2012年02月20日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

アライドテレシスホールディングス:11年12月期決算説明会を東証アローズで開催


■減収ながら5期連続の黒字を達成し3期連続の配当も実施

アライドテレシスホームページ インターネットの接続機器製造・販売のアライドテレシスホールディングス<6835>(東2)は15日、11年12月期決算説明会を東証アローズで開催した。
 11年12月期の決算概況、今期の業績予想について、執行役員島津圭一氏が、11年の活動内容、中長期的な経営戦略について代表取締役木村進一氏がそれぞれ説明を行った。
 11年12月期連結業積は、売上高340億80百万円(10年12月期比4.9%減)、営業利益15億23百万円(同31.7%減)、経常利益9億40百万円(同5.1%減)、純利益6億84百万円(同13.4%増)と減収ながら、最終利益は2ケタ増益となった。
 「減収となりましたが、5期連続の黒字を達成し、3期連続の配当も実施します。配当については、創立25周年を記念しまして、1円の記念配を実施し、普通配と合わせ3円配当を実施する予定でございます。次に11年の事業環境について説明します。まず東日本大震災、ヨーロッパでの通貨危機等があり、激動の年でございました。当社が属するIT・コンピュータ業界におきましても震災を受けて、BCP、事業継続に関する対策が急速に求められた年でもあり、またクラウドに代表されるマーケットが伸びた年でもありました。日本のマーケットに着目しますと、著しい円高を背景とした日本企業の海外進出が益々増えました」(執行役員島津圭一氏)と決算と事業環境を振り返った。

■日本は減収だが米国は大型案件を受注し大幅増収となる

 過去3年の売上高を比較すると、09年341億91百万円、10年358億26百万円、11年340億80百万円となっている。しかし、売上総利益率は、52.2%、58.6%、61.2%と伸びている。利益率が伸びている要因は、高付加価値サービスの販売増加、円高による国内仕入原価の減少による。
 所在地セグメント別の売上高を比べると、日本は昨年好調であった文教関連の受注が減少し、案件規模も縮小したことで、180億6百万円(同14.4%減)となった。米州は、全国展開するホームセンター向け等の大型案件受注が順調であったことから、80億41百万円(同34.5%増)と大幅増収で着地した。欧州については、景気減速による受注件数の減少に加え、案件が小型化したことで、58億88百万円(同16.4%減)。アジア・オセアニア地域は、ニュージーランド教育省の学校ネットワークやタイのIP監視カメラソリューションの販売が好調であったことから21億43百万円(同21.0%増)と順調に伸びた。
 現地通貨ベースでは、米州は101,341千ドル(同48.5%増)、欧州73,788千ドル(同8.0%減)、アジア・オセアニア26,711千ドル(同34.3%増)と増収幅は伸び、減収幅は縮小している。
 利益面については、「営業利益については、売上の減少を受けまして、利益が減っている部分と今後のグループ経営の基盤となる社内のインフラ整備の費用による影響があります。社内のインフラ投資というのは情報投資、情報インフラをはじめとするIT投資等、アジア・オセアニア、ヨーロッパ地区のサービス展開を推進する市場開拓、あるいは市場開拓のための組織作りといったインフラ整備でございます。そのため、利益を圧迫しました。12年もインフラ整備は継続します」(執行役員島津圭一氏)と減収に加え、社内インフラ投資が利益を圧迫したことを説明した。

■為替差損は資産の評価損が主で、今後の為替次第では大幅な為替評価益も

 「経常利益につきましては、営業利益15億23百万円から経常利益9億40百万円と減少していますが、この要因は、従来の当社特性の為替差損でございます。2011年の為替差損は4億92百万円計上されています。この部分が営業利益から経常利益への減少幅のほとんどですが、当社の為替差損というのは、輸出入の決済差損ではございません。アメリカ、ヨーロッパ、アジア・オセアニアのグループ会社が保有します外貨建ての資産の評価損益が主なものです。従いまして、円高が進んでいます現状では、毎年、多額の為替差損を計上していますが、これはほとんどが外貨建ての資産の評価損でございます。一転これが円安に振れますと、過去にもありましたが、大幅な為替評価益を計上する場面にもなってきます」(執行役員島津圭一氏)と為替次第では今後大幅な評価益が出てくる。
 最終利益については、「米国子会社が関係している繰延税金資産には、従来から評価性の引当金がありました。これが米国子会社の業績改善が3年連続で続き、今後も改善が継続されるであろうと計画になっているところ、米国の当社監査法人のほうから引当金についてリリースするようにと強く要請がございまして、その部分を今般、リリースすることになりました。そのため、繰延税金資産の計上額が増えたため、税金費用の計上が減り、元の部分である当期純利益が増えるといったことがございました」(執行役員島津圭一氏)と最終利益の2ケタ増益となった要因を説明。
 販売費及び一般管理費については、その他管理費、研究開発費に分けられるが、研究開発費については、一定額を投資し、技術力を維持する方針である。前期は34億38百万円(同6.5%減)となったが、これは為替変動によるもの。その他の管理費については、社内インフラ整備を行ったことで、158億98百万円(同5.3%増)となった。IT基盤の構築と市場開拓への投資を行ったことで増えている。
 12年12月期連結業績予想は、売上高345億円(前期比1.2%増)、営業利益10億円(同34.4%減)、経常利益9億円(同4.3%減)、純利益6億円(同12.3%減)を見込む。

■海外に拠点を設けると共に、約300名規模のソリューション部隊を作る

 引き続き、11年の活動内容と中長期的な経営戦略について、代表取締役の木村進一氏より詳しい説明が行われた。
 11年の市場開拓に関しては、「タイ、インド、ブラジルに子会社を設立しまして、今後大きくビジネスを伸ばすための準備をしました。また、ラテンアメリカにおきましても新しくビジネスソリューション事業に着手しておりまして、特にアルゼンチン、ブラジルで医療関係のソリューションビジネスが実際始まっています。また、アジア・オセアニア地域でございますけれども、こちらでは日系企業の進出が著しい状況でありまして、これらの企業を日本からサポートする体制を強化しました。これに関しましては、約300名規模のソリューション関係の部隊を作りましたけれども、その部隊が中心に動いている状態です。そしてその他各種、医療、防犯・防災、IPv6といったテーマで、様々な大型展示会を通じて当社のブランド訴求を行ってきました」と海外での市場開拓状況を紹介。
 製品、サービスの拡充に関しては、「先程申しましたように、ソリューションビジネス強化のための体制構築ということで、300名規模のソリューションビジネスに特化した部隊を構築しました。更に、ヨーロッパの方では、経済状況はよろしくございませんけれどもルーマニアにテクニカルサポートセンターを設立しました。今後ヨーロッパで展開するビジネスに関して基本的な体制を固めたという形でございます。そして、事業の基盤となる強化についてですが、これはグローバルビジネスの拡張と経営効率向上のためのITインフラ整備にかなり力を入れました。費用もかなり掛ることになりました。更にセールスフォースオートメーションといった営業活動をより効率的に行うインフラの設備に投資し、既に稼働しています。こういった企業の投資を行ってきました」とヨーロッパでの事業活動拠点を設けると共に、グローバル展開を視野に入れた社内のITインフラ設備への投資を行っている。

■バンコク、ニュージーランド、インドで社会インフラのソリューションを受注

 昨年のビジネス上のトピックスについて、「日本ではここ数年継続していますけれども、医療機関向けの販売が伸びました。毎年、プロジェクトの件数が約20%の割合で伸びています。また公共機関向けのネットワークの更新が大きく売上に貢献しました。米国について特に目立ったのは、全国展開しているホームセンターからの受注です。かなりの金額の注文をいただきました。また従来から力を入れておりましたISP向けの受注も拡大しています。更に、ヨーロッパですけれども従来より導入を進めてまいりましたトルコ軍の医療施設ですが、こちらも更に拡大しました。アジア・オセアニアについては、バンコクの監視カメラソリューション、ニュージーランドの教育省、インド空港のカメラのソリューションといった社会インフラ的な投資がありまして、かなり大きな売上となりました」と海外の大型案件を紹介。

■ネットワークソリューションビジネスが今後拡大

 中期経営計画に関しては、「私共の主な仕事はコンピュータネットワークでございますけれども、このコンピュータネットワークの市場に、大きく影響を及ぼしてきた革新というものが何回かおきています。まずは1990年代に企業内サーバが普及しまして、それまでコンピュータ単体で管理していたデータを皆さんで共有しましょうという新しい手法でございましたが、これによってエンタープライズの事業ネットワークが拡大しました。更にその後、インターネットの出現で、それまで企業内で閉じていたデータが、各企業間、また一般家庭を含み、様々な社会的な広がりを見せて、データを交換するという基本的な仕組みが出てきました。これにより企業のみならず、キャリアサービスが大きく伸びました。更に先ごろ出てきましたクラウドにより、これまで企業で運用を全て行ってきたマーケットワークのインフラ部分だけではなくいわゆるコンピュータのプラットフォームからアプリケーションの管理、運用、運営の場からユーザーを解放しました。エンタープライズの考え方では、今まで資産として運用していたものが、これからビジネスとして運用できるという大きな変革となりました。これに伴い、当然企業さんのほうでも、今までネットワークで提案していなかったものもクラウド化というものに動き始めています。更に、大きな影響としましてこれまで実現できなかった社会インフラもクラウドの仕組みを使って実現して行こうという動きが、色々な分野で活発化しています。こういった分野もコンピュータネットワークとして、今後、市場に提供して行こうと私共は考えています。このようなクラウド志向によりまして、様々なアプリケーションをクラウドサービスとして所有する。それを実現するためにネットワークソリューションビジネスといったものが、今後拡大していくと見ています」と現在の業界の動きを説明した。

■今後はクラウドを使いグローバルなシステムに対応できるような提案を行う

 「今後私共は、どのような内容に変えていくのかといった話になります。これまでコンピュータ単体の中にあったアプリケーションを皆で共有しましょうといったところまで進んでいますから、これを実現するためのネットワークというのを新に導入するということになりますけれども、更に社会インフラといった部分でも使えるということで、ネットワークの使い方がこれまで以上に深くなります。よりアプリケーションと連携して、考えていかないといけない。これまでエンドユーザーの皆さんの考え方として、今でもアプリケーション、プラットフォーム、ハードウェアのことを切り離して考えられる方が非常に多いです。色々なシステムを構築される時、まずアプリケーションはこれです。最後にネットワークをおまけのように交渉するという、こういった考え方はこれから大きく変わってくるでしょう。まずネットワークをベースにこういったアプリケーションの使い方、運用の仕方ということを考えていかないと、良い仕組みにはなりません。私共もそういったことをベースに、色んなソリューションを提案していきます。また、広くということでは、企業内クラウドといったことが一番分かりやすいと思いますが、様々なクラウドサービスを使って、企業のネットワークのそれぞれの地域ごとに管理されていたものを、グローバルに展開するといった動きがあちこちで出ています。特に中小企業よりも、大企業がこぞってグローバル化という話を進めていまして、当社の提携する色々なパートナー会社でもその様な話が非常に増えてきています。これから益々グローバルのシステムを考えることで、私たちもグローバルなシステムに対応できるような提案をしていくことになります。品質については、これから社会インフラとしてネットワークが入っていくことになるわけですからクラウドもそうですけれども、ユーザーの方にとっては、サービスは揃っていてあたり前です、止まってはいけませんということが常識となっています。これまで以上に高品質のサービスを心掛けます。その様な事をご提案できるようになっていきます」と今後のビジネス展開を説明した。

■今後の事業展開するうえでの柱として4つの事業戦略を掲げる

 今後の事業展開するうえでの柱として、グローバルオペレーション、製品提供からソリューション提供への転換、レジリエンシー(弾力性)思想に基づく研究開発の強化、高付加価値サービスの拡充と4つの事業戦略を掲げている。
 グローバルオペレーションでは、世界最適地戦略により、ローカライズとエンパワーメント(与えられた業務目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えること)によるスピーディな事業展開を行うために、業務プロセスの標準化、効果的、効率的な顧客管理を行い、機動的な経営判断、積極的な新規市場開拓、最適な在庫コントロールなどを実現するとしている。
 製品提供からソリューション提供への転換では、ネットワーク機器の販売で終わっていたビジネスに、保守・保証・修理と運用・管理を行うサポートサービスを加え、更に調査・分析、設計・構築、工事・導入といったプロフェッショナルサービスも行い、最終的にはネットワーク診断、アプリケーションまで行う導入コンサルティングサービスを行うことで、トータルのサービスを提供することで、案件単価の増加、安定した収益の確保、ビジネス市場の拡大につなげていく。
 レジリエンシー(弾力性)思想に基づく研究開発の強化については、従来のネットワーク冗長は、インターネットへの接続回線を複数用意して、 片方が断線してもトラブルが起きないようにするものであるが、片方が常にスタンバイしてはいるが、稼働していない状況である。ところがアライドテレシスのソリューションは、常に稼働している状態であるので、無駄なく、最短のダウンタイムで復旧する止まらないシステムを実現している。
 高付加価値サービスの拡充については、プロフェッショナルサービス、サポートサービスをワンストップで提供することで、顧客のTCO(コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額)を軽減すると共に、顧客の情報インフラの全体最適化を提案していく。
 以上のことを実現することで、2016年の売上高500億円、営業利益40億円達成を中期計画の数値目標として掲げている。

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