2010年06月10日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

巴工業の今10年第2四半期は微減収ながら2ケタ増益


■最終利益は、投資有価証券の売却益を計上したことから大幅増益

巴工業ホームページ 遠心分離機と化学工業製品の販売を行なう巴工業<6309>(東1)は、8日に今10年第2四半期決算説明会を東京証券会館で実施した。
 今第2四半期連結業績は、売上高195億7100万円(前年同期比1.2%減)、営業利益16億4700万円(同20.1%増)、経常利益17億5400万円(同16.9%増)、純利益11億3900万円(同36.0%増)と微減収ながら2ケタ増益であった。
 経理担当取締役前田夏彦氏により第2四半期の詳しい決算説明が行なわれた。
 売上高が微減となったのは、前期にあったポーランド向けの縦型遠心分離機(部品も含めて12億円)という大型案件がなくなった反動による。利益面では経費の削減を行なったことから2ケタ増益になっている。しかも最終利益では、投資有価証券の売却益を計上したことから大幅増益となった。

■機械製造販売事業は減収減益

 同社の事業は、機械製造販売事業と化学工業製品販売事業の2事業からなっている。
 まず、機械製造販売事業の業績を見ると、第2四半期連結売上高は、62億7200万円(同17.0%減)、売上総利益23億8900万円(同3.7%減)、営業利益10億4800万円(同3.3%減)と減収減益。
 売上高は、先述しているように前期にあったポーランド向けの売上が無くなった影響が出ている。しかし、売上の減少幅と利益面での減少幅を比較すると、利益面での減少幅が少なくなっている。その要因は、売上に利益率の高い部品・修理の販売が多く含まれていたことによる。
 機械製造販売事業の分野別売上高を比較すると、官需34億9800万円(同7億2700万円増)、民需8億3900万円(同1億2000万円減)、海外17億9100万円(同18億8000万円減)と官需の売上高は伸びたものの、民需は依然として回復していない。海外は上述の要員で大幅減収。

■化学工業製品販売事業は増収増益

 化学工業製品販売事業の第2四半期連結売上高は、132億9900万円(同8.4%増)、売上総利益22億3700万円(同18.9%増)、営業利益5億9900万円(同108.7%増)と増収増益。増収の要因は、前期はリーマンショックの影響で、半導体、自動車等主要業界の生産調整により、需要が減少していたが、今期に入り景気の回復に伴い需要が伸びてきていることによる。利益面での大幅な伸びは、粗利率の高いものが売れたため。
 品目別の売上高は、合成樹脂原料37億6500万円(同1億1100万円増)、合成樹脂製品11億1700万円(同1億7700万円増)、工業材料関連(鉱物類)26億2400万円(同2700万円減)、化成品関連(有機原材料)23億9000万円(同3億3200万円増)、セラミックス7億8900万円(同1億2500万円減)、黒鉛及び金属類4億7400万円(同1800万円増)、電子材料関連15億6700万円(同5億7600万円増)、ナノテクノロジ関連4000万円(同600万円減)、輸入洋酒5億3300万円(同2100万円減)となっている。化学品はニッチななかで競争力の高いものを売っていることから、利益率は高い。なかでも電子材料関連の半導体製造ツールと化成品関連の塗料、接着剤向けの製品の売上が伸びているが、共に利益率が高いことから大幅増益となっている。

■本体は無借金経営で、財務体質は健全

 連結貸借対照表を見ると、大幅増益であることから、現金及び現金は62億9000万円と前期末と比較して18億4300万円増加している。流動負債は、事業が順調で、支払手形・買掛金が7億5100万円増となり、未払い法人税も7億4100万円増となっていること等から94億7600万円(同13億1000万円増)、固定負債は3億6000万円(同3600万円増)、純資産は188億7200万円(同9億5100万円増)となっている。自己資本比率は64.7%と2.1ポイント減少。本体は無借金経営で、財務体質は健全。
 営業キャッシュ・フローは20億7600万円、投資キャッシュ・フロー△22億6000万円、財務キャッシュ・フロー△3億6700万円となり、現金及び現金同等物の増加額は△5億3500万円となっている。
 しかし、投資キャッシュ・フローの△22億6000万円の内訳は、3ヶ月定期預金の預け入れによる支出が23億7800万円、投資有価証券の売却による収入2億1700万円である。3ヶ月の定期預金は投資として見られることから、マイナスとなっている。

■機械製造販売事業の通期見通しは、上半期の減収減益から一転増収増益

 今通期連結業績予想は、売上高391億円(前期比7.7%増)、営業利益20億3000万円(同28.1%増)、経常利益21億円(同24.5%増)、純利益13億円(同30.9%増)と増収増益を見込む。
 機械製造販売事業の通期見通しは、売上高121億4000万円(前期比1.6%増)、売上総利益38億9000万円(同8.1%増)、営業利益9億4500万円(同12.9%増)と上半期の減収減益から一転増収増益となる。下期は中国の塩ビプラント向け遠心分離機の引き合いが活発であり、砥粒回収装置も堅調と予想されるため、増収増益を見込んでいる。
 化学工業製品販売事業の通期予想は、売上高269億6000万円(同10.7%増)、売上総利益44億3000万円(同16.4%増)、営業利益10億8500万円(同4.0%増)と上半期の業績貢献により、通期も増収増益を見込む。

■2020年の太陽電池市場は10兆円市場、今後も砥粒回収装置の売上拡大

 最後に、10年10月期重点施策の進捗状況を代表取締役社長塩野昇氏が説明した。
 機械事業の海外での状況は、中国の下水市場をターゲットにしているが、案件は何件も出てきている。現在西安向け等に14台導入される見通しである。
 砥粒回収装置は、前期の持ち越し分が10億円あるが、順調に捌けている。また、新規顧客も開拓し、韓国、台湾での売上も見込まれていて、今期は14億円から15億円を予想している。2020年の太陽電池市場は10兆円市場とも言われていることから、今後も砥粒回収装置の売上拡大は期待できると見ている。
 中国では、塩ビが活況で、当初予想9億円と見ていたが、それ以上の受注で推移している。中国の塩ビの生産量は年間1300万トンである。その生産に使われる遠心分離機の80%のシェアを同社の製品で占めている。大型機中心に34台受注している。

■石油掘削分野ではシーリング遠心分離機を既に受注

 米国については、現在6社のメンテナンス代理店を活用し、部品・メンテナンス需要の開拓を進めている。石油掘削分野ではシーリング遠心分離機を既に受注している。下水に関しては、引き合いはあるが受注までは至っていない。
 国内展開については、プロジェクトチームを整えて、コスト改革を行なっている。
 更に、新しい商品として、HED型低動力遠心脱水機を開発している。これまでの脱水機に比較し、電力は50%で済み、40%以上のCO2削減を可能とする環境にやさしい脱水機。来年度分で大型物件を受注済み。
 また、省エネ型回転加厚脱水機ロータリースネイルも、現在全国で稼動している1500台以上のベルトプレスの代替需要を狙っている。
 高G遠心分離機の市場投入も計画している。2万Gの遠心分離機で医薬品向けに開発。8月にフィールド実験を行い、今期中には開発する計画。

■華南以外での中国展開を検討

 化学品事業については、現在上向いてきている。ニッチで多分野を視野に入れている。化成品のTEGO製品である塗料、インキ分散剤の市場は50億円といわれているが、現在シェア5%であり、今後10%から15%を目指す。
 ワッカー製品(塗料・接着剤用)はNo.11のダウケミカル社が今後取扱いを止めるので、ドイツのワッカー製品の取扱いを開始している。
 工業材料の売上は伸びていないが、利益は出ている。注目しているのは、コンクリートの添加剤のシリカフューム。ビル、新幹線に使用されている。また、建材、自動車用プラスチック向けウォラストナイトは、素材の強度UPに使用されているが、こちらも今後売上に貢献すると予想。
 化学品の課題は、如何にして、新しい商材を探していくかということに尽きるので、新商材の開発が急がれる。
 中国については、香港、深せん(「せん」は土へんに川)のビジネスの再生が必要である。香港では端子台が延びてきて順調に回復している。深せんはゲーム機用のコンパウンドが伸び悩んでいる。更に華南以外での中国展開を検討している。
 「市況が回復している分、当社も利益を押し上げています。来期は中期経営計画を推し進める方針です。そのため現在、中期経営計画を策定中であります」(塩野昇社長)と今期業績は順調に推移していることから、既に中期経営計画の策定に注力している。

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