2009年05月28日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

東洋建設:前期は9期ぶりに復配へ


■間接コストの削減への取組の成果が、大幅増益の要因

東洋建設のHP 東洋建設<1890>(東1)の前09年3月期の決算説明会が、経団連会館(東京・大手町)で27日に開催された。前期の連結業績は13日に発表済みであるように、売上高1557億2900万円(前々期比3.4%減)、営業利益30億7400万円(同72.2%増)、経常利益17億9300万円(同91.5%増)、純利益5億5400万円(同116.8%増)と減収ながら大幅増益で着地している。大幅増益を達成したことから、9期ぶりに0.5円の復配を実施する。
同社代表取締役社長赤井憲彦氏は「リーマンショックにより、前期は民間の設備投資が止まりました。弊社も多大な影響を受け、国内で内定していた100億円の契約が消えてしまいましたが、何とか最終利益を残すことができました。そこで、8期連続無配でしたので、わずかばかりですが復配を決めました」と苦しい時期を乗り切り、しかも復配まで漕ぎ着けた前期を振り返った。
 今10年3月期連結業績予想も、売上高1450億円(前期比6.9%減)、営業利益32億円(同4.1%増)、経常利益22億円(同22.7%増)、純利益9億円(同62.4%増)と減収であるが最終大幅増益を見込み、配当は0.5円増配の1円を予定している。
 今期の基本方針は、利益を重視し、優れた技術と確かな信頼で「存在価値ある企業」を目指すことを掲げている。具体的な数値目標として、営業利益30億円、自己資本比率18%以上としているが、既に1年前倒しで営業利益30億円は達成している。
 そのための基本戦略として、土木部門では「海の東洋」の強みを最大限に活かし、早期工事獲得、補正予算への対応に注力するとしている。今期単体の受注額は700億円(前期比15.9%増)を見込んでいる。補正予算については、船舶の大型化に対応した産業港湾のインフラ刷新予算として880億円、スーパー中枢港湾機能強化予算として880億円が発表済み。同社では関東スーパー中枢港湾プロジェクト、名古屋スーパー中枢港湾プロジェクト、大阪スーパー中枢港湾プロジェクトといった大型プロジェクトに的を絞り、受注獲得に動く方針。過去2年の国交省の調査基準価格の動向は、浚渫工事で07年度約80%、08年度約84%となり、港湾構造物工事も07年度約79%、08年度約83%とアップしていることから、落札率の上昇が見込まれる状況にある。このほかに航空局の一般空港の高質化、耐震強化、無線等関係施設の予算として282億円、羽田空港C滑走路延伸に52億円の予算がついているが、このプロジェクトについても受注獲得を目指す。
 建築部門については、与信管理強化による選別受注を継続し、官庁工事の拡大、民間工事の確保を目指すとしている。今期の個別の計画では、480億円(同27.3%増)の受注を見込む。
 海外事業については、案件審査を強化し、リスクを極小化することにより、安定した収益を確保することを重要視している。今期の個別の海外受注予定は100億円でフィリピン54億円、ベトナム46億円を見込んでいるが、既に、フィリピンの河川護岸改修工事等で一番札を獲得していて、現在契約交渉中であることから、ほぼ受注は確実と思われる。
 一方で、効率的経営を推進するために、経営資源の再構築により間接コストの削減を基本戦略に組み込んでいる。既に、数年前から販管費の削減に取り組んでいて07年3月期の販管費率6.3%、08年3月期5.1%、09年3月期4.7%と着実に販売管理費の削減は実行されていて、今期は4.3%を見込んでいる。また、営業利益率は、07年1.7%、08年1.0%、09年2.0%と一度は落ち込んだものの盛り返している。今期は2.1%を目標としている。
 基本戦略の利益重視の姿勢と間接コストの削減への取組の成果が、厳しい環境でありながらも大幅増益の理由といえる。また、一昨年に浚渫工事用のグラブ船を建造したことで、前期はフル稼働して売上に貢献したが、今期も期待できる上に、大型補正予算の海上土木プロジェクトの契約に関しても強力な材料といえる。それでいて「今期の予想数値に補正は全く考慮していない。」という赤井社長の言葉に、業績拡大への確かな手応えが垣間見てとれる。