2011年11月02日
さくらインターネット:10月25日に第2四半期決算説明会を開催
■代表取締役社長田中邦裕氏 事業内容を説明
さくらインターネット<3778>(東マ)は、10月25日に兜町平和ビルで今12年3月期第2四半期決算説明会を開催した。
代表取締役社長田中邦裕氏は、同社の事業概要、第2四半期の業績概要、今後の展望の順で説明を行った。
「当社は2005年10月に東証マザーズへ上場しました。創業は1996年、会社を設立したのは1999年です。データセンター事業者として、お客様のサーバを預かる、もしくはお客様に当社のサーバをお貸しすることによって、収益を上げています。データセンターには、大容量電源や発電機、特殊ガスによる消火設備や耐震設備などが備えられています。このような充実した施設で、お客様の大切な情報資産をお預かりすることによって、ユーザに安全で快適なインターネットを提供しています。」
「データセンター事業者が提供するサービスは、コロケーションとホスティングの2つに分かれます。コロケーションは、お客様のサーバをデータセンター内でお預かりするサービスです。お預かりするサーバのスペースに応じ、オープンスペース単位、個室単位、ラック単位と3つのサービスに分かれます。なお、当社ではラック単位(ハウジングサービス)のコロケーションを提供しています。ホスティングは、インターネット上でデータセンター事業者のサーバを利用するサービスです。1台の物理サーバを複数のお客様で共同利用するサービスと、1台の物理サーバを専用で利用するサービスがあります。また最近では、仮想化というインターネット技術を活用し、1台のサーバを複数台の仮想サーバに分割して、安価な専用サーバとして利用するサービスや、複数台のサーバを1台のハイスペックサーバと仮想して利用するサービスも生まれています。当社はここで挙げた全てのホスティングサービスをカバーしています」と同社の事業領域についての説明があった。
■レンタルサーバとVPSは順調に売上高を伸ばす
続いて、第2四半期の業績概要について説明があった。
第2四半期累計期間の売上高は4,542百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益567百万円(同13.3%減)、経常利益539百万円(同16.5%減)、純利益365百万円(同22.4%増)であった。当初予想と比較すると、売上高は1.2%減、営業利益は9.2%増、経常利益は7.8%増、純利益は30.6%増であった。最終利益が予想よりも大幅増となったのは、新株予約権戻入益が特別利益として計上されたためである。
第2四半期会計期間のサービス別売上高は、ハウジング744百万円(前四半期比1.7%減)、専用サーバ817百万円(前四半期比0.5%減)、レンタルサーバ420百万円(前四半期比4.0%増)、VPS74百万円(前四半期比9.7%増)、その他213百万円(前四半期比3.4%減)となった。順調に売上高を伸ばしているのは、レンタルサーバとVPS。専用サーバは、初期費用の不要なVPSや他社クラウドとの競合が厳しくなり、売上高が減少している。レンタルサーバは、『さくらのマネージドサーバ』上位プランの好調な受注が売上高の増加に寄与している。
第2四半期会計期間末時点の流動資産は3,647百万円(前期末比1,066百万円減)。石狩データセンターへの設備投資に係る債務の支払いによる現預金の減少が主な要因。固定資産は、石狩データセンターの建設仮勘定や堂島データセンターの拡張フロアに設置した機材の増加などにより、6,494百万円(同1,399百万円増)。総資産は10,142百万円(同332百万円増)、純資産は利益の積み立てにより2,547百万円(同263百万円増)となった。自己資本比率は25.1%と前期末から2.4ポイント改善した。
第2四半期会計期間の営業キャッシュ・フローは505百万円。投資キャッシュ・フローは△340百万円、財務キャッシュ・フローは△125百万円となった。なお、第2四半期会計期間末の現金等の残高は2,323百万円であった。
■石狩データセンター 『CEDEC AWRDS』ネットワーク部門優秀賞を受賞
事業指標として、ホスティング利用件数と月額料金別の売上構成比も紹介された。ホスティングの利用件数は順調に伸びており、今年6月には30万件を上回った。専用サーバの利用件数はほぼ横ばいであるが、レンタルサーバ、VPSが順調に伸びている。
今年9月度の月額料金別売上構成比は、月々10万円未満の顧客が40.2%、10万円以上100万円未満が22.0%(635社)、100万円以上1000万円未満が25.0%(71社)、1000万円以上が12.7%(同6社)であった。月々10万円未満の顧客が利用しているサービスは、レンタルサーバが多く、月々10万円以上100万円未満の顧客は専用サーバ、100万円以上になるとハウジングの利用が多い。
「他社のデータセンターサービスを利用しているIT企業にお勤めの方でも、プライベートでは当社サービスを利用しているエンジニアが多いことから、IT業界内での当社認知度は高いと考えております。」とは、田中社長の談。
第2四半期の主なトピックとして、ITインフラ分野では、石狩データセンターの優れたエネルギー効率が評価されて『CEDEC AWRDS』ネットワーク部門優秀賞を受賞したこと、さくらのVPSの好調な受注により堂島データセンターのサーバラックを増設したことが紹介された。サービス分野では、従来のサービスから約3割増しの性能を持つさくらのマネージドサーバ Core i5プランや、さくらのクラウドβサービス(11月より提供開始)の提供、さくらのレンタルサーバのデータベース機能強化が紹介された。また、同社の株式が『東証マザーズCore指数』の構成銘柄に選定された事の報告もあった。
■震災後、都市型から郊外・地方型データセンターへの移転を検討する層が増える
最後に今後の展望について説明があった。
「売上高のボリュームが一番大きいサービスはハウジングです。しかしハウジングは、サーバなどの通信機器類をお客様自身で準備しなければならず、運用負担も重いことから、最近ではホスティングにスイッチするお客様が増えています。ハウジングのサービス単価は大きいことから、市場に占める売上高は依然として大きいものの、成長率はホスティングと比べて低く、1ケタ成長が続いています。一方、専用ホスティング、共有ホスティングの成長率は2ケタ成長が続いています。」
「需要動向に目を向けると、『ITコストを抑えたい』、『IT資産をオフバランスにしたい』、『BCP(事業継続計画)・DR(災害)対策もしたい』といったニーズを背景に、『初期費用負担の少ないサービス』、『ホスティング』、『災害時に対応できる郊外型のデータセンター』に需要が集まっています。」
「供給動向では、Amazon Web ServiceやSales Forceといった外国企業や、ソフトウェア開発業者やサーバなどのハードウェアメーカーといった異業種からクラウド市場に新規参入する事業者が増えており、価格競争が激しくなっております。」
「震災前と震災後の市場動向を比較すると、データセンターへのアウトソーシング需要が高まり、さらには都市型から郊外・地方型データセンターへの移転を検討する層が増えていることが分かります。これまで東京や神奈川といった首都圏を選択する利用者層が多かったものの、震災後は大阪、愛知、その他の地方を選択する利用者層が増えています。また、カントリーリスクを考慮し、海外に置いていたサーバを、国内に移す動きも増えています。」と、同社の取り巻く環境についての説明があった。
■双日グループとのコラボレーションにより、官公庁や一般企業に営業活動を展開
「このような状況の中、当社は次の4つの施策に取り組みます。まず1点目は、『石狩データセンターの稼働』です。同データセンターは今月3月に着工し、11月中旬から運用を開始します。」
「2点目は、『エンタープライズ市場の開拓』です。IT企業に対しては、当社の認知度は高いのですが、一般企業の経営層にはほとんど認知されていません。そこで、一般企業への知名度が高い双日グループとのコラボレーションにより、官公庁や従業員1,000名以上の一般企業に営業活動を展開いたします。」
「3点目は『クラウドサービスの提供』です。専用サーバは初期費用が高いため、初期費用の低い仮想化サーバが登場すると、スタートアップ企業から敬遠されるようになりました。そこで、初期費用ゼロで、オンデマンドにサーバの追加や解約ができる柔軟性と拡張性に優れたクラウドサービスの提供を11月から行います。」
「4点目は『新世代専用サーバサービスの提供』です。確かに、クラウドサービスの成長は目を見張るものがありますが、ネット企業を中心として専用サーバの需要も引き続き高い水準を維持しています。その理由はいくつかありますが、1つはクラウドサービスがブラックボックスになっていることが考えられます。クラウドサービスはトラブルが発生しても、復旧がいつになるか分かりません。また、いきなり性能が落ちてしまうこともあります。それに対して専用サーバの場合、物理的に1台のサーバを専用で提供しているため、何か問題が発生しても、直接お客様が原因を調べることができます。そのため、クラウドサービスと比べて設定のチューンナップがしやすく、安全性の確保もしやすいといえます。そこで、従来の専用サーバより初期費用を抑え、クラウドサービスよりもコストパフォーマンスに優れたサービスとしてリニューアルいたします。」と今後の計画を説明した。
■石狩データセンターの稼働は11月中旬を予定
石狩データセンターの稼働は11月中旬を予定。建設地の石狩市は、災害リスクが低く、データセンターの立地条件としては絶好の立地。震災後に高まっているBCP・DR需要にも十分対応できる。今後30年間で震度6弱以上の地震が発生する確率は0.1〜0.3%。津波リスクや液状化リスクも非常に低い。
供給電力は1ラック当たり8kVAと、一般的なデータセンターの倍以上にサーバをラックに集積することができる。また、外気冷房の活用により、空調消費電力を大幅に削減でき、高電圧直流システムを導入すれば最大約20%の電力量削減も見込めるとのこと。
エンタープライズ市場の開拓については、双日グループとの共同営業体制を確立し、大手総合商社のブランド力を活用して顧客開拓を進めていく方針。主なターゲットは、官公庁と一般企業としている。
今12年3月期通期業績予想は、売上高9,400百万円(前期比9.5%増)、営業利益740百万円(同39.6%減)、経常利益700百万円(同41.4%減)、純利益400百万円(同30.2%減)と増収ながら、石狩データセンターへの投資により減益となる予定。
積極投資で、世界標準の価格競争力を持つデータセンターを開設することにより、来期以降の事業拡大が予想される。
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