2011年11月18日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

アールテック・ウエノ:第2四半期業績は減収ながら、営業・経常利益共に増益


■通期に対する進捗率は50%を割り込んでいるが、下期の売上が多いことから予定通りの進捗

アールテック・ウエノのHP 創薬ベンチャーのアールテック・ウエノ<4573>(JQS)は、11月15日に今12年3月期第2四半期の決算説明会を行った。
 第2四半期業績の概要については、ビジネスマネジメント部の中村氏より説明が行われた。
 最近の業績の推移として、売上高、利益の推移を見ると、売上高に関しては、08年3月期の63億30百万円をピークにして、09年3月期59億90百万円、10年3月期41億60百万円と2期連続で減収となっている。しかし、その後、11年3月期42億円と僅かであるが増収となり、今12年3月期も同じく僅かであるが42億30百万円と増収を見込んでいる。
 利益に関しても、08年3月期の経常利益27億10百万円をピークとして、09年3月期14億30百万円、10年3月期7億30百万円と2期連続で減益。売上と同じく、10年3月期を底に反発し、11年3月期は10億円、今12年3月期は11億50百万円と増益を見込んでいる。
 純利益については、11年3月期に経常利益を上回る12億40百万円となったが、これはドライアイの薬に関して、田辺三菱から和解金として10億円が支払われたため。
 今第2四半期の業績は、売上高18億72百万円(前年同期比3.8%減)、売上総利益12億63百万円(同1.1%減)、研究開発費3億17百万円(同22.9%減)、営業利益5億51百万円(同15.6%増)、経常利益5億47百万円(同15.8%増)、純利益3億52百万円(同△58.4%減)と減収ながら、営業・経常利益共に増益となった。純利益が大幅な減益となっているのは、先述しているように前期の和解金の影響。
 通期に対する進捗率は、売上高44.2%、営業利益48.1%、経常利益47.2%、純利益46.8%と50%を割り込んでいるが、上期より下期の売上が多いことから、通期計画に対して、予定通りの進捗といえる。
 下期の売上が大きい理由は、ヨーロッパエリアについて、兄弟会社であるスキャンポ社へのウノプロストンのライセンス収入が下期に入ることになっているため。

■自己資本比率は90.5%と財務体質は健全そのもの

 第2四半期の事業別の売上高は、医薬品の製造販売18億35百万円(同3.2%減)、医薬品の研究開発支援サービス37百万円(同27.5%減)。
 医薬品製造販売の内訳は、レスキュラ7億95百万円(同16.8%減)、Amitiza10億39百万円(同10.6%増)となっている。両医薬品の通期計画に対する進捗率はレスキュラ38.5%、Amitiza50.2%である。レスキュラの進捗率は低いが、計画通りである。理由は先述しているように、ヨーロッパエリアのライセンス収入が下半期に入るため下期の売上が伸びるため。
 財務内容については、第2四半期末で自己資本比率が90.5%あるように、健全そのものといえる。

■同業他社、医薬品大手3社と比較しても同社の株価は割安

 11月14日の同社の株価指標は、ROE(株主資本利益率)18.64%、予想PER(株価収益率)10.84倍、PBR(株価純資産倍率)1.13倍、D/Eレシオ(有利子負債比率)0.0、自己資本比率90.5%、配当利回り3.62%である。
 同業他社の平均の株価指標は、ROE6.03%、予想PER42.68倍、PBR2.01倍、D/Eレシオ0.04、自己資本比率86.6%、配当0円。
 医薬品大手3社の平均の株価指標は、ROE9.65%、予想PER16.66倍、PBR1.29倍、D/Eレシオ0.08、自己資本比率70.7%、配当利回り4.66%となっている。同社の株価が割安であることが歴然としている。

■創薬、レスキュラの製造・販売、医薬品の開発支援及び受託製造サービスの3分野に重点を置く

 引き続き、代表取締役社長真島行彦氏より、説明が行われた。
 「医薬品開発の場におきましては、量から質へ向かっていまして、アンメット・メディカル・ニーズへの対応ということで、未だ満足のゆく治療法がない医療領域で、専門医による治療が中心の疾患の開発にシフトしていますので、現場がわかる医師の目線が開発に非常に有力と考えています。アールテックでは3分野に重点を置いて事業展開しています。1番目は創薬です。2番目はレスキュラの製造・販売、3番目が医薬品の開発支援及び受託製造サービスです。レスキュラに関しましては、米国において開発・商業化権を米国のスキャンポ社にライセンスしておりますが、現在スキャンポ社が米国での上市に向けた準備を進めています。Amitizaに関しましては、現在米国で200億円売れているのですが、開発元であるスキャンポ社が、昨年、日本でも承認申請をしていますので、いずれ日本でも販売されます。弊社が受託製造を行いますので、その分受注が増えることは想定しています。

■フェーズ1、フェーズ2の段階で積極的にライセンスアウトして、共同開発を進めていく方針

 創薬事業ですが、主に3つの領域で開発を進めています。その中でも、本日はアンメット・メディカル・ニーズ領域である重症ドライアイ(RU−101)と、患者様の数が少ないオーファンドラック(希少疾病)領域である網膜色素変性(UF−021)について、市場性と開発の意義、社会的にどのような影響を与えるかについてご説明します。
 新薬の開発には、約10年かかるといわれていますが、アールテック・ウエノでは10年後に薬を上市するということで、2005年から創薬の研究を始めたので、現在中間というところです。現在フェーズ1、フェーズ2といくつかの新薬開発が進んでいます。我が社の方針としましては、フェーズ1、フェーズ2の段階で積極的にライセンスアウトして、共同開発を進めていく方針ですが、現在、男性型脱毛症、網膜色素変性についてはライセンスへ向け、話を進めているところです。

■現在重症ドライアイに対する治療法は無い

 重症ドライアイについてご説明いたします。ドライアイというと皆様ご存知ですが、軽いものだと目が乾くという症状ですが、これが重症のものですと失明に至ることもあります。現在重症ドライアイに対する治療法がありませんので、積極的に取組んでいるのがアルブミンでの開発です。この重症ドライアイの治療薬を研究するために、田辺三菱製薬から遺伝子組換え型人血清アルブミンの供給を受け、同原料を有効成分とするドライアイ治療用点眼液の開発を行い、フェーズ1の段階まできていましたが、田辺三菱製薬より原料供給が受けられなくなったためこの契約を解除し、開発を中断しておりました。そこで新たにアルブミンの供給先を探しておりましたところ、デンマークのNovozymes社から供給してもらうことになりました。これによって新たに臨床開発が進むことになりました。アルブミンの提供先が変わったことで、開発コードはRU−10からRU−101に変わっています。

■アールテックのアルブミン点眼液は、涙液の不安定、眼表面の障害、炎症に効果がある

 ドライアイという言葉は皆さん聞きなれている言葉ですが、涙液層や眼表面の障害を特徴とする慢性で多因性の状態です。眼を酷使するオフィスワーカーなどに現れる症状で、年々増加しています。国内でも2200万人もの患者がいると報告されています。しかし、良い薬がないというのが現状です。症状は、異物感、乾燥感、眼精疲労などありますが、これが深刻となり不定愁訴となり、痛みを伴うなどの症状が出て重症になることもあります。重症の患者の数としては多くはないのですが、重症ドライアイの薬は現状はありません」と重症ドライアイの治療薬がないことを紹介した。
 その様な現状の中で、同社が開発しているRU−101は、遺伝子組み換え人血清アルブミンを使った治療薬で、水分保持、ムチンの増粘増強、眼表面滞留、創傷治癒、抗酸化作用といった特性を持っている。そのため、アールテックが開発しているアルブミン点眼液は、涙液の不安定、眼表面の障害、炎症に効果があるという。

■ドライアイの市場規模は、グローバルで1500億円

 アルブミンは、生体にとって重要なたんぱく質で、安全性の高い物質である。しかも、献血アルブミン製剤による点眼液治療により、重症ドライアイ患者の症状が改善している。ところが、献血アルブミン製剤では、感染症の危険性が完全に除外できないという問題がある。そのため、同社では、感染症の心配がない酵母で人のアルブミンを生成した遺伝子組み換え人血清アルブミンを使用している。同社で開発しているRU−101は画期的な重症ドライアイ治療薬として期待されている。市場規模は、グローバルで1500億円の市場があり、年率10%で拡大しているという調査結果が出ている。
 この他に、網膜色素変性に対する新規点眼薬(0.15%ウノプロストン)、開発コードUF−021についても紹介された。
 この様に、アンメット・メディカル・ニーズの眼病に特化した研究開発を行うことで、画期的な新薬の開発に努めている。
 今通期業績予想は、売上高42億39百万円(前期比0.8%増)、営業利益11億46百万円(同14.7%増)、経常利益11億58百万円(同15.0%増)、純利益7億52百万円(同39.7%減)を見込む。

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