■厳しい環境の中で立派な結果を出す

5月20日に前10年3月期連結業績は発表されているように、売上高123億1200万円(09年3月期比6.7%減)、営業利益4億6400万円(同23.3%減)、経常利益3億1200万円(同28.3%減)、純利益9600万円(同85.6%増)となっている。
売上高、営業利益、経常利益共に前期を下回っていることから、業績は悪化しているが、昨年9月4日に発表した業績予想と比較すると売上高は0.6%減であるが、営業利益40.9%増、経常利益123.3%増、純利益は当初予想の0円から9600万円と大幅増益となっているように、利益面で当初予想を大幅に上回っている。
昨年6月25日に新体制が発足したが、新社長に就任した大工原正伸氏は、1年も経たない内に、リーマンショックの影響を受ける厳しい環境の中で立派な結果を出したといえる。
■仕入原価7.7%減、人件費4.6%減、その他の経費5.9%減とコスト削減を進める
決算説明会では、常務取締役 経営企画室長 峰尾亨氏が前期の決算内容と今期業績予想を詳しく説明した。
先述しているように前期は新体制のもとでスタートした1年であった。まず、7月2日に「ウカイリゾート」の土地建物売買契約を締結し、7月31日に閉鎖した。8月17日に「日本橋」への新規出店契約を解除。9月3日に「GRILLうかい」を丸の内にオープン。9月11日には普通株式30万株の自己株式を取得する等、大工原氏にとっては、新社長就任早々重大な決断を迫られる一方で出費の嵩むことばかりであったが、9月に「オンラインショップ」を開始し、12月には経営企画室を新設して、営業推進室、危機管理室と併せ、各店舗の連携を一層深める体制を確立する等、文字通りの新体制を構築している。
前期は来客数の減少により、売上が伸び悩み、8億8300万円の減収であった。営業利益はGRILLうかいの開業費7100万円もあり1億4100万円の減益であったが、経費節減の効果もあり、計画比40.9%増、1億3400万円の増益。純利益は、日本橋出店中止による損失7700万円を計上したものの、純利益9600万円を確保している。
事業部別の売上高は、和食事業53億7800万円(同4.5%減)、洋食事業48億3500万円(同8.5%減)、オンラインショップ0円、文化事業20億9700万円(同7.9%減)。
仕入原価、人件費、その他の経費を09年と比較すると、仕入原価32億7400万円(同7.7%減)、人件費43億7200万円(同4.6%減)、その他の経費42億円(同5.9%減)とコスト削減が進んだ。
■有利子負債は87億1300万円と2億3600万円減少
流動負債は短期借入金を4億4000万円返済したことから、42億2800万円(同2億4700万円減)、固定負債は社債が4億6800万円増えたが、長期借入金を5億5600万円返済したことで60億7300万円(同1300万円減)となっている。純資産は自己株式を5億5500万円取得したことで、44億3800万円(同5億1000万円減)。自己資本比率は29.3%と09年3月期末と変わらず。但し有利子負債は87億1300万円と2億3600万円減少していることから、財務の健全化は進んでいるといえる。
キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー8億5500万円、投資キャッシュ・フロー△1億7300万円、財務キャッシュ・フロー△8億9600万円となり、現預金等の期末残高は13億1100万円(同2億1500万円減)となっている。
今期11年3月期連結業績予想は、売上高126億9000万円(前期比3.1%増)、営業利益5億4000万円(同16.2%増)、経常利益3億8000万円(同21.6%増)、純利益1億円(同4.2%増)と増収増益を見込んでいる。
純利益の伸びが、経常利益の伸びに比較して縮小しているのは、特別損失として資産除却債務5200万円を計上するため。
今期の方針は、既存店の強化に軸足を置き、売上を堅持する計画。前期に引き続き、構造の見直しを図り、経費削減を進めることで収益を確保するとしている。
事業別の売上予想は、和食事業55億2800万円(同2.8%増)、洋食事業49億7200万円(同2.8%増)、オンラインショップ6800万円、文化事業21億2200万円(同1.2%増)。
■伝統は深化を、体制は進化させ、新たな魅力を創出
中期経営計画については大工原正伸社長が説明を行った。
方針として、成長ステージを見据え、「深化と進化」を図ることを掲げている。最も大切な企業価値である独自の食文化を見失うことなく、時代の変化に即し、伝統は深化を、体制は進化させ、新たな魅力を創出し、ブランド価値、客や株主へのロイヤリティの向上を押し進める計画。
計画を実現するために、収益性の向上、成長性の追求、有利子負債の削減と3点を掲げている。
まず収益性の取り組みは、経営体制の強化、全社的営業推進による既存店の強化、ブランド発信、人材の育成と登用、経費構造の見直しと流れの再構築、オンラインショップのリニューアル、安全・安心の取組みの7項目からなる。
経営体制の強化は、経営企画室、営業推進室、危機管理室を軸として各店舗と密に連絡を取りあうことで、レベルアップを図っていく。
■ほたるの夕べは今年は昨年より10日間延長
全社的営業推進による既存店の強化については、これまで行ってきた催事・イベント・企画・広報をそれぞれ強化することで売上を伸ばしていく。既にこの件に関しては、具体的に実行に移された例がある。大工原社長は、「うかい竹亭は35周年を迎えますが、知らない人が多いので、4月に2日間銀座うかい亭を借りて、うかい竹亭のイベントを実施しました。肉を焼く鉄板を漆の盆で覆い、室内には竹林を配し、琴の演奏を行い、うかい竹亭の雰囲気を銀座で味わっていただきました。評判が良く、その場で予約もいただくくらいで、2日間盛況のうちに終わりました」と語った。この他に恒例のイベントである「ほたるの夕べ」「ゆかた祭り」があるが、「ほたるの夕べは今年は昨年より10日間延長します」(大工原正伸社長)とのことで、イベントを積極的に展開していく、そのため告知体制を整え、集客力のアップを目指している。
■中期経営計画の数値目標は、飲食事業11店舗で年間100万人の集客を目指す
ブランドの発信については、海外での活動により、海外の人々が、うかいの海外でのイベントに触れることで、うかいを目指して日本に旅行するような仕組み作りを行う。今期はシンガポールでうかいのイベントを行う計画である。
人材の育成と登用では、社員の自信につながる教育を行うとしている。「しつらえ、ワイン、語学を学ぶことで、客とのやり取りを深め、客に喜んでもらうことが仕事への自信となる」(大工原正伸社長)。また、マエストロ制度があるが、全社で8名であるが、今期は若手2名を登用し、仕事へのモチベーションを高めている。
経費構造の見直しと流れの再構築では、スケールメリットを活かした計画的仕入れ、ブライダルに対する収益構造の改革、非営業部門の経費削減を検討課題としている。
オンラインショップのリニューアルでは、通販の配送センターを大和田店に作り、年間8000万円の売上のとうふのお持ち帰りがあることから、ネットでも売上が伸びると見ている。「うかいらしく、手書きでお礼を添える等の独自色を出していく」(大工原正伸社長)としている。
安全・安心の取組では、危機管理室を中心に、各店舗と第3者機関と連携して安全・安心を確実なものとする。
中期経営計画の数値目標は、飲食事業11店舗で年間100万人の集客を目指し、今後3年間の売上高、営業利益、有利子負債は、11年3月期126億9000万円、5億4000万円、80億9000万円、12年3月期132億1000万円、7億9000万円、73億5000万円、13年3月期138億2000万円、11億1000万円、59億5000万円を計画している。
新規出店については、飲食事業の6業態を柱に、それぞれが連携を図ることで、相乗効果が図れる条件が整えばありうるが、現在のところ出店計画はないとしている。