2010年07月28日
日本エンタープライズは前10年5月期の決算説明会を開催
■コンテンツサービスでは健康サイト、占いサイト、えもじサイトへ参入
モバイルのコンテンツ、ソリューション事業を展開する日本エンタープライズ<4829>(東2)は、7月12日に東証アローズで前10年5月期の決算説明会を開催した。
前10年5月期連結業績は、9日に発表されているように、売上高21億4700万円(09年5月期比13.2%減)、営業利益1億5000万円(同48.4%減)、経常利益1億7300万円(同45.3%減)、純利益7700万円(同55.6%減)と減収大幅減益であった。
代表取締役社長植田勝典氏は、「3期連続の減収減益で、前期も厳しい環境でありました。株主の皆様には、申し訳ない気持ちで一杯です」と心境を語った。
植田社長の挨拶に引き続き常務取締役田中勝氏より、コンテンツサービス、ソリューション、海外についての前期ハイライトが紹介された。
まず、コンテンツサービスでは、公式サイトの再構築のため、サイトの選択と集中を実施した。また、総合的にコンテンツ力の向上を図った。デコメールはキャラクターのブランド化が定着した。一方で、集客力の向上のために、プロモーションの強化と他企業とのコラボレーションを実施した。更に、新サイトを構築し、新しいジャンルを開設し、健康サイト、占いサイト、えもじサイトへ参入した。
■中国で、電子書籍に備え、漫画家の著作権を管理するため「漫画家新媒体連盟」を設立
ソリューション事業では、大型ソリューション案件を受注するための提案を開始すると共に、新規顧客開拓に向けての営業を強化した。また、ストック型のソリューションコンテンツの改善も行なった。
海外については、中国で、新たなプラットフォームでのコンテンツ配信を開始。キャリア・メーカーとの連帯を強化している。電子書籍に備え、漫画家の著作権を管理するため「漫画家新媒体連盟」を設立し、業界の形成を行なっている。また、インドでは本格的な進出を行なうために、現地での子会社を設立した。
■「店頭アフェリエイト」ビジネスが順調に拡大
以上が前期の主な取組であったが、事業環境は厳しく、減収大幅減益に終わった。しかし、前期の取組の結果、明るい話題も出てきている。例えば、コンテンツサービスの音楽部門の売上減少が続いていたのが、やっと下げ止まり、前期の第4四半期で1億3800万円と、第3四半期より400万円増えた。また、ソリューション事業の広告部門の「店頭アフェリエイト」ビジネスが順調に拡大したことから、それまで四半期当たり400万円で推移していた売上が第4四半期だけで3100万円の売上を記録している。今期に入ってもこのペースで推移すると予想されている。
■財務内容は健全そのもので、手元資金も潤沢
貸借対照表を見ると、流動負債2億2600万円(09年5月期比1800万円減)、固定負債は変わらず700万円、純資産27億8300万円(同1300万円減)となり、自己資本比率は0.4ポイント改善し92.1%。
キャッシュ・フローを見ると、営業キャッシュ・フロー1億2700万円、投資キャッシュ・フロー1億5900万円、財務キャッシュ・フロー△4700万円で、期末の現金及び現金同等物の残高は11億5200万円(同2億3800万円増)となっている。
3期連続の減収減益といっても財務内容は健全そのもので、手元資金も潤沢といえる。
■コンテンツの事業戦略として8月より5つのサービスを開始
田中氏の説明に引き続き、取締役加藤照氏より今期の経営方針についての説明が行なわれた。
まず、今期のコンテンツの事業戦略として、公式サイト、新ビジネス、キャラクター事業に注力する。
公式サイトは前期と同じく選択と集中を実施し、デコメール、音楽、情報の質を高めることにこだわっていく方針。継続率の高い会員獲得を進め、積極的にキャリアとのタイアップを実現し、今期は4期振りに反転させる計画。
新ビジネスに関しては、ソーシャルアプリ、スマートフォン向けのコンテンツを開発し、量を仕込み、課金に変えることで、新たな収益分野を確保するとしている。8月より5つのサービスを開始する予定。
キャラクター事業では、コンテンツプロバイダーでありながら、コンテンツホルダーである強みを活かし、ライセンシングビジネスを展開する。また、うたがめのライセンスを展開すると共に、新キャラクターも開発していく方針。
■ソリューション事業では企業向けにソーシャルアプリ、スマートフォンに対応した企画・開発を行う
ソリューション事業では、案件の獲得、新しい軸の確立、店頭アフェリエイトの3つを戦略の柱としている。
案件の獲得については、大型クライアントとの関係を強化し、サイト運用・コンテンツ制作などのランニング業務で安定的な収益を確保し、デバッグ業務、サウンド業務、サポート業務の営業を強化し、収益拡大に結びつける方針。
また、新しい軸を確立するために、企業向けにソーシャルアプリ、スマートフォンに対応した企画・開発を行っていく。
前期より成果を出している店頭アフェリエイトは、今期の目玉になると期待されている。提携店舗が増えていることから、広告の売上が伸びているが、更に売上を拡大するために、直営店のほかに、量販店、二次取次店、オーナー店、携帯販売代理店とのタイアップも計画している。
■中国の3G携帯電話の普及はまだまだ。普及するには時間を要する
同社が長年にわたって注力している海外での事業展開については、植田勝典社長より説明が行なわれた。
4月末現在での中国の携帯電話加入者の総数は7億5000万人を突破している。しかし、ほとんどが2Gで、3Gの携帯電話の普及はまだまだ。普及するには時間を要するとしている。原因は通信価格が割高なため。普及させるには、通信各社の料金見直しが必要。中国工業情報化部によると3Gの加入者数が1億5000万人に達するのは2011年と見ている。
同社では、3G端末の普及に備え、新プラットフォームへ早期に参入し、iPhone向けアプリ100本以上、天翼空間向けアプリ60本以上出している。
そのような状況の中での、今期の中国での事業戦略は、電子書籍事業、キャリアとの連携、中国支援事業を中心に進めていくとしている。
■電子書籍事業は今期のメイン事業
まず、電子書籍事業は今期のメイン事業であり、中国向けに配信するためにプラットフォーム化し、健全な業界の成長を目指すとしている。特に、同社では、漫画に集中する計画。
そのためには、キャリアとの連携強化が必要。現在中国電信で同社のコンテンツの配信が始まっているが、現在は無料で配信している。有料になるには、短くて、3ヶ月、長いと6ヶ月かかるという。人気があれば有料化までの期間が短くなる。
更に、これまで中国で蓄えたノウハウを活かし、これから中国に進出してくる企業向けの支援事業も計画している。
また、中国でのスマートフォンのアプリ配信戦略としては、中国キャリアの端末画面には、アンドロイド、メーカー、キャリア、ISPストアとそれぞれのマーケットにつながるアイコンが最大4つ存在するため、同社では全プラットフォームに参入し、タッチポイントを増やす計画。
■インドでは子会社を基点に、モバイルコンテンツビジネスの可能性を探る
インドについては、現地法人を設立した子会社を基点に、年内にも始まる3Gサービスに向けて、モバイルコンテンツビジネスの可能性を探るとしている。インドのキャリア会社は、15社あり、上位6社が10から20%のシェアを持っている。低価格でしのぎを削っている状況。
「中国での3Gの普及が、当初予想より遅れていますが、着実に進んでいます」(植田勝典社長)と中国での事業が遅れているが、今後も変わらず先を見た投資を進めていく方針。
今11年5月期連結業績予想は、売上高23億円(前期比7.1%増)、営業利益2億円(同32.5%増)、経常利益2億500万円(同18.0%増)、純利益1億円(同28.4%増)と増収増益を見込んでいる。
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2010.07 |特集