呈する。なお22年6月に制度の拡充(詳細は会社HP参照)を発表した。5単元(500株)以上保有株主を対象とするベステラ・プレミアム優待倶楽部を新設し、保有株式数に応じて商品に交換可能な優待ポイントを贈呈する。23年1月31日対象分から実施した。またベステラ・プレミアム優待倶楽部を通じて株主管理のDX化も促進する。

■株価は下値固め完了

 株価は昨年来安値圏で軟調だが、22年10月の安値を割り込むことなく推移して下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。2月20日の終値は916円、前期推定配当利回り(会社予想の20円で算出)は約2.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS502円81銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約82億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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