2012年04月03日
決算発表情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

稲葉製作所:東京証券会館で今期12年7月期第2四半期決算説明会を開催


■代表取締役社長稲葉明氏 会社概要、経営環境、第2四半期の概況、通期見通しについて語る

稲葉製作所 鋼製物置の稲葉製作所<3421>(東1)は3月27日、東京証券会館で今期12年7月期第2四半期決算説明会を開催した。
 代表取締役社長稲葉明氏は、会社概要、経営環境、第2四半期の概況、通期見通しの順に説明を行った。
 「1940年に金属プレス加工会社として創業し、1950年に会社を設立いたしました。1961年から開始した鋼製事務机のOEM生産がオフィス家具の生産の走りでございます。その後1975年に鋼製物置イナバ物置の生産を開始しました。現在はCMの浸透により物置が有名でございますが、オフィス家具の生産が最初でございます。製造工場につきましては、愛知県の犬山工場、千葉県の柏工場の2工場でございます。営業所は全国の主要都市に9営業所を開設しております。また、配送センターは昨年の9月、石川県金沢市に北陸配送センターを開設したことにより、北海道から鹿児島まで全国20カ所の体制となりました。ショールームは、東京と大阪に2カ所開設しております。関係会社は子会社2社でございます」と会社の概要について説明した。

■平成23年の新設住宅着工戸数は83万戸と前期比2.6%増

 事業環境については、「物置業界に影響を与える新設住宅着工戸数は、平成20年度までは毎年100万戸以上ございましたが、平成21年度は100万戸を割り、77万戸となって以来低調に推移しています。それに伴い、物置を購入する戸建て着工戸数も同様に減少いたしました。直近の平成23年の1月から12月までの新設の住宅着工戸数は、83万戸と前期比2.6%の増加でございました。これは各種住宅取得支援策の押し上げ効果と思われます。尚、住宅取得支援策のフラット35ですが、フラット35Sエコへと引き継がれました。また、住宅エコポイントも内容を変更して継続していますが、従来の制度と比較すると規模が縮小されているうえに、雇用等、住宅取得環境を取り巻く環境は良いとは言えません。また、復興需要につきましては、瓦礫の撤去や、住宅用地の確保等がボトルネックとなり、本格化まではしばらく時間がかかる見通しであります。住宅着工戸数は当面横ばい程度に留まると見込まれています」とのことであり、まだよい環境とはいえない状況である。

■オフィス家具に関しては新規供給は限定的で、販売競争は激化

 オフィス家具業界に関しては、「2011年のオフィス家具業界の販売金額は2,195億円となり、前年比0.7%の増加でございます。2007年のピーク時からリーマン・ショックの世界同時不況の発生により約3割程度減少した規模で推移しています。また、オフィスビルの空室率は、オフィスビルが集中する東京23区では2010年12月時点で7.4%、2011年12月時点で7.3%とほぼ横ばいの状態でございました。また、地方主要都市では、2010年に比べ2011年の空室率は改善傾向がみられております。今後、東京23区におきましては、オフィスビルの供給が大幅に増加する見込みであります。東日本大震災の影響により、企業はBCP(企業継続計画)の重要性が高まり、耐震機能が優れた新築ビルへ移転する動きが広がる可能性があります。しかし、オフィス家具に関しては新規供給は限定的であるため、オフィス家具販売の競争は、一段と激化するものと予想されます」と述べた。
 鋼板の市況価格に関しては、「2008年のはじめに高騰に転じました、しかし2009年には世界同時不況の影響から、急速に戻し、その後は高止まりの状況でございました。直近では円高の影響や、国内の鉄鋼需要の減少及び景気後退の原因による世界的な鉄鋼需要の減少により、鉄鉱石や石炭の価格が下落したため材料価格は値下げの様相を呈しています」と鋼板の価格が足元低下気味であるとした。

■物置部門の売上高は21.4%増と大幅増収、オフィス家具部門の売上高は、前年比15.7%減

 引き続き第2四半期の業績について次のように語った。「物置部門では昨年の10月にパブリックスペース商品として、ゴミ保管庫のダストボックス、自転車置き場のBPタイプを発売し、拡販に努めてまいりました。また、震災後の防災意識の高まりから自治体等で一般物置を倉庫として活用することを見込み、積極的にアピールすることに努めました。この結果、第2四半期の出荷棟数、販売金額共に昨年比120%となりました。以上のことから物置部門の第2四半期累計期間は自転車置き場の新製品効果や震災による防災のための備蓄倉庫などにより単体の売上高は15億3000万円増加する87億3000万円でございました。前年度比では21.4%増の大幅増収となりました。しかし、オフィス家具部門においては、東京23区内で大規模オフィスの大量供給や、空室率の低下等が見られましたが、需要は限定的であるため、大変厳しい市場環境が続いております。そのためオフィス家具部門の売上高は、前年比15.7%減の27億2000万円となりました。売上高は、物置部門では大幅に増加したものの、オフィス家具部門では減少しました。その結果、全体では前年度比9.9%増加の114億円でございました。収益関係は、売上原価の改善により、前期の損失からプラスとなりました。しかし、中間純損益は、オフィス家具部門の減損や、投資有価証券評価損等によりマイナスとなりました」と第2四半期業績を振り返った。

■第2四半期連結業積は当初予想を上回り、通期業績予想を上方修正

 第2四半期連結業積は、売上高131億9百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益△84百万円(前年同期△2億65百万円)、経常利益17百万円(同△1億57百万円)、純利益△2億2百万円(同△2億26百万円)となっている。
 物置部門の売上高は、88億25百万円(前年同期比21.3%増)と計画を上回り、好調であった。内訳は、通常物置84億41百万円(同21.2%増)、高級物置3億84百万円(同21.5%増)。
 オフィス部門の売上高は、42億83百万円(同7.8%減)と減少しているが、当初予想と比較すると上振れている。内訳は、事務用机25億26百万円(同6.5%減)、事務用椅子6億37百万円(同13.0%減)、その他11億20百万円(同7.4%減)であった。
 第2四半期連結業積は、物置部門、オフィス部門共に当初予想を上回ったことから、3月5日に通期連結業績予想の上方修正を発表している。
 売上高は、前回予想を8億円上回る278億円(前期比5.2%増)、営業利益は4億円上回る7億円(同45.5%増)、経常利益は4億10百万円上回る9億円(同26.6%増)、純利益は2億60百万円上回る3億70百万円(同105.6%増)と増収大幅増益を見込むとしている。

■今年の夏にイナバ倉庫を発売予定、農業用倉庫、資材倉庫、作業場、店舗として活用

 大幅増益が見込まれる今通期の見通しについては、「東日本大震災により防災意識が全国で高まっています。その様な状況の中で、政府は巨大地震など大規模な震災に備え、主要ターミナル周辺の防災強化対策として、防災備蓄倉庫を確保するために、都市再生特別措置法の一部を改正する法律を今国会に提出することになっています。当社は既に自治体などに物置を防災倉庫として使っていただいている実例がございますので、一層拡販に注力してまいります。また、企業向け安全靴や作業服などを販売しております大手企業の防災カタログに当社物置を掲載していただいております。災害発生時には、防災倉庫としても役割を果たすことで、従来に増して社会に貢献してまいりたいと思っています。次に新製品でございますが、今年の夏にイナバ倉庫を発売する予定でございます。この製販は当社の大型製品ガレーディアより更に大きな製品で、農業用倉庫、資材倉庫、作業場、店舗としても活用できます。実は、3年前、私が福岡営業所に行きました時に、『社長うちのガレージは、納屋に使えますね』といわれましたが、それから地方に行くたびに納屋を見るのですが、一度も当社のガレージが納屋として使われているのを見たことがありません。おかしいなと思って、農家の方に尋ねたところ、『稲葉さんのは高さがないので使えません』ということでした。農家の場合、耕運機とか精米機とか、トラックに荷を積んだまま入れたりしますので、開口の高さが低くて使えないということになります。今回開発したのは一番大きなタイプで開口は3,045mmあります。それだけシャッターが開きますので、ほとんどの耕運機は入りますので、かなり使い勝手がよいといえます。この倉庫は今までと違って柱構造となっていますので、更に大きなものが出来ます。一ついえるのは、柱構造にしたことで、簡単にカーポートが出来ます。それと天井が高いので、事務所としても使えます。また、倉庫と事務所を兼用したい場合にも使えます。そういったことで、かなり面白い新製品といえます。この3連棟タイプの価格は170万円程です。7月に販売する予定です。被災地ですぐに仕事を始めたい方達にとっては、使い勝手がよい商品といえます。また、この倉庫をアピールするために、4月の13日、14日に東京のビッグサイトで開催されますエクステリア エキスビションに出展いたします。今後全国で開催される展示会にも是非出展して啓蒙活動をしたいと思っています。そのほかに物置のレンタル事業としまして、平成16年より首都圏を中心に収納スペースを解消するために、生活者に使いやすく、高品質な収納サービスを提供することで新しい収納文化の創出を行っています。現在は約100店舗を開設済みであります。今後一層市場開拓を行い、新しいトレンドの定着を図ってまいります。また、首都圏では、新築のオフィスビル供給が続いていることに加え、リーマン・ショックの影響によりオフィスビルの空きスペースが増えてきていることから、レンタル収納事業者向けにトランクルーム用のパーテーションを開発し、連棟型とトランクルームをあわせビルのオーナー等へトランクルームの市場開拓を行ってまいります」と新型の倉庫の販売と、収納にターゲットを当てたトランクルームの販売について語った。

■BCPキャビネット、防災倉庫の売上が伸びる

 「オフィス家具部門では、各主要都市では空室率も低下傾向であり、老朽化した自社ビルから賃貸ビルへの移転、実地改善や機能改善を伴う集約・統合移転を行いやすい環境にあります。また、震災の影響で、企業の従業員の安全や防災、或いは事業継続による拠点戦略の見直しの機運が高まってきています。このような状況で、東京23区では2011年から12年に掛けて、最新オフィスビルが大量供給され、移転需要が創出されています。当社は、企業内における防災政策として、ヘルメット、非常食等を備蓄でき、中のものの転倒・落下を防止するストッパーを装備装備したBCPキャビネット等を提案し、販売を行なっております。3月から4月に掛けての需要期は移転需要を取り込み、当社のオフィス家具製品を強力に販売してまいりたいと考えています」と通期の計画について語った。
 今期通期の売上予想は先述の通りで、物置178億円(前期比9.7%増)、オフィス家具100億円(同3.5%減)の売上高を見込んでいる。
 物置の売上高の内訳は、通常物置170億円(同9.5%増)、高級物置8億円(同14.9%増)。オフィス家具の内訳は、事務用机59億円(同1.5%減)、事務用椅子14億円(同7.7%減)、その他27億円(同5.8%減)となっている。
 同社が営業に力を入れているBCPキャビネット、防災倉庫の売上が、震災後1年経った現在売上が伸びてきている。余震が継続し、再度大震災のリスクもあり、今後も需要が高まるものと予想される。