■サイト数が増加し、益々サイト間の競争が激化
モバイル向けのコンテンツ、ソリューションサービスを行っている日本エンタープライズ<4829>(東2)の今10年5月期連結業績予想は、売上高25億7800万円(前期比4.1%増)、営業利益3億2700万円(同11.8%増)、経常利益3億5000万円(同10.1%増)、純利益2億円(同13.9%増)と増収増益を見込む。配当に関しては期末150円(前期は130円)と20円の増配を予想している。
同社の事業に大きくかかわる携帯電話の契約状況は、10年3月には、全契約数のうちの53%をパケット定額制が占め、全体の97%を3G(第三世代携帯電話)契約者が占めると予想されている。
一方、モバイルコンテンツの市場動向とサイト数の推移を見てみると、例えば、着メロのサイト数は、約3000件でここ数年横ばいの中、同市場規模は、05年900億円から08年450億円と減少している。また、着うたは、市場規模が600億円で横ばいの中、サイト数は、06年2200件から08年3000件と増加している。つまり、市場の伸び率が鈍化する中、サイト数が増加し、益々サイト間の競争が激しくなってきている。
そのような環境の中で、同社ではサイトのサービス向上、コンテンツの差別化、独自の施策による集客を実現する事業戦略を進めている。
まず、サイトのサービス向上のためには、コンテンツの品質向上と機能強化の推進が必要。具体的には、アレンジ楽曲の総合配信や、自社アーティストの育成によるオリジナル楽曲の創出を行い、音楽のバリューを高めることである。
コンテンツの差別化を実現するには、キャラクターの世界観を確立し、様々な客層にアプローチすることで、知名度を向上する。同社の代表的なキャラクターの一つに「うたがめ」があるが、今後、動画サイトによるアニメーションやブログパーツなどを展開し、知名度向上を目論んでいる。
更に独自の施策による集客方法として、自社コンテンツを活用し、雑誌、広告、企業の新商品のパンフレット等に載せたQRコードでクーポンが取れるようにして、メールアドレスを集める方法などがある。今後様々な導線の確保を図る計画。
■モバイルソリューションは企業発展の重要な位置を占める
一方、ソリューション事業に関しては、各企業がモバイルウェブサイトに一番期待していることは、「売上に対する直接効果」、二番目は「宣伝・広報効果、ブランド認知」、三番目が「カスタマーリレーションシップの向上」となっているように、モバイルソリューションは企業発展の重要な位置を占めている。
そこで、同社の今期の戦略は、過去2年間のFeliCaビジネスのノウハウを生かした営業を展開してFeliCa事業を拡大する。また、エンターテインメント会社のキャラクターを中心としたエンタメ系サイトの企画・制作の受注にも注力する。一方で、安定的なストック型ビジネスとトヨタ関連、キャリア関連の業務支援ソリューションを拡大させる方針。
■中国の3Gコンテンツ配信のライセンスを取得している数少ない日系企業
海外事業については、長い間中国の3G開始が待たれていたが、今年1月7日にやっと中国国内の3キャリアに免許が発行され、3G時代が始まったが、端末対応の遅れにより、買い控えの状態である。本格的な普及は10年から11年ごろと見ている。
同社は、中国の3Gコンテンツ配信のライセンスを取得している数少ない日系企業であることから、今後の事業拡大が予想されるが、これまでは、キャリアとの良好な関係を築くために「電気通信コンテンツ協力シンポジウム」、「通信業務国際フォーラム」など中国の政府・キャリアと共催している。また、日本の3Gノウハウを中国に導入する際の課題を解決するために、6月に日中3G応用研究院が設立されたことで、参加企業に対していろいろな提案を行い、中国モバイルコンテンツビジネスに大いに貢献することでビジネスチャンスを拡大する方針。
もう一つの大きな海外市場であるインドは、携帯利用者数は03年の3400万人から09年には3億9200万人まで急増しており、この勢いが止まらず毎月1000万人のペースで増加している。
これまで同社はインドのキャリアにゲームを提供しているが、まだコンテンツに関する認知度は低い。しかし、引き合いのある音声のコンテンツを突破口とし、9月に現地法人を設立。インド市場での事業基盤を確立する計画。
今期のコンテンツの売上高は13億2700万円を計画している。選択と集中で、増収を目指す。一方のソリューションは、企業ニーズの高まりを背景に12億5100万円の売上を見込んでいる。国内、海外共に需要が大きいことから、今後の成長が期待される。