2011年06月13日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

ラクーンは前11年4月期連結業績の決算説明会を兜町平和ビルで開催


■新規事業を今期より開始するが、売上高は今期業績予想には見込まず

ラクーンのHP アパレル、雑貨のBtoB電子商取引プラットフォーム「スーパーデリバリー」を運営するラクーン<3031>(東マ)は、6月3日に前11年4月期の決算と共に、今12年4月期の連結業績予想を発表したが、今期の最終利益予想が大幅減益を見込むことから、株価は急落となった。
 6月6日(月)の株価は、6月3日(金)の77,800円からストップ安の62,800円で引けた。その後も下げたが、10日の引け値は前日比500円高の59,500円で引けている。
 10日に前11年4月期連結業績の決算説明会が兜町平和ビルで開催された。
 決算説明会のポイントは、新規事業を今期より開始するが、売上高は今期の業績予想には見込んでいないことと、新規事業の開発にかかる人材、システム、広告等に対する総投資額は約80百万円を見込み、今期の損益影響額は約56百万円を見込んでいることである。
 今12年4月期連結業績予想は、震災の影響により不透明であるため、売上高8,300百万円(前期比3.0%増)〜8,600百万円(同6.7%増)、営業利益120百万円(同4.2%減)〜130百万円(同3.7%増)、経常利益110百万円(同5.8%減)〜120百万円(同2.7%増)、純利益77百万円(同52.1%減)〜84百万円(同47.7%減)と売上高で3億円、営業利益・経常利益で10百万円、純利益で7百万円の差異がある。
 もし、今期に新規事業への投資をしなかったとしたら、約56百万円が営業利益に組み込まれることになり、営業利益は176百万円(40.8%増)〜186百万円(同60.3%増)と大幅増益となっていたことが予想される。

■成長重視の戦略は計画通りに推移し、消費不況時代でも順調に売上を伸ばす

 過去を振り返ると、スーパーデリバリーの会員を早期に囲い込むために料金体系の変更を発表した中期経営戦略、質の向上のために「スーパーデリバリー」への出展基準の厳格化、売掛債権保証事業に進出するためにトラスト&グロースの子会社化など目先の利益を追求せずに、今後の成長のために思い切った選択をした例がある。今回の場合も新規事業への投資が、今後の成長にとって大きな役割を果たすということでの判断である。
 06年の中期経営戦略により料金体系を変更したことで、07年4月期、08年4月期と2期連続で赤字決算となったが、3年目の09年4月期は計画通りに会員の早期囲い込みに成功し、黒字転換を達成し、その後は現在まで、順調に事業規模を拡大している。
 また、10年6月より開始した「スーパーデリバリー」への出展基準の厳格化は、前期の四半期毎の客単価の推移を見ると、第1四半期218,187円、第2四半期234,351円、第3四半期250,391円、第4四半期256,562円と客単価の上昇を実現し、一定の成果を出している。
 トラスト&グロースの子会社化については、前期は4カ月間の稼働であったが、売上高87百万円、セグメント利益23百万円と初年度より売上拡大に貢献している。また、「スーパーデリバリー」の出展企業と会員小売店の売掛債権保証を行うことで、相乗効果をもたらしている。
 今後の成長を重視した戦略はほぼ計画通りに推移している。売上高の過去3年間を振り返ると09年7,018百万円、10年7,642百万円、11年8,057百万円と消費不況といわれる時代にありながらも順調に伸びている。

■利便性・専門性・先進性を追求した今までにない企業間取引のインフラを創造

 今回の新規事業について、代表取締役社長小方功氏は、「現時点で明確に紹介することは出来ません」と語っているが、中小企業間の取引をよりスムーズなものにするための企業間の資金決済に特化したサービスを予定している。「遠くの関係の薄い人にも売っていく必要があります。人力でやっていたものを如何にECでやっていけるか、これが出来たら、更にビジネスは拡大します」(小方功社長)とネットを使い決済ビジネス領域を広げることを明らかにした。
 今期は、大震災の影響があり、今後の1年間の需要変動の予測が難しいとしている。しかし、3.0%以上の増収を見込んでいる。
 そのためのグループビジョンとして、「利便性・専門性・先進性を追求した今までにない企業間取引のインフラを創造する」ことを挙げている。
 具体的には、情報・ECサービスの「スーパーデリバリー」、決済サービスのトラスト&グロースが相乗効果を持って拡大していくことで、企業間取引に欠かせない存在となることを目標としている。
 今期の事業方針は、EC事業では、質の向上に引き続き取り組みながら、審査基準引き上げ後の「会員小売店」及び「出展企業」の数を増やすことにも注力するとしている。
 売掛債権保証事業については、営業力の強化、与信ノウハウの継続的な蓄積、リスク移転手法の確立の3項目を挙げている。
 株価は、今期の最終利益が大幅減益を見込むことから5万円台まで下げたが、今後の事業拡大のための積極的投資が要因であり、今後も成長が期待できることが明確となったため、株価の下げも一時的なものと思われる。PBR0.47倍と割安である。

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