2011年05月09日
JSPの前11年3月期連結業績は2ケタ増収で過去最高利益を達成
■売上高、営業利益、経常利益は当初予想を上回る
樹脂発泡製品製造の専門大手であるJSP<7942>(東1)は、4月28日に前11年3月期連結業績を発表し、同日に同社本社で決算説明会を開催した。
前11年3月期連結業績は、売上高919億7100万円(10年3月期比12.7%増)、営業利益75億5200万円(同32.8%増)、経常利益78億7400万円(同42.1%増)、純利益48億8100万円(同52.1%増)と2ケタ増収で大幅増益と過去最高利益を達成。売上高、営業利益、経常利益は当初予想を上回った。最終利益だけが、当初51億円を予想していたが、3月11に発生した大震災により、被災した工場の修繕コストがかかったことから、予想を下回る結果となった。しかし、最終利益も過去最高を達成。
■相対的には震災の被害は軽微
同日に開催された決算説明会で、代表取締役社長井上六郎氏は、「EPSの生産を行っている鹿島工場は、震災の影響で、生産を停止していましたが、昨日より稼動しました。また、長砂工場の設備に破損が生じていますが、成型事業は、他の工場で対応してまいります。相対的には震災の被害は軽微であったといえます」と震災の被害を振り返った。前期の業績については、「原料の価格は安定していたので、販売価格と原料価格のスプレッドも安定していました。そのため、事業は順調に推移し、売上高は1000億円には届きませんでしたが、利益面では過去最高となりました。特に海外はどこも順調でありました。もし円高の影響が無かったら、利益面で1割アップとなっていたと思います。従来ですと海外と国内の売上高の比率は、30対70ですが、前期は40対60の比率まで海外の売上高が伸びました。海外の中でも、特に、驚異的な回復を見せたアメリカが好調でした。更に新会社を設立したインドについては、立ち上がりが早いので、早期の完工を目指します。また、同じく新会社を立ち上げたブラジルは、従来から黒字基調ですから、早期に生産規模の拡大を実施する計画です」と前期業績を振り返ると共に今後の方針を示した。
■押出事業では永久帯電防止性能を持った高付加価値製品を中心に需要が好調に推移
井上六郎代表取締役社長の前期の業績に対するコメントの後、前期業績について決算短信を基に説明が行われた。
前期の事業別の概要は、押出事業の「ミラマット」は、液晶テレビ用基板の輸送用保護シ−ト等に用いられる永久帯電防止性能を持った高付加価値製品を中心に需要が好調に推移し、売上高が増加。食品用包材の発泡ポリスチレンシート「スチレンペーパー」は、主要顧客からの需要が底堅く推移したものの、市場環境が依然として厳しく、売上はほぼ前年並みであった。広告用ディスプレー材や折材に用いられる発泡ポリスチレンシート「ミラボード」は、企業業績の回復を受け、前年同期に比べ売上高が増加した。また、発泡ポリスチレン押出ボードの住宅用断熱材「ミラフォーム」は、エコ住宅向け補助金などの後押しもあり、需要が増大したことで売上が増加した。トラックの積載品を保護するための緩衝材や自動車用部品の通い函等に使用される発泡ポリエチレン押出ボード「ミラプランク」も需要が堅調であった。その結果、押出事業の売上高は354億2900万円、営業利益30億9000万円となった。
■ビーズ事業の発泡ポリプロピレン「ピーブロック」は売上・利益共に増加
ビーズ事業では、発泡ポリプロピレン「ピーブロック」が、自動車用バンパーコア材、内装材、新用途のリア−シートコア材等の他、IT製品輸送用通い函、家電製品用緩衝材、競技用グランド基礎緩衝材などに使われていて、世界各地で製造販売している。中国を中心としたアジア各地域の旺盛な需要や、アメリカ、ヨーロッパにおける精密機器梱包材・自動車資材の需要が回復したことなどにより、売上・利益共に増加した。また、魚箱、家電製品用緩衝材、軟弱地盤,易道路拡幅等土木用資材に用いられる発泡性ポリスチレン「スチロダイア」も、用途や季節的要因による需要の微増減はあったものの販売数量は前年同期並みに推移した。その結果、ビーズ事業部の売上高は492億1700万円、営業利益46億8500万円となった。
その他は、ユニットバス天井材に使用される「スーパーブロー」は、技術改良と業界需要の回復により普及機種用を中心に販売数量が増加した。また、自動車エアコン用ダクトに使用されている軽量で断熱性、遮音性に優れたハイブリッド成形品「スーパーフォーム」も販売数量が増加したが、いずれも利益を計上するまでには至らなかった。一般包装材の売上は増加した。その結果、その他の売上高は73億2400万円、営業利益は△1億2100万円となった。
■今期も海外については、中国をはじめ新興国は引き続き力強い成長が続く
10年3月期は国内の増益により、増益となったが、11年3月期は海外の利益が増えた分だけ増益となった。
前期は、リーマンショックからの回復もあり、特に海外の急回復により、好業績を納めたが、今期の国内の業績については、3月11日の東日本大震災の影響で、計画停電の実施、原材料・燃料の供給不足と急激な価格上昇、生産活動の停滞と消費マインドの委縮による景気低迷、取引先被災による売上高減少、物流の混乱等の懸念材料があることから、景気の先行きを予想することは極めて困難としている。しかし、海外については、中国をはじめ新興国は引き続き力強い成長が続き、アメリカやヨーロッパも堅調に推移すると予測している。また、2月のブラジル発泡ポリプロピレンの製造販売会社買収による効果も見込んでいる。その結果、今12年3月期連結業績予想は、売上高930億円(前期比1.1%増)、営業利益63億円(同16.6%減)、経常利益64億円(同18.7%減)、純利益41億円(同16.0%減)と増収減益を見込んでいる。
説明会では、「増収でありながら減益であるのはなぜか?」という質問が出たが、同社では原油価格が今後も上昇するのであれば、価格転嫁が遅れることで利益が減少する可能性があり、慎重に判断したと説明している。しかし、7日の日経新聞の朝刊には、「国際商品市場を中心に投資家の強気の心理が後退し、今週初めに1バーレル113ドル台で推移していたニューヨーク原油先物相場は、6日早朝の時間外取引で一時94ドル台まで下げた」との記事が出ているように、年初から4月末まで約25%上昇した原油相場が調整局面に入っている。もし、今後原油価格が下がるようであれば、同社にとっては追い風であり、増収増益も期待できる。
また、東日本大震災の影響もマイナス面だけではなく、仮設住宅向けの断熱材の需要が高まる等、プラスの面もある。更に、ブラジルへの事業進出は、ブラジル市場のみならず、ラテンアメリカ全体の需要を取り込む可能性がある。年間需要は2000トンで、現在は、その内不足分4分の1をメキシコから輸出している。そのため、新工場の建設を急いでいる。既に、用地は取得済み。海外の売上比率が更に高まるものと予想される。
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