2011年11月11日
デジタルアーツ:道具登志夫社長=第2四半期の概況と取組、業績予想を語る
■第2四半期は増収増益を達成
フィルタリングソフトのデジタルアーツ<2326>(JQS)は2日、大手町サンケイプラザで今12年3月期第2四半期決算説明会を開催した。
代表取締役社長道具登志夫氏は、第2四半期の概況、下期の取組、通期業績予想について説明を行った。
「5月の決算説明会の際、今期はこれまでの守りの経営から攻めの経営に変わるというお話をさせていただきました。本日は決算説明の後、今下期における急成長するスマートフォン向けデジタル市場へ向け攻めのスキームについて、ご説明させていただきます。
第2四半期の売上高は、対前年同期比20.4%増の13億28百万円、営業利益は14.7%増の3億77百万円、経常利益は14.6%増の3億77百万円、純利益は8.8%増の2億6百万円と増収増益を達成することが出来ました。
市場別売上高についてご説明します。企業向け市場の売上高は10.2%増の6億12百万円、公共向け市場の売上高は40.9%増の5億85百万円、家庭向け市場の売上高は1.4%減の1億30百万円となりました。
企業・公共向け市場の収益は順調に推移することが出来ました。地震の影響が想定より軽微で、地域密着型による需要の掘り起こし、及び複数年契約による既存顧客の囲い込みを行った結果、大幅な増収益を達成することが出来ました。また、昨年11月に販売を開始しましたWebプロキシアプライアンス「D−SPA」の販売も大変順調であり、将来的には、「i−FILTER」の収益に次ぐ一つとなることを期待しています。
家庭向け市場では、ゲーム機、テレビ、PCのバンドルからの収益は回復しましたが、月額制の導入に伴い、一時的に収入が低下した結果、前年同期比微減となりました。
続きまして、売上原価でございますが、前年同期比29.3%増の2億80百万円、販売費及び一般管理費は20.3%増の6億69百万円となりました。これらには、TV−CMに加えまして、本社移転の一部費用が含まれています」と第2四半期のポイントについて語った。
■3月中旬から1ヶ月間、長野県でテレビCMを放映
引き続き下期の取り組みについて詳しく説明が行われた。
「5月の決算説明会で、今期から企業、公共向け市場の堅固な財務基盤をもとに成長が期待される家庭向け市場への攻めの経営をするとお伝えしました。下期においてもその方針を継続していきます。まず、下期の施策をご説明する前に、上期の施策を振り返りたいと思います。
3月中旬から1ヶ月間、弊社として初めて長野県でテレビCMを行いました。CMには加藤清史郎君を起用しまして、エリア限定でありますが、期間中、多い人は1日10回くらい見る量を示す5000GRPを放送しました。また、同時に量販店販売コーナーの充実を図り、清史郎君を活用したWeb展開も実施しました。
このテレビCMでございますが、非常に高い評価をいただきまして、「消費者のためになった広告コンクール」で金賞を受賞いたしました。この賞は消費者視点で評価するわが国唯一の広告賞でありまして、初めての広告で受賞することは非常に稀なことであります。このCMの後、効果分析を行いましたところ、製品の認知度は倍以上に向上しました。しかしながら、その結果の購買につきましては、なかなか結びつかないという課題が残りました。上期に行いましたプロモーションの結果をもとに、下期にはメディアミックスによるプロモーションの展開により、認知度の向上だけではなく、購買へ結びつく仕組みを作っていきたいと思います。
■2015年までにコンシューマ向けスマートフォン用フィルタリング市場は約155億円規模に
下期には、コンシューマ向けスマートフォン用フィルタリング市場に焦点を合わせ、攻めの経営を行っていきたいと考えています。
2015年までに約155億円のコンシューマ向けスマートフォン用フィルタリング市場が創出されると予想され、少なくとも数十億程度の営業利益を生み出すことが出来ると想定しています。更に当然でございますが、シェアが拡大し、もっと利益が出ると想定しています。この様な非常に魅力的な市場であります。
市場規模155億円の算出根拠を申し上げます。現在10歳〜17歳未満の未成年の人数は国民全体の約7.5%で約1000万人といわれています。2015年におけるスマートフォンのコンシューマ契約者数の予測は約7,505万契約です。そのうち未成年が利用するスマートフォンの契約数は約563万契約で、フィルタリング利用率は76.6%でございます。その結果、2015年の予想フィルタリング契約者数は約430万契約となります。1年間の契約料が3,600円ですので市場規模は約155億円となります。ここが私達が下期に攻めるマーケットでございます。このスマートフォン市場を攻めるのは10年に1度のチャンスととらえています。この市場に他社に先駆けて参入することで、先ほど50%のシェアといいましたが、100%のシェア獲得を目指していきます。
そのための施策として、機能優位性を訴求する、キャリアと連携する、クロスメディア戦略を取る、ビジネス向け市場をターゲットとするの4つを挙げています。
■未成年者のスマートフォン利用には、様々な危険性が指摘されている
一つ目は、"機能優位性を訴求する"でございます。MM総研のレポートによりますと、2015年には携帯電話の半分以上がスマートフォンになるとみられています。先日発表されたMM総研の調査によりますと、この数字よりさらに20%多くのスマートフォンが出荷されると予想しています。今後、スマートフォンを利用する未成年者の利用率も急速に伸び、2014年には中学生で15%、高校生で20%まで伸びると予測されています。
しかし、未成年者のスマートフォン利用には、様々な危険性が指摘されており、普及には高機能なフィルタリングが必要であります。その危険の中でも、3つのことについて申し上げようと思います。
一つ目の危険性は、スマートフォンは携帯電話と違い、PCサイトにアクセスすることが出来ます。携帯電話ではアクセスできなかった危険なPCサイトにもスマートフォンでは閲覧が可能になります。最近では私共で集めているデータベースで見ると、スマートフォン専用の危険なサイトが次々と出てきています。
二つ目の危険は、保護者の目の届かないところで利用されるということです。
三つ目は、未成年者には不適切なアプリケーションが存在していることです。アンドロイドマーケットにおいて、アダルト、もしくは出会いで検索すると簡単にアダルトと出会い系のアプリケーションが数多く検索できます。もう既に、ウェブだけでなくて、スマートフォンのアプリの世界にこのような情報が氾濫しているこの事実をほとんどの保護者の方は全く知らず、お子様にスマートフォンを与えている情況です。
■現在のキャリアのフィルタリングには大きな欠点がある
次に、キャリアの中で無料でフィルタリングを提供しているところがございます。しかし、キャリアが提供するフィルタリングサービスには非常に大きな問題があります。と申しますのは、スマートフォンをWi−Fiで利用する場合は、フィルタリングが全く機能しないからです。今まで普通の携帯電話でしたら、キャリアのサーバーの中でフィルタリングがかかっていますが、ご存知のように、スマートフォンはWi−Fiでインターネットに接続出てきます。実は、ここは法律でも規制されておらず、キャリアには何にも義務はございません。スマートフォンを使いWi−Fiでインターネットに入った場合、キャリアのフィルタリングは通らない。つまり、全く裸の状態のスマートフォンが提供されていることになり、子供はフィルタリングのかからないWi−Fiでインターネットに接続することになるのです。この点において、現在のキャリアのフィルタリングには大きな欠点があるといえ、そのため、政府も大きな問題意識を持っています。
■同社のフィルタリング機能は未成年の安全を守る
一方、私どもの提供するフィルタリングの機能はあらゆるキャリアのフィルタリング機能と比較しても、未成年の安全を守る優秀な機能を備えており、このような優位性のあるフィルタリングを他社に先駆けて提供しています。
Android向けには7月20日に『i−フィルター for Android』β版の提供を開始し、10月1日より正式版の提供を開始しています。
■iPhone4Sへの推奨フィルタリングソフトとして「i−フィルター」を採択
続きまして、キャリアとの連携について紹介します。10月14日より「i−フィルター for iOS」正式版を提供開始しました。KDDI様が同日に発売されましたiPhone4Sへの推奨フィルタリングソフトとして、「i−フィルター」を採択していただきましたので、1月31日までKDDI様のご協力により無料で提供します。そして、auショップでは、「i−フィルター」の設定マニュアルを青少年の利用者にはすべて配布しています。また、キャリアのアプリケーションマーケットに「i−フィルター」を申請中でございます。更に、ソフトバンクモバイルのおすすめアプリ紹介サイト『ピックアップ』でも紹介されています。現在掲載を申請中しているマーケットは、docomoマーケット、auマーケット、ソフトバンク@アプリです。このことは私共にとって大変重要な事であります。何故ならば、販売会社であるauショップ、docomoショップとの連携がスムーズに行われる第1歩でございます。このau・docomo・ソフトバンクマーケットに載っているアプリは、ショップの推奨アプリとなり、非常に販売しやすくなります。その結果、販売店さんにもインセンティブが支払われますので、単にマーケットに載っているだけではなく、販売店さんでもこのアプリは良いですよと言っていただけるように連携を強化していきます。これは私共としては初めての試みでございます。
■年末商戦の12月中旬にテレビCMを実施する
次に3つ目の戦略であるクロスメディア戦略についてご説明いたします。クロスメディア戦略の一つとしまして、年末商戦の12月中旬にテレビCMを実施いたします。前回は長野県でテストケースとして行った結果、非常に反響が良かったことを受けまして、初めて関東圏でテレビCMを実施します。内容はスマートフォンのフィルタリングに絞って行います。30秒のCMを1日当り一人の方が5回から6回見るように、1週間集中的に投下します。また、前回の反省点を活かし、より購買に繋がるようなプロモーションも併せて行います。
■ビジネス向けスマートフォン・フィルタリングの市場規模は約60億円から70億円
最後に、ビジネス向けのスマートフォン市場について説明します。ビジネス向けスマートフォン・フィルタリングの市場規模は約60億円から70億円と見ています。MM総研のレポートによりますと、2015年におけるスマートフォンの契約者数は約8,248万契約と予測されています。そのうちのビジネス比率は9.0%であることから、約742万契約といえます。その中で、フィルタリング利用率を約60%と見ると、約445万契約となり、「i−フィルター」のライセンス単価を掛けると約60億円から70億円となります。ビジネス向けは非常に確実な市場でありますので、ここにも本格的に参入していこうと考えています。
製品的には、年内にまず総合向けの企業向けの「i−FILTER」を発売する予定です。平成24年3月期には現在企業向けに販売しています「i−FILTER」に連動した形の製品をリリースする予定でございます。既に「i−FILTER」ユーザーが1万社ございますので、既存のエンドユーザー様向けにスマートフォン用「i−FILTER」を提供していこうと考えています」と今下期の施策の内容を紹介した。
■7月29日に通期業績予想を上方修正
引き続き今24年3月期通期業績予想の説明に入った。
今通期業績予想は、7月29日に上方修正している。売上高は26億32百万円(前期比14.1%増)、営業利益5億47百万円(同20.2%減)、経常利益5億28百万円(同23.1%減)、純利益2億95百万円(同24.1%減)と増収減益を見込んでいる。
市場別売上高は、企業向け12億89百万円(同6.9%増)、公共向け10億73百万円(同27.4%増)、家庭向け2億70百万円(同3.8%増)と予測している。
売上原価は、6億70百万円(同44.9%増)。その内訳は、労務費3億34百万円(同32.1%増)、減価償却費1億68百万円(同37.8%増)、他勘定振替・その他製造原価1億67百万円(同91.9%増)となっている。
販売費及び一般管理費は14億14百万円(同32.0%増)。その内訳は、人件費6億72百万円(同13.0%増)、宣伝広告費2億34百万円(2.38倍)、その他5億7百万円(同8.9%増)と売上原価、販管費共に大幅に伸びることから、通期業績予想は2ケタ増収でありながらも減益と見ている。
■ウイルスやスパムウェア等のマルウェア対策機能を「i−FILTER」に搭載
説明会の最後に10月31日から販売されているサイバーテロから守る「i−FILTER」Ver.8の質問について、「現在、三菱重工をはじめ、国家の重要な機密を持っている企業にサイバー攻撃が行われ、国家機密を搾取しようとする事件が多々発生し、外部からの攻撃による情報漏洩の出口対策に繋がる問題が出ています。この「i−FILTER」Ver.8は出口対策に有効な機能が搭載されています。サイバー攻撃に対して、現状、入口対策であるウイルスソフトでは十分に対応できず、情報漏洩をとめることは出来ません。今後は出口対策が重要ということになります。実は、ウイルスやスパムウェア等のマルウェア対策機能を今回初めて「i−FILTER」に搭載しました。これは、ウイルスがPCに入ってしまっても情報を持っていくルートを遮断する機能を持ったフィルタリングソフトです。今日の説明では一切触れませんでしたが、官民が一体となって、出口対策をどうするのだという心配が出ています。弊社のフィルタリングは出口対策に対応した国内初の製品ですので、下期、来期に向けて企業向けの売上を期待しています」と企業向けの出口対策に有効なフィルタリングがこれから伸びることに自信を示した。
スマートフォンの普及に伴い、同社の「i−フィルター」シリーズの市場が急拡大していくことは確実な上に、企業へのサイバーテロ対策として「i−FILTER」Ver.8が唯一の対抗ソフトであるため、同社の市場規模は急拡大する。今後株式市場で最も注目される銘柄となる。