2011年05月31日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

京写の前期業績は大幅増収増益を達成


■新潟工場開設で両面板の売上高32.0%増と大幅に伸びる

京写のホームページ 片面プリント基板で世界トップの京写<6837>(JQS)の31日の株価は、前日比4円高の175円で引けた。PER4.69倍、PBR0.93倍と割り負け感が強い。チャート的にも震災直後のパニック売りで付けた急落のチャートを除くと最安値圏。
 5月25日に東京証券取引所ビルで、前11年3月期の決算説明会が開催された。前期連結業績は、売上高16,366百万円(前年比19.2%増)、営業利益968百万円(同42.1%増)、経常利益984百万円(同48.0%増)、純利益534百万円(同52.4%増)と大幅増収増益を達成した。
 製品別売上高を見ると、片面板8,695百万円(同14.7%増)、両面板5,323百万円(同32.0%増)、その他2,347百万円(同11.3%増)。昨年3月に新潟に両面板プリント基板を生産する工場開設したことで両面板の伸び率が最も高かった。
 地域別生産は、日本6,852百万円(同16.8%増)、中国6,352百万円(同31.2%増)、東南アジア2,602百万円(同1.0%増)、北米381百万円(同37.9%増)、欧州その他179百万円(同8.4%増)と日本と中国は伸びているが、東南アジアは横ばいであった。

■自己資本比率は25.1%と1.8ポイント改善

 製品用途別売上高は、映像関連(薄型テレビ、DVD、TVチューナー)3,804百万円(同4.0%減)、家電製品(エアコン、照明機器、洗濯機等)3,113百万円(同29.9%増)、自動車関連(自動車電装品、カーオーディオ)34.2%増)、事務機器(複写機、プリンター)1,876百万円(同18.2%増)、アミューズメント(家庭用ゲーム機、パチンコ、パチスロ)1,352百万円(同28.4%増)、その他(電子部品、音響機器等)3,516百万円(同19.2%増)と映像関連を除いて増収となった。
 流動負債は、短期借入を490百万円返済したことで、5,693百万円(同424百万円減)となった。固定負債は、長期借入が202百万円増加したことで、2,273百万円(同237百万円増)。純資産は、業績が順調に推移したことから2,829百万円(同176百万円増)であった。自己資本比率は25.1%と1.8ポイント改善している。

■大震災の影響により今期の自動車関連は上期減少予想

 今12年3月期連結業績予想は、売上高15,000百万円(前期比8.4%減)、営業利益600百万円(同38.0%減)、経常利益600百万円(同39.0%減)、純利益430百万円(同19.5%減)と減収減益を見込んでいる。
 減収減益の要因は、大震災の影響により自動車関連は上期減少すると見ているため、また、一部の家電セットメーカーにも生産の遅れが出てくると予想している。一方、環境関連のLED照明については、前期の下期に伸びてきているので、引き続き今期も伸びると期待している。
 中期経営計画の中で、5つの重点戦略として、環境対応戦略、ボリュームゾーン戦略、グローバル戦略、収益力強化戦略、新規事業戦略を挙げている。
 前期は中期経営計画の初年度であり、各戦略の前期の進捗状況と、今期の取組について、代表取締役社長児嶋一登氏より説明が行われた。

■今期はLED照明大手への販売を強化

 環境対応戦略では、LED関連市場、エコカー市場が今後伸びると見て、前期には熱に強い放熱基板、厚銅箔基板の開発を促進している。特に、LED照明については、第4四半期より受注が本格化していることから、今期はLED照明大手への販売を強化する方針。また環境対応製品の熱レス、反りレス、粉レスの3レス製品の量産化を計画している。そのため、放熱設計については、メーカーと、放熱インク、反りレスの開発については、大学と、放熱材料については米国のベンチャーと協力して開発を進めてきた。粉レスは既に量産を開始しており、海外展開の準備を行っている。

■京写タイランドを設立し、アセアン地域の販売を強化

 ボリュームゾーン戦略については、市場のボリュームゾーンが先進国から新興国に移行し、製品の低価格化に伴い生産量が大幅に増加すると予測し、日系メーカーだけでなく、韓国系大手メーカーとの取引を開始している。また、インドの家電メーカーとの取引も一部既に始まっているが、取引拡大を視野に入れていることから、前期は京写タイランドを設立し、アセアン地域の販売強化とインド市場への足掛かりの拠点としている。また、中国、インドネシア拠点の増産体制も構築している。
 今期は、非日系家電メーカー、車載メーカーへの拡販を強化する。また、タイ、ベトナム、マレーシアへの拡販も強化する。一方で、インド市場のマーケティングを行う。更に、新しい生産拠点進出の準備も行う計画。

■中国で生産するために、海外での両面板の販路を拡大

 グローバル戦略では、今後顧客の海外シフトは加速すると予測し、国内で技術を確立し、海外での生産拡大を図るとの方針のもとで、前期は国内での両面板の一貫体制を確立するために、新潟工場を取得し、新設した。また、実装関連事業の強化のために、埼玉に京写プロセス・ラボ・ミクロンを設立している。
 今期は、京都・新潟工場一貫生産体制の構築を行い、中国で生産するために、海外での両面板の販路を拡大する。また、実装関連事業のマーケティングを実施し、中国工場での生産と販売を開始するとしている。

■香港のIPO体制をスタートして一括購入を実施する

 収益力強化戦略としては、技術革新による販売価格の下落スピードが速く、従来の体制のままでは利益の確保が難しいという市場背景がある。同社では新工法、内製化の推進、購買体制の革新で対応するとしている。前期は、中国で金型工場を取得し金型の内製化を開始した。また、京写香港内にIPO(Innternational Procecurement<調達> Ofice)機能を持たせ、材料調達の一元化を準備している。
 今期は、生産設備の自動化を推進し人件費の高騰に対応する。また、人件費の安い海外の自社工場で金型、実装冶具の量産化を進める。また、香港のIPO体制を構築し、主材料調達業務の一括購入を実施する方針。
 新規事業戦略では、基板・実装関連に次ぐ第3の事業としての確立を目指し、研究開発を推進する方針であるが、前期の取組については、「具体的に話せることは何もありませんでした」(児嶋一登社長)とのことであった。今期は研究開発を推進するとしている。

■中期経営戦略を着実に実行していることから、今後の事業拡大が予想される

 中期経営戦略は計画通りに進んで、成果をあげている。しかし、今期は先述しているように、震災の影響で、自動車の生産が上期遅れ、家電のセットメーカーの生産も遅れると予測していることから、減収減益と見ているが、5月27日の日経新聞の1面で、2011年度の国内自動車生産台数は800万台以上へと急回復し、前年の9割を確保するとの記事に見られるように、自動車の生産回復が予想より早くなることから、同社の業績の上振れも期待できる。
 同社の事業戦略が的確であり、中期経営戦略を着実に実行していることから、今後の事業拡大が予想される。2015年の業績目標として、売上高25,000百万円(前期比52.8%増)、営業利益2,000百万円(同2.07倍)を掲げている。

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