2011年06月21日
インスペックの前11年4月期業績は大幅増収増益で黒字転換
■ハイエンドパッケージ基板向けAOIとして大手メーカーが採用
半導体外観検査装置メーカーのインスペック<6656>(東マ)は、6月14日に東京証券会館で前11年4月期決算説明会を開催した。
前期の業績は、売上高742百万円(10年4月期比33.8%増)、営業利益10百万円(10年4月期△224百万円)、経常利益49百万円(同△205百万円)、純利益40百万円(同△251百万円)と大幅増収増益で黒字転換を達成。
同社代表取締役社長菅原雅史氏は、「当初計画の売上高9億円を下回りましたが、営業利益、経常利益共にほぼ計画通りとなり、黒字転換しました。コストダウンの取組で成果をあげています」と前期を振り返ったあとで、「今期は当社にとって転換期を迎えています」と事業の先行きが明るいことを窺わせた。
同社の特長は、画像処理技術をベースに光学センシング技術、メカトロニクス技術を社内に持っていることで、高度な検査システムを構築できる点にある。例えば昨秋開発した基板AOIは、1時間当り検査できる基板数が220枚と、処理速度数が業界最高水準である。これらのことが評価され、CPUやMPU向けのハイエンドパッケージ基板向けAOIとして大手メーカーが採用した理由は、検査精度の高さと処理の高速性を両立した総合性能の高さが優れていたことにとによる。
モバイルパソコン、スマートフォン等に使用される精密基板の需要拡大に伴い、基板検査装置の需要も伸びている。基板検査装置の市場は年間1000台以上で、200億から300億円規模といわれている。検査精度や処理の高速性などで業界の最大手の装置を上回ってきていることから、同社の基板AOIの売上拡大が予想される。
■印刷機メーカーと全数検査の技術を確立
更に、インライン検査ユニットの説明も行われた。この検査ユニットは印刷機械に組み込むもので、プリンタブルエレクトロニクスの高成長と共に需要の拡大が見込まれる。
印刷技術の進化により高速度、高精度化が進んでいるが、印刷物の全数検査はできていない。出荷の際に抜き取り検査で対応しているが、製品のうちの1割が不良品という。そこで、同社は、印刷機メーカーと全数検査の技術を確立した。その製品が、インライン検査ユニットといわれる新製品である。
例えばチップコンデンサの製造ラインは国内の大手メーカーで1000ラインあるが、そのラインに検査ユニットを付けることで全数検査が可能となる。また、太陽電池市場はチップコンデンサの市場より更に大きい、この市場でもインライン検査ユニットを採用することで、高速処理が可能となる。価格は、1ユニット200万円から500万円。現在のところ競合相手はいない。
■台湾の商社TKKと総代理店契約を結び、台湾、中国で基板AOIの販売を開始
このように同社の検査装置は優れていることから、今後の売上拡大が予想されるが、海外での販売を進めるために、6月2日に台湾の商社TKKと総代理店契約を結んだ。TKKは、基板AOIを台湾、中国で販売を開始する。
一方の、インライン検査ユニットの販売は来期からとなる。今期は商談ベースで見積を提出している段階。
同社が開発し、販売する主要製品は、基板AOI(パターン検査装置)、BGA・CSP検査装置、リードフレーム検査装置、TABテープ検査装置(パターン検査)、インライン検査ユニットの4種類である。
今期を含む、今後3年間の業績予想を出している。12年4月期、売上高10億円、営業利益30百万円、経常利益20百万円、13年4月期、売上高17億円、営業利益160百万円、経常利益150百万円、14年4月期、売上高21億円、営業利益240百万円、経常利益230百万円と今期は減益を見込むが、13年、14年と大幅増収増益を見込む。
注目の基板AOIは今期4.5億円、13年8.5億円、14年10.8億円と大幅増収を見込んでいる。もう一方の、インライン検査ユニットは、来期より2.5億円、14年4億円とこちらも大幅増収を見込んでいる。
今期より、台湾・中国市場へも代理店を通じて本格的な販売が開始されたことにより、菅原雅史社長の言葉通り、今期が同社にとって転換点にとなり、売上の拡大が期待できる。