2009年05月21日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

細田工務店 今期は減収ながら黒字転換


同社の強みを活かしたBY CONCEPTで再スタート

細田工務店<1906>(JQ) 細田工務店<1906>(JQ)は、18日に前09年3月期連結業績を発表した。売上高347億8000万円(前々期比15.2%減)、営業利益△162億1800万円(前々期14億3800万円)、経常利益△170億8000万円(同5億5300万円)、純利益△190億1400万円(同3億900万円)と大幅な減収減益であった。
 大幅な減益となった要因は、売上高が15.2%も減収だったことに加え、棚卸資産の評価損125億円を売上原価に計上したため売上総利益の段階から112億3700万円の赤字であり、営業利益以下も大幅赤字となった。また、大幅な税務上の繰越欠損金を計上したため、繰延税金資産13億8000万円を取り崩すことになった。
 棚卸資産は、589億9700万円(08年3月期末)から283億7800万円(09年3月期末)とほぼ半減した。有利子負債も429億6800万円(08年3月期末)から248億100万円(09年3月末)と約181億円の減少となっている。
 「前期で、棚卸資産の評価損、繰延税金資産の取り崩しと、出すものは全部出し尽くしました」(IR担当者)とのこと。

 同社は、戸建て分譲と注文住宅を行っている。事業別に見ると、建設事業、不動産事業、その他の事業に分けられている。建設事業は、法人受注、個人受注(注文住宅、建売)、リフォーム、その他(アパート、ビル)からなる。不動産事業は、分譲住宅(土地建物、建物)、土地販売、その他(RC<鉄筋建造物>、収益不動産)と様々な不動産を手掛ける。その他の事業は、主に顧客に対する金銭の貸付業務や美容室の店舗運営(15店舗)を行っている。
 今期は創業以来の大幅な赤字を出した翌年で、業績が回復するかどうか注目されるが、連結業績予想は、売上高255億円(前期比26.7%減)、営業利益11億5000万円、経常利益1億7600万円、純利益1億6000万円と黒字転換を見込むが、増収という訳にはいかない。
 今期の販売予定の戸建ては242棟と前期の415棟に比較すると少ないが、今期は1棟当たりの販売単価も通常の価格で販売できる環境となったため、黒字化する見込み。前期はリーマンショックの影響で、金融不安が広がり、資金確保のために、同業他社が一斉に赤字覚悟で在庫を売り切る必要に迫られたことで、同社も価格競争に巻き込まれる結果となった。
 しかし、今期は、社員の半数以上が設計も工事もできる建設のプロフェッショナルが揃っているため、その実力を活かしたBY CONCEPT(バイコンセプト)システムで適正販売価格を実現する方針。
 現在は、戸建て住宅については、大幅な値引き販売が終息しようとしている状況であるが、マンションについては、まだアウトレットマンションという言葉もあるくらいで、「当然値引きするものだと思われています」(IR担当者)。
 そこで、同社が提案するのがBY CONCEPT(バイコンセプト)プラン。住宅分譲地にモデルハウスを2棟建てて、見学会に訪れた人達に見学後のモデルハウスの感想を聞くと、「まず、最初に出てくるのは、買えない理由が出てきます。間取り、キッチンレイアウト、外観についての様々な意見が出てきます。そこで、現地のスタッフが、要求通りにレイアウトを変更します。するとまた、更に細かな点での要望が出てくることになります。そのように、様々なことを相談しているうちに、お客様の我が家への夢が次第に膨らんできます。そうなると、建売ではなく、注文住宅を建てるのと同じになりますから、検討中の住宅への想い入れが強くなり、自然に値引きの話は出なくなります」(同)。つまり、同社が力を入れているBY CONCEPTシステムは、建売住宅でも出来る限り、購入者の要求を取り入れることが出来る点が魅力で、建築確認書の範囲内で柔軟に対応できる住宅のプロフェッショナルが揃っている同社ならではの提案であり、購入者の要求を最大限取り入れることで、販売価格の値引きリスクを解消する。
 BY CONCEPTのもう一つの長所は、買主決定後の着工のため、建物在庫の保有期間は短期間となるため、棚卸資産の評価損が発生する心配もない。
 「昨年の11月からBY CONCEPTをスタートしましたが、好評です。前期導入した分譲地はグローイングスクエア大泉学園通りをはじめ、8分譲地です。今期も順次導入していく方針です」(同)。
 また、同社が発表した中期経営計画でもBY CONCEPTを中心に幅広い顧客ニーズの取り込む方針。具体的には、新規の分譲地だけではなく、分譲地周辺の住民のニーズを開拓するドミナント戦略を実施する考え。その方法として、分譲地の折り込みチラシの一部に、周辺住民向けに、増改築、リフォームの相談にも応じる知らせを掲載し、分譲地のモデルハウスを街角展示場として活用することで、分譲地周辺の分譲住宅、注文住宅、リフォームの需要を全て取り込む計画。
 今期は、前期の不動産価格の急落の影響で、思わぬ減収減益となったが、同社の強みを活かしたBY CONCEPTの登場で、建売でありながら注文住宅の家造りが可能となり、同社の再スタートが始まったといえる。