2011年2月28日
建設技術研究所:前10年12月期連結業績についての決算説明会を開催
■補正予算の影響で09年の受注が好調であったことから平年並みの業績を確保
建設コンサルティングの建設技術研究所<9621>(東1)は、2月18日に前10年12月期連結業績についての決算説明会を開催した。
前10年12月期連結業績は、受注高301億5500万円(09年期比12.1%減)、売上高309億3900万円(同1.4%減)、営業利益11億5600万円(同2.1%減)、経常利益12億7900万円(同0.2%減)、純利益6億3400万円(同0.6%増)と国内の公共事業が不振で受注高が減少したが、補正予算の影響で09年の受注が好調であったことから平年並みの業績を確保した。
10年の建設技術研究所単体の売上高、受注高は、売上高272億2200万円(同3.0%減)、受注高262億3200万円(同14.0%減)と売上高、受注高とも減少した。
連結貸借対照表を見ると、流動資産209億7100万円(同12.6%増)、固定資産112億7200万円(同0.7%減)、流動負債117億1300万円(同19.8%増)、固定負債8億7100万円(同12.5%減)、純資産196億5800万円(同2.4%増)となり、自己資本比率は60.7%と3.1ポイント減少、一株当り純資産は1383円80銭(同47円22銭増)となった。
連結キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー30億2500万円(09年期△7億6000万円)、投資キャッシュ・フロー△14億8300万円(同△5億3600万円)、財務キャッシュ・フロー△6億9600万円(同△4億200万円)となり、現金および現金同等物の期末残高は65億5900万円(09年比14.7%増)。
■厳しい予算の中で、効果的予算の執行が求められ、プロポーザル、総合評価方式の入札比率高まる
同社が属する建設コンサルタント業界を取り巻く環境は、公共、民間共に建設投資が減少していて、ピーク時から見ると半減しているが、まだ下げ止まる様子は無く、3分の1に近づいている状況。96年の公共建設投資は35兆円、民間建設投資は48兆円であったが、その後減少し続け、11年の公共建設投資は13億円、民間建設投資27億円となっている。
そのような環境での建設コンサルタント上位50社の業務契約高の推移を見ると、06年3742億円、07年3877億円、08年3475億円、09年3844億円、10年3278億円となっている。対前年度で比較すると、07年104%、08年90%、09年111%、10年85%と09年の補正予算の影響もあるが、前期が最も落ち込んでいる。
厳しい予算の中で、より効果的な予算の執行が求められるため、同社が得意とするプロポーザル、総合評価方式(プロポーザル+価格評価)の比率は高まっている。過去4年間の国土交通省における入札方式別契約件数の構成比に占めるプロポーザル、総合評価方式の比率の推移を見ると、07年プロポーザル48%、08年53%、09年プロポーザル42%、総合評価方式19%、10年(4月〜11月)プロポーザル28%、総合評価方式46%となっているように、プロポーザルと総合評価方式の占める割合が年々増えている。逆に競争入札は、43%、43%、38%、25%と減少している。
ある地方整備局の入札方式別契約件数の構成比に占めるプロポーザル、総合評価方式(プロポーザル+価格評価)の比率の推移は、07年プロポーザル58%、08年プロポーザル64%、09年プロポーザル57%、総合評価方式31%、10年(4月〜11月)プロポーザル38%、総合評価方式53%とプロポーザルと総合評価方式の占める割合が年々増えている。一方、競争入札は、07年23%、08年20%、09年10%、10年9%と減少している。
厳しい環境ではあるが、プロポーザル、総合評価方式の入札比率が高まることは、同社にとっては救いといえる。
■上位50社の中でも同社はダントツに1件当りの契約額が高い
10年の発注者別受注高(連結)は、国からの受注額142億円(09年174億円)、公団・財団19億円(同26億円)、地方自治体98億円(同105億円)、民間13億円(同12億円)、外国政府・JICA28億円(同24億円)と国からの受注が大幅に減少している一方で、海外は伸びている。
1件当り契約額の過去3年の推移を上位50社と同社(個別)を比較すると、上位50社は、08年7600万円、09年7700万円、10年7300万円。同社は1億200万円、1億1000万円、1億1000万円となっていて、上位50社の中でもダントツに1件当りの契約額が高い。
前10年12月期の事業を振り返ると、受注に関しては、公共工事が大幅に減少したにもかかわらず、業界内のシェアを確保した。収益性については、営業利益、経常利益共に微減であったが、最終利益は増益であった。事業展開については、海外部門、地球環境部門が共に好調であった。品質管理については、プルーフエンジニア体制を拡充し、17名に強化したことで、品率管理の向上を推進。また、10年4月入社の新卒採用者は38名、中途採用は41名とし、生産体制を強化。技術力については、階層別研修の強化、専門職研修を開始し、技術力の向上を図った。その結果、技術者筆記試験合格者は、20部門で51名、総合技術管理部門で21名となった。執務環境については、中期目標である年間勤務時間2000時間レベルを維持した。更に、本社ビル13階にサテライトオフィスを確保したことで、改善が進んだといえる。
■計画的に事業運営を行っていることから、厳しい環境の中であっても安定的な収益を確保
また、前期に、受注確保と新しい基盤構築、重点分野の事業展開推進、品質向上と技術力の強化、経営システムの強化を重要実施案件として取り挙げている。
その成果をみると、受注確保と新しい基盤構築については、全体の受注は低調であったが、主力部門である河川整備計画の再検討、事業再評価業務の受注は好調であった。道路については、維持管理系へのシフトを想定した体制構築ができた。また、非土木分野である資源循環・消防防災無線等の受注が増加。更に官業民営化・PPPの取組へ向けて体制の整備ができた。
重点分野の事業展開推進に関しては、まず、海外事業では、建設技術インターナショナルと連携した海外業務を実施し、海外人材育成のための研修を開始した。環境事業については、再生可能エネルギー関連など地球環境分野での受注が好調であった。都市については、消防署、学校など建築系PFIの案件が増加した。マネジメントでは、砂防、水工分野で設計VE業務を受注した。
品質向上と技術力の強化については、品質管理システムの効率的な運用を行うために、照査費用システムの運用を開始し、業務原価の管理を強化。更に人材の育成を目的に、階層別研修を強化し、専門職研修を開始。また、研究開発投資を活用し、約20テーマの技術開発案件に投資した。
経営システムの強化では、執行役員制度導入と技術部門担当役員任命を実施。また、生産効率向上に向けた「プロジェクトマネジメント」を推進した。更に、人事考課制度の見直しを実施すると共に、「1300人の働き方改革」による執務環境改善運動を継続した。
以上のように、計画的に事業運営を行っていることから、厳しい環境の中であっても安定的な収益を確保している。
■今期の経営基本方針は、「自立と総合」がテーマ
今期については、受注高330億円(前期比9.4%増)、売上高330億円(同6.7%増)、営業利益11億円(同4.9%減)、経常利益12億円(同6.2%減)、純利益5億3000万円(同16.4%減)と増収ながら減益を見込んでいる。減益の要因は、会計処理の変更を行う影響による。
経営基本方針は、「自立と総合」がテーマとなっている。
まず、個別で275億円、グループ全体で330億円の受注高の確保、外部調達システムの抜本的な改革、品質管理システムの再構築、重点分野の事業展開および技術の総合化、執務環境の改善と5つの方針を挙げている。
特に、外部調達システムの抜本的な改革については、現在売上の3分の1が外注費となっているので、今期は1割削減を目標としている。
実施方針は、受注確保と新しい基盤の構築を挙げている。既存分野では、シェイプアップと新しいニーズへの対応を進め、受注の拡大を目指す。特に、主力の河川、道路に関しては、維持管理関連業務を本格的に展開していく計画。新規参入分野として、鉄道、水道など未参入分野への取組を推進していくとしているが、既に、海外分野では既に鉄道、水道分野にも進出している。
海外事業については、東アジア、大メコン地域を中心に事業を拡大していく。環境事業については、地球環境センターの全国展開体制を確立し、拡充する計画。都市事業については、低炭素分野への展開を進める。マネジメント事業では、発注者支援業務への取組を強化する。
更に、品質向上と技術力の強化を実現するために、総合的サービスの提供を可能とする技術力を強化する。そのため、調査・計画系業務の品質管理体制を検討したうえで、実施する。また、「技術力」を評価に直結させる説明・プレゼンテーション能力の向上に努めるとしている。
経営システムの強化として、技術部門の事業展開方針徹底と目標管理の強化、営業推進機能の強化、外部調達システムの抜本的改革、戦略的PM推進による生産効率の向上と4課題を挙げている。
同社は、厳しい環境でありながらも、ずば抜けた技術力を背景に、安定した業績を確保している。
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