2011年05月16日
アルコニックスは中期経営計画の最終年度の目標数値を初年度でほぼ達成
■高利益率のレアメタル、レアアースの取り扱いが増え、大幅増益となる
非鉄金属の専門商社アルコニックス<3036>(東1)は、13日に前11年3月期連結業績を発表し、同日本社にて決算説明会を開催した。
決算のハイライトは、中国を中心とするアジア諸国の高い経済成長にけん引されたことにより、国内の自動車、家電、IT産業向け需要は輸出を中心に増加。期後半以降は政府の景気対策効果の一巡や急激な円高の進行、個人消費の低迷により回復ペースは鈍化した。更に3月11日に東日本大震災が発生したことにより、景気動向は不透明となった。
同社グループの売上高は、自動車向けの非鉄素材、半導体並びに空調機器向け伸銅品、アルミダイカスト向けアルミ合金塊、及び電池材料の取り扱いが伸長。特に中国の輸出枠制限を背景に価格が高騰したレアアースの取り扱いにおいては、供給ソースの確保に注力した結果、この分野の取り扱いが大きな伸びを示した。また、連結子会社化した国内の大川電機製作所、林金属の収益が連結業績に大きく貢献した。
トピックスを挙げると、10年12月24日付で東京証券取引所市場第二部市場から第一部指定銘柄に変更されたこと。また、12月22日にから1月5日を払込期日とする公募増資を実施。更に、8月1日付で1対2の株式分割を実施。10年5月1日には三高金属産業から事業譲渡を受け、アルコニックス・三高に継承したことで、主力とする電子材料向け伸銅品の取り扱いが好調に推移した。
その結果、前11年3月期連結業績は、売上高1579億7900万円(10年3月期比44.7%増)、営業利益30億7700万円(同2.0倍)、経常利益29億6300万円(同2.11倍)、純利益19億100万円(同5.7%増)と大幅増収増益となった。最終利益の伸びが縮小しているが、前年は負ののれん代が特別利益として計上されている。前年の数字を上回っていることから実質大幅増益といえる。
大幅増収要因は、主要取扱品である自動車向け非鉄素材、半導体向け並びに空調機器向け伸銅品、アルミダイカスト向けアルミ合金塊、電池材料、及びレアアースをはじめとしたレアメタルの取り扱いが増加したことによる。
大幅増益は、レアメタル、レアアースなど利益率の高い取り扱いが増加したことに加え、先述した国内子会社大川電機製作所、林金属の収益が貢献したことによる。
尚、前期業績が大幅な伸びを示したことにより、中期経営計画の最終年度の目標数値を初年度でほぼ達成した。
■電子・機能材は利益面で主力の軽金属・銅製品を超える
事業別のセグメント情報について見ると、軽金属・銅製品は自動車、家電、半導体分野を中心とした需要が堅調に推移したことにより、自動車向け素材、電子材料並びに空調機器向け伸銅品などの取り扱いが増加。また、子会社の業績も好調に推移したことから、売上高649億8900万円(同41.8%増)、セグメント利益13億9500万円(同2.19倍)と大幅増収増益を達成した。
電子・機能材は、需要増及び素材の市況状況に支えられ、化合物半導体、電池材料関係の取り扱いは堅調に推移した。一方、中国向け電力プロジェクト用チタン、ニッケル製品輸出は順調であるものの欧州向け化学プラント、造船等は需要家サイドの在庫調整が影響した。
特にレアメタルについては、レアアースを始め、タングステン、モリブデン等の取り扱いが増加。特に中国の輸出枠削減を背景に、価格の高騰したレアアースの供給ソース確保に注力した結果、レアアースの取り扱いが大幅に伸びた。その結果、売上高584億9800万円(同54.1%増)、セグメント利益14億3900万円(同2.31倍)と利益面で主力の軽金属・銅製品を超える結果となった。
非鉄原料については、需要が回復している自動車、鉄鋼業界の生産が期を通じて増加したことにより、自動車部品材料向けアルミ合金塊、化学品並びにアルミ添加用の金属珪素、鉄鋼用脱酸材料、及び軽金属圧延向けマグネシウム地金の取り扱いが拡大した。またこれに加え、中国向けの銅屑輸出も増加した。その結果、売上高265億900万円(同44.1%増)、セグメント利益2億8600万円(同37.4%増)と大幅増収増益。
建設・産業資材は、国内の建設業界における需要は回復基調に転じたが、依然として民間設備投資や公共投資関連の取り扱いは低迷し建材、LPガス用バルク貯槽等は減収である。一方、アジア向けの銅合金素材は外需の強さを反映して増収であった。利益面では期末に在庫の評価損を計上したことにより営業損失が増加した。その結果、売上高は79億8100万円(同13.5%増)となったもののセグメント利益は△1億4400万円と赤字幅を拡大した。
キャッシュ・フローについては、取り扱いが増加したことに伴い営業債権及び棚卸資産の増加が仕入債務の増加及び税引前四半期純利益の増加を上回るため、営業キャッシュ・フローは△109億2700万円となった。投資キャッシュ・フローは、関連会社からの事業譲受、投資有価証券取得により△8億4000万円となった。財務キャッシュ・フローは、公募増資による収入、短期借入金の借り増しにより146億9100万円となった。その結果、現金、現金同等物の期末残高は81億9700万円(同28億1100万円増)と大幅に増えた。
■今12年3月期連結業績予想は増収増益で、引き続き好業績が見込まれる
今12年3月期連結業績予想は、売上高1900億円(前期比20.3%増)、営業利益38億円(同23.5%増)、経常利益33億円(同11.3%増)、純利益19億5000万円(同2.5%増)と増収増益で、今期も引き続き好業績が見込まれる。
同社では、大震災の影響は軽微としている。また、自動車産業向け及び一部の輸出向けの落ち込みを見込んでいるが部分的と判断している。今期も引き続きレアメタル、レアアースを中心に電子・機能材料事業では大幅増収増益を見込んでいる。更に、赤字幅を拡大している建設資材については、復興需要で建設資材の需要が回復すると見ている。
事業の種類別セグメントにおける売上高、セグメント利益予想は、軽金属・銅製品730億円(前期比12.3%増)、12億4000万円(同11.1%減)、電子・機能材780億円(同33.3%増)、19億円(同32.0%増)、非鉄原料300億円(同13.2%増)、1億3000万円(同54.6%減)、建設・産業資材90億円(同12.8%増)、3000万円(前期△1億4400万円)を見込んでいる。
■中期経営計画の新たな目標数値として、14年3月期売上高2330億円、経常利益40億円を掲げる
中期経営計画の新たな目標数値として、12年3月期売上高1950億円、経常利益33億円、13年3月期売上高2150億円、経常利益37億円、14年3月期売上高2330億円、経常利益40億円を掲げている。
目標数値を達成するためのアクションプランは、営業収益力の強化のために、電子材料分野を強化し、経営資源を集中する。また、環境対応関連分野にも注力する。更に、海外事業分野も強化する。そのための具体的な方法として、地場取引の拡大、三国間ビジネスの拡大、海外拠点の拡大展開と3つの拡大策を掲げている。また、短期間での業容拡大に有効なM&Aにも積極的に行う。2001年のMBO実施以来7件のM&Aを行っているが、予想以上の成果を挙げている。また、投資事業も積極的に行っていくことで、新しい取引先を確保していく方針。投資を検討する分野は、金属加工分野、資源確保分野、M&A分野の3つを挙げている
更に、財務体質の強化、人的資源の強化、インフラ整備によりアルコニックスグループ全体の経営基盤を強化していく。
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