【インタビュー】ＪＣＬバイオアッセイ　経営企画室長田中氏に聞く

今年３月１７日、大阪証券取引所ヘラクレス市場に新規上場を果たしたＪＣＬバイオアッセイ＜２１９０＞（ＨＣ）。各製薬メーカーが新薬開発にあたり、その安全性や有効性を確認するために実施する血液・尿内の薬物濃度測定（バイオアナリシス）の受託を主力業務としている。 また新薬の品質安定性・保存性を測定する医薬品品質安定性試験にも力を入れており、ＣＲＯ（医薬品開発受託研究機関）として今後の発展性が期待される。 　今回、同社経営企画室長：田中雅樹氏に、上場の目的、今後の経営戦略及び投資家に対する姿勢などについてお話を伺った。（インタビュアー：望月勇人）

田中氏：まず第一に、２０１０年完成を目指している米国の研究施設建設資金への充当が目的です。また、国内外の受注増加に伴いリクルート活動を積極化させており、より優秀な人材を確保していくためには、企業としてのパブリシティ向上が不可欠であると認識したことも大きな理由の一つです。


田中氏：まず当社は新薬開発などを手掛ける製薬メーカーから、医療用医薬品の安全性・有効性及び製剤の品質・安定性を確認する試験を受託する分析ＣＲＯ（医薬品開発受託研究機関）です。
その業務の中で主力となっているのが、「バイオアナリシス」と呼ばれる、ヒトや動物から採取した血液や尿に含まれる薬物濃度を測定する試験です。投与後時間を追って測定し、得られた濃度推移の結果で、医薬品の有効性、安全性が確認・評価され、新薬の市販許可が下りるか否か決まる大変重要な試験業務です。現在同業務が、売上の８割強を占めております。臨床試験・非臨床試験双方に対応しております。
　また原薬・製剤の品質・安定性を確認する「医薬品品質安定性試験」も重要な業務の一つとなっております。こちらが売上全体の約１５％を占めております。


田中氏：現在の主力業務に関わっており、またノウハウを生かせる代謝物構造解析の受託業務を進めていきたいと考えております。一部既に請け負っております。新薬開発の過程で実施される試験であり、新薬を研究対象のメーンとしている当社の業務の発展にもつながると考えております。
　また投与した新薬が体内で何らかの化学反応を起こし、違う物質に変化しますが、どの程度そのままで残っているかを調査する代謝安定性試験なども今後手掛けていきたい分野と考えております。


田中氏：まず今期は、既にリリースも出しておりますが、売上高が前期比６％増、営業利益は同５１．７％増を見込むなど、過去最高業績を更新する見込みです。製薬メーカーの試験アウトソーシングは着実に進んでおり、国内市場においては来期以降も数％の増収増益を見込んでおります。また、現在積極採用を進めている人材が本格的な戦力となるのは２０１１年度（７期）からと捉えており、そこからはかなりジャンプアップ出来るのではないかと期待しております。
　また国内市場の約１０倍規模（約９００億円）を誇り、世界の製薬消費の約５０％を占める米国市場に食い込むため、現在、米国イリノイ州に研究所を建設中です。こちらは来年２月完成予定ですが、その後の設備設置や人材の教育期間が必要となってくるため、実質的な稼動はさらにその後になります。結果を出すまでにある程度の期間を要するビジネスでもあり、本格的な業績への貢献は２０１２年度（８期）からと捉えております。米国は市場規模が大きいだけでなく、アウトソーシング化も日本より進んでおり、かなりの受注規模が期待出来ます。当社は既に技術力には自信を深めており、米国研究施設の稼動によりスピード・コスト面での課題が解決され、大きな業容拡大のチャンスと考えております。
　なお、潜在ニーズの高い中国を始めとしたアジアについては米国での業務が軌道に乗った後の検討課題としております。


田中氏：２０１０年度入社については理系新卒を中心に１０名ほど採用したいと考えております。現状は既存の受注に対応するのが精一杯といったところで、正直、研究員を中心にマンパワー不足は否めません。今回、上場企業となったことで、知名度の向上、ブランド力アップが図られ、従来にもまして多くの優秀な学生に応募して頂いております。就職状況に厳しさを増す今をチャンスと捉え、優秀な人材の積極的な確保に努めたいと考えております。


田中氏：今年３月１７日に新規上場したばかりで、本格的なＩＲへの取り組みはこれからというのが正直なところです。直近の株価はやや厳しい展開となっておりますが、当社のビジネスは早急な結果・結論を出せる業態ではないこともあり、また今後も新たな資金調達の必要性が出てくる可能性も高いことから、例えば自社株買いなどの小手先な株価対策は現状、視野に入れておりません。
ここは当面、当社の正確な事業内容、特に類似他社とのビジネスモデル・収益モデルの違いをなるべく多くの投資家の方々にご理解頂く努力が必要と考えております。そして地道に本業業績のアップに邁進する姿勢を見せられればと考えております。


田中氏：当社はヘラクレス市場に上場したこともあり、必然的に個人投資家の方々のウェイトが高くなっていくと予想されます。そのため、最重点投資家層と認識しております。ただ先程も述べたように、当社のビジネスモデルの性格上、また米国に建設中の研究施設稼動計画など現在の進捗状況を鑑みても、短期的な結果を出しにくい状況にあります。そのため、個人投資家の方々にはある程度、長期的な視点に立って観察して頂ければと思っております。勿論、国内市場を中心に、早急に結果を出せる分野は結果を出して、着実な発展を示せる努力に邁進していく所存でございます。結果を出せれば、配当面などで還元したいと考えております。
　どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。