2011年11月02日
JSP:代表取締役社長塚本耕三氏 第2四半期業績の概況を語る
■大震災による生産・販売不振と原燃料価格の値上がりを受けて苦戦
JSP<7942>(東1)は31日、今12年3月期第2四半期連結業績を発表し、同日本社において、決算説明会を開催した。
第2四半期連結業績は、売上高459億71百万円(前年同期比0.5%増)、営業利益27億62百万円(同27.3%減)、経常利益28億1百万円(同25.7%減)、純利益18億75百万円(同33.3%減)と増収ながら減益となった。
同社代表取締役社長塚本耕三氏は第2四半期の概況について説明を行った。
「震災・原発の影響、円高による輸出不振から景気の大幅な落ち込みとなっています。このような状況で当社グループは、東日本震災による生産、販売不振と原燃料価格の値上がりの影響を受けて苦戦を強いられました。押出事業では、液晶テレビ用基板の輸送などに用いられます発泡ポリエチレンシート、ミラマットエースは、景気低迷とエコポイント終了をうけ、販売数量は前年同期を下回りました。住宅用の断熱材に用いられます発泡ポリスチレンボード、ミラフォーは7月まで続きました住宅エコポイントの効果や仮設住宅向けの需要が増えまして、販売数量は前年同期を上回りました。食品用包装材スチレンペーパーは前年同期をやや下回りました。ビーズ事業では、自動車の衝撃緩衝材や家電製品の梱包緩衝材用途の発泡ポリプロピレンのピーブロックは国内では震災の影響による車の生産販売不振に加えまして、円高による自動車、家電製品の輸出不振を受けまして、販売数量は前年同期を下回りました。
■欧州、中国、韓国で販売数量は大きく伸びる
海外におきましては、日本の震災の影響によりまして、欧州を除く各地域で日系自動車会社を中心に車の生産販売不振が顕著となりましたが、その他の自動車会社の販売が好調であったことに加えまして、新しい採用部位の拡大によりまして、売上への影響は軽微でありました。地域別では欧州、中国、韓国で販売数量は大きく伸び、北米、台湾、シンガポールは微増で、全ての地域で前年同期を上回りました。尚、本年3月に買収しました南米のブラジル子会社につきましては、操業が順調であり、また今後更なる企業展開が見込まれることから、12年6月完成予定で現在設備を増強中でございます。
魚箱を主とする発泡ポリスチレンは震災により、東北を中心とした太平洋側の漁港が大きな被害を受け、販売量は前年同期を下回りました」と国内、海外の第2四半期までの状況についての説明が行われた。
■通期では自動車生産の本格的な回復、住宅向け断熱材の需要増が期待される
引き続き、通期連結業績予想についての説明が行われた。
「国内事業に関しては、自動車生産の本格的な回復と、長期優良住宅制度支援による住宅向け断熱材の需要増が期待されますことから、売上高、営業利益共に改善すると想定しています。また、海外では、鋭意進めています自動車への採用部位の拡大が期待されますので、順調に推移すると思われます。これらのことから、通期の売上高は国内の落ち込みを海外がカバーし、前回予想通りの930億円、前期比1.1%増を見込んでいます。各利益につきましては、震災による需要低迷と原燃料価格の値上がりにより、前回予想数値を下回りまして、連結営業利益は57億円、前期比24.5%減、経常利益は58億円、前期比26.3%減、純利益は34億円、前期比30.4%減と予想しています。配当につきましては、前期に引き続きまして、年間30円を予定しています」と通期の業績予想について説明が行われた。
■自己資本比率については、52.0%で過去最高のレベル
引き続き、第2四半期の財務諸表のポイントについて、取締役経理財務本部長の山本均氏より説明が行われた。
第2四半期(7月〜9月)の業績は、第1四半期を売上、利益共に上回った。最終利益については、第1四半期に特損が発生したので、第2四半期の最終利益は大きく伸びた。
包括利益については、26億63百万円。四半期純利益に資産の時価評価によるプラス、マイナスを加えたもので、海外に持っている資産の評価増により包括利益が約6億円増えた。
自己資本比率については、52.0%で過去最高のレベルとなった。期中の自己資本比率であるため、参考記録ではあるが、やっと50%を超えてきたことで、財務内容の健全化が進んでいる。
現金及び預金については、前期末に比較するとこの6ヶ月で約30億円減少している。これは3月11日の震災直後に、金融の不安、市場の混乱を想定して、金融機関から30億円の短期借入れを実施した。しかし、当初予想していた程の混乱は無かったので、30億円を返済したことで、現金及び預金が減少した。
短期借入金が約30億円減少しているが、これは先程の理由による。
純資産の部に、為替換算調整勘定としてマイナス63億10百万円出ているが、これは海外出資額が、為替の変動により、どれほどプラスになっているか、マイナスになっているかの評価であるが、今期は円高による影響から、63億10百万円目減りした。
売上総利益は、128億19百万円、売上総利益率は27.9%となった。前年同期の売上総利益率は30.1%で、今期は2.2ポイント悪化している。一番の原因は、原料と売値のスプレッドである。今期は前期に比較して、スプレッドが約2%落ちている。そのことが売上総利益率に影響した。
特別利益については、災害損失引当金戻入額84百万があるが、これは3月末に引当てしていたが、必要が無かったことから第2四半期に特別利益として計上。
特別損失は、減損損失として土地の評価額が下がったことで、68百万円を計上している。また、災害の損失として、1億79百万円計上しているが、JSP本体の部分が90百万円、子会社で86百万円となっている。
震災による損失が、全体で現在確定している金額が4億96百万円。この内、EPSを生産している鹿島工場で3億40百万円の損失、EPSを成形している茨城県の工場で95百万円の損失、メインの工場である鹿沼工場は地盤がしっかりしていたので被害額が少なく約30百万円の損失であった。
キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローは24億90百万円の支出。前年同期の17億44百万円の支出に比較すると支出が膨らんでいるように見えるが、この中の定期預金7億91百万円が投資とみなされるためであり、実状はほぼ前期並みといえる。
■海外では拠点を伸ばすと共に、拠点を拡充し、収益を伸ばすことに重点を置く
会社側の決算説明の後に、今後国内と海外での成長性についての質問について、塚本社長は、「国内は熟成し、海外での事業は拡大していくと見ています。先程出てきました断熱材の場合は、長期的に見れば優良住宅が増えていきます。住宅の着工戸数は減りますが、中身を見ると、優良住宅は増えると見ていますので、弊社で取扱っています発泡体の需要がゆっくりと拡大すると見ています。一方、海外では拠点を伸ばすと共に、拠点を拡充し、収益を伸ばすことに重点を置いていますので、海外の伸び率が高くなると思います。
しかし、ここに来て、海外でも天変地異が起こっています。政変も起こっていますのでどのような影響が出てくるのか、特に、今好調なヨーロッパでもギリシャの金融不安が全体に与える影響力が今後出てくるのではないか、今はユーロ安を背景に海外に出ていますが、ヨーロッパ国内の需要は冷たくなりつつあると見ています。
今後海外ではどのようなところが活気づいてくるかというと、おそらく中国が中心に、あるいはインドが中心になり活気づくと思っています。現在中国には3拠点ありますが、生産拠点としては2つだけですけれども、まだ拡大していくつもりであります。インドでは土地を買って工場用地を確保しています。ブラジルでも土地を確保して増設に入っています。そういう状況ですから、海外が明らかに引っ張っていくだろうと思っています」と今後の事業の牽引役は海外が主役となる考えを示した。
同社としては、既に今後成長が見込まれる地域には進出している。特に、今後成長が予想されるラテンアメリカについては、独占状態であるため、今後の業績拡大が予想される。
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