
減収ながら増益となった要因は、原価率が80.6%(同1.7%減)と改善したことから売上総利益は92億1300万円(同2.3%増)となり、販管費67億5700万円(同3.0%増)をカバーして、営業利益が24億5600万円(同0.5%増)となったことが大きい。また、営業外損益は為替差益等があり、営業外収支は黒字であったが、特別損益は投資有価証券評価損などがあり、収支はマイナスであった。
事業別売上高と営業利益を見ると、機械製造販売事業は、下水道予算の削減や低入札価格の影響等による官需分野の低迷と、出荷予定であったポーランド向け輸出物件の今期への持越しにより売上高は125億4700万円(同13.7%減)となったものの、営業利益は利益率の高い部品・修理が堅調であったことに加え、収益性を重視した販売活動により9億7300万円(同5.2%増)となった。
化学工業製品販売事業では、工業材料関連と電子材料関連は堅調であったが、化成品関連で07年10月期にあったような一過性の売上がなかったこと、為替の影響により香港子会社の売上が減少したことで、売上高は349億9500万円(同3.5%減)となり、営業利益も14億8200万円(同2.4%減)であった。
子会社9社(内、連結子会社は7社)を持つ同社グループは、遠心分離機の製造・販売および化学工業製品の仕入、販売に関連する事業を展開している。遠心分離は遠心力を利用して比重差のある固体と液体などを分離することであり、重力のみの1Gでの沈降である自然沈降に比べ、遠心分離機では50〜2万倍の遠心力で分離を行う機械である。
同社は遠心分離機メーカーで国内のパイオニア。分離機には縦型と横型があるが、いずれも世界最大級の遠心分離機を同社が製造している。縦型では、三菱インドのテレフタル酸プラント向けに高耐圧の世界最大の最新鋭機を開発し、07年度に納入している。
遠心分離機は、化学工業(合成樹脂製造工程など)、環境事業(水処理ー下水道汚泥分離など)、機械工業(油脂類分離など)、食品工業(グルタミン酸の製造工程、ジュース製造工程など)、医療事業(ウイルス回収、血清処理など)、金属工業(各種金属分離など)と広い分野で使用されている。最近では、特にリサイクル分野では、半導体・太陽電池向けシリコンウェハー切削用砥粒回収プロセスに使用されている。
事業内容は、機械製造販売事業、化学工業製品販売事業に分けられる。まず、機械製造販売事業では、遠心分離機の製造・販売をおこなう一方で、巴機械サービス(子会社)が遠心分離機のアフターサービスおよび部品の販売、巴マシナリー(子会社)は遠心分離機部品の板金加工および機械加工、上海の巴栄工業機械(子会社)は遠心分離機の生産とアフターサービスを担当。
化学工業製品販売事業では、付加価値の高い輸入商材の国内販売を行っているほか、巴工業(香港)有限公司(子会社)では中国を主体とした営業展開を行っており、星際塑料(深?)有限公司(子会社)、星科工程塑料(深?)有限公司(子会社)は合成樹脂原料の着色加工、コンパウンド加工業務を展開している。
財務内容を見ると、自己資本比率は7ポイントアップして58.8%と大幅に改善。キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー39億6500万円、投資キャッシュ・フロー△6億4400万円と営業キャッシュ・フローの範囲内で、投資を行っている。財務キャッシュ・フローは、短期借入金の返済により△34億1900万円となっている。
今期の同社の見通しは、機械製造販売事業では、国内の官需分野、民需分野共に弱含むと見ている。一方、海外では中国向け砥粒回収装置、ポーランド向けの売上が計上されることで、売上、営業利益共に前期を上回ると予想している。
化学工業製品事業は、自動車業界や半導体製造業界の不振と合成樹脂原料の全般的な価格低下や景気低迷の影響を受けると見ていることから、売上、営業利益共に前期を下回ると予想している。
したがって、今通期連結業績予想は、売上高464億円(前期比2.4%減)、経常利益23億円(同12.0%減)、純利益12億1000万円(同11.4%減)の減収減益を見込む。業績見通しは厳しいものの、配当については株主への利益還元の方針から、1株当たり年間35円の安定配当を継続する予定。