2012年02月07日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

さくらインターネット:第3四半期決算説明会を開催


■05年10月の東証マザーズ上場以来ほぼ増収増益で順風満帆

さくらインターネットホームページ データセンター事業を展開するさくらインターネット<3778>(東マ)は1月27日、兜町平和ビルで今期12年3月期第3四半期決算説明会を開催した。
 同社代表取締役社長の田中邦裕氏は、会社概要、業績概要、将来戦略の順で説明を行った。
 同社は99年8月に設立され、05年10月に東証マザーズに上場を果たしている。過去5年間の売上高、経常利益の推移をみると、07年3月期43億98百万円、△1億62百万円、08年3月期62億4百万円(前年比41.1%増)、85百万円、09年3月期71億6百万円(同14.5%増)、3億49百万円(同310.1%増)、10年3月期78億12百万円(同9.9%増)、7億23百万円(同107.2%増)、11年3月期85億84百万円(同9.9%増)、11億94百万円(同65.0%増)と順風満帆。
 同社は、コロケーションからホスティングまで、データセンター事業を幅広く展開している。コロケーションとは、サーバ等を設置する場所貸しに近いサービスである。ラック(棚)、個室(ケージ)、オープンスペースと、貸与されるスペースの広さでサービスが分けられている。同社が提供しているサービスは、ラック単位での貸し出しを主としている。
 ホスティングは、情報システムの稼動に必要な機材や回線などの基盤(インフラ)を、 インターネット上のサービスとして遠隔から利用できるようにしたサービスである。コロケーションと比べて初期投資負担が軽く、小額のプランから利用できる点がこのサービスの特徴である。

■Iaas型クラウドサービスとVPSサービスも提供

 仮想ホスティングには、Iaas型クラウドサービスとVPSサービスがある。IaaS型クラウドサービスとは、日割料金での精算が可能で、リソースの追加・削減が短時間で容易に行えるなど、柔軟性と拡張性に優れたサービスである。VPSサービスは、仮想化技術を活用することで、共用サーバながら専用サーバと同等の自由度を持たせた、低価格サービスである。
 物理ホスティングには、専用サーバサービスとレンタルサーバサービスがある。専用サーバサービスは、主に大容量のデータを必要とする法人向けのサービスで、レンタルサーバサービスは、主に個人や企業のホームページといったライトユーザ層をターゲットとしたサービスである。2010年度のサービス別売上高構成比率は、ハウジング35.2%、ホスティング54.6%、その他10.2%となっている。

■様々な顧客層の要求に応えられる、幅広いサービス・料金体系

 続いて、同社サービスの顧客像について説明があった。
さくらのレンタルサーバは、主に個人ユーザを対象としたもので、ホームページやブログ等の制作、運用で利用されている。独自ドメインでサイトを運用したい、自由にアフェリエイトを掲載したい、意図していない広告を排除したいというユーザ要望に対応している。
 さくらのVPSは、時間やコストをかけず、手軽にWebサービスやアプリケーションの開発や検証が出来る環境を求めているITエンジニアに最適である。
 専用サーバは、アクセス負荷の高いサイトであるため、サーバリソースを独自に確保したい、または、個人情報の管理ができるセキュアな環境を構築したいといった、ITコンテンツ企業のニーズを充足している。以上のように、同社のサービスは、様々な顧客層の要求に応えられる、幅広いサービス・料金体系となっている。
 また、同社がコストパフォーマンスに優れたサービスを提供できる要因として、国内有数規模のITインフラ基盤、サービスの自社開発・運用・サポート体制、国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリューといった同社の競争力源泉によるものとの説明があった。

■初期費用負担の軽いクラウドが流行

 今期第3四半期累計の業績は、売上高68億39百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益7億7百万円(同25.2%減)、経常利益6億59百万円(同28.6%減)、純利益4億27百万円(同7.0%減)と増収ながら減益となった。
 「初期費用負担の軽いクラウドが流行し、初期費用負担の重いサービスを選択する人が少なくなっています。そのため、売上高は増加しているものの、やや伸び悩みの状況となっています。営業利益については、石狩データセンターの新設により、経費が増え、減益となっています。しかしながら、コスト削減に努めた結果、当初計画より利益が若干増えております」(田中邦裕社長)。
 当第3四半期会計期間(10月から12月)の業績は、売上高22億96百万円(第2四半期比1.2%増)、売上総利益5億66百万円(同14.2%減)、営業利益1億40百万円(同45.6%減)、経常利益1億19百万円(同50.0%減)、純利益61百万円(同55.0%減)であった。

■第3四半期からエンタープライズ向けの需要が拡大

 「石狩データセンターは、既に1,000ラック程度のスペースを確保しており、現在は200ラックほど稼働できる状態となっております。その結果、昨年の11月から減価償却が始まっております。新規で常駐スタッフを数名採用したこともあって、第3四半期の利益は減少しています。」(田中邦裕社長)。
 当第3四半期会計期間(10月から12月)のサービス別売上高は、ハウジング7億56百万円(第2四半期比1.7%増)、専用サーバ8億1百万円(同2.0%減)、レンタルサーバ4億30百万円(同2.3%増)、VPS94百万円(同27.0%増)、その他2億14百万円(同0.2%増)となっている。
 「第3四半期からエンタープライズ向けの需要が拡大したこともあって、下降傾向にあったハウジングの売上が伸びてきました。しかしながら、初期費用負担の軽いレンタルサーバやVPSの売上が伸びる一方で、専用サーバは初期費用負担がネックとなり、減収となっています。なお、専用サーバについては当第4四半期中に、石狩データセンターを活用したリニューアルを予定しており、今後は復調するものと思っています。レンタルサーバ、VPSについては、個人様、法人様の旺盛な需要に支えられまして、順調に伸びているというのが現状でございます」(田中邦裕社長)。

■自己資本比率は23.1%と前期末より0.4ポイント上昇

 流動資産は、33億4百万円(前期比14億10百万円減)となっている。これは、石狩データセンターの建設工事代金の支払いによる。固定資産は、80億8百万円(同29億14百万円増)。石狩データセンターの新設や、堂島データセンターの設備増強によるもの。資産合計は、113億13百万円(同15億3百万円増)。
 負債の合計は、87億3百万円(同11億78百万円増)。内訳は、流動負債41億66百万円(同4億82百万円増)、固定負債45億36百万円(同6億95百万円増)。純資産は、26億9百万円(同3億25百万円増)となり、自己資本比率は23.1%と前期末より0.4ポイント上昇している。

■月額料金10万円未満の顧客は全体の40.7%で事業リスク低減

 事業指標として、ホスティングの利用件数の発表があった。10年3月時点では25万件であったが、その後順調に伸びて、11年6月には30万件を超え、その後も依然として伸びている。専用サーバは横ばいであるが、レンタルサーバ、VPSの需要は依然として旺盛で、利用件数の伸びを牽引している。
 月額料金別の全売上に占める割合は、1,000万円以上は6事業者あり12.8%、500万円から1,000万円未満は9事業者で8.9%、100万円から500万円未満は59事業者で15.6%、50万円から100万円未満は74事業者で7.0%、10万円から50万円未満は536事業者で15.0%、10万円未満は40.7%を占めている。この様に月額10万円未満の小口顧客の売上構成比が高いことから、大口顧客の解約による事業リスクが低減している。
 当第3四半期会計期間中の主なトピックとして、石狩データセンターの11月15日からの運用開始や、同社初のIaaS型クラウドサービスとして、「さくらのクラウド」を11月15日より提供したことなどが紹介された。

■今後は、データセンターの競争力強化とエンタープライズ市場の開拓

 今後の展望については、「データセンター市場の状況としましては、需要動向は、初期費用をかけたくない、資産を買いたくない、そのような動きが出てきています。所有から利用へ、利用するにしても初期費用の負担を如何に下げるかということに関心が集まっています。それに加えて、昨年の震災を機にやはり、BCP、DR対策として、都心ではなく郊外のデータセンターへの需要が高まっています。実際そのような状況の中で、当社は何をするべきなのかといいますと、まずはデータセンターの競争力強化でございます。当社は石狩データセンターを稼働させるまで、3年以上データセンターの新設を行っていませんでした。データセンター事業の場合は、新しい場所にデータセンターを作って、売上にドライブをかけていくことが非常に重要となりますが、そのような投資を行った場合、どうしても利益が圧迫されてしまいます。そのため、設備投資を行うタイミングは難しいといえます。しかし、今回郊外型ということで、初期投資を抑えながら新設できるプランを採用し、昨年に新設しました。以上の点から、東京、大阪と比べて安価な料金であっても、石狩の方がより安心できる。また、たくさんの電気が使えるという差別化が出来るようになりました。そういうバックグラウンドにおいて、データセンターの競争力を強化しています。それに加えて、エンタープライズ市場の開拓です。当社は小額プランを利用されている顧客が多い点に強みがあります。安定した収入構造でありますし、小額プランのため、定価販売により一定の利益を確保しています。また、ほとんどの場合がオンライン経由での受注であり、営業の手間がかからないといったメリットがございます。しかし、何事もバランスが重要で、スケールメリットを得るためには、エンタープライズ向けのハウジングにより、一度に多くのラックを販売することも大切です。小額プランのお客様と大口のお客様双方の売上を積み重ねることによって、よりコストパフォーマンスの高いサービスを提供することが可能となります。そういった意味では、当社は以前からハウジングとホスティングをバランスよくやっていたのですが、現状ではホスティング、それも小額プランのお客さまに偏重している状況です。エンタープライズ市場は、非常に営業活動が難しいセグメントですが、1件の受注で多額の売上が見込めることと、受注後には利用サービスのアップセルも望めるため、この分野にも注力していきたいと思います」(田中邦裕社長)とエンタープライズ市場の開拓を行うことを発表した。

■双日グループと連携してITトータルソリューションサービスを提供

 同社では、高まるDR市場を背景に、双日グループと連携して一般企業や官公庁に対してITトータルソリューションサービスを提供していく。具体的には、同社が各種データーサービスの提供を行い、日商エレクトロニクスなどの双日グループがIT機器の提供、IT機器の構築・保守・運用・監視を行うといった組み合わせである。
 更に、同社のデーターセンターサービスを一元的に管理・運営できるプラットフォーム基盤の構築も発表された。この基盤が実現されると、異なるサービス間を意識しない包括的な運用が可能となる。
 今3月期通期連結業績予想は、売上高91億50百万円(前期比6.6%増)、営業利益7億60百万円(同29.8%減)、経常利益7億10百万円(同31.3%減)、純利益4億50百万円(同12.6%減)と増収ながら減益を見込む。

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