2011年08月17日
建設技術研究所:第2四半期売上高は業務完成が計画を上回るペースで増収に
■大幅な減益となっているが、経理上の処理の変更によるものが大きな要因
建設コンサルティングの建設技術研究所<9621>(東1)は、8月10日に本社で今期11年12月期第2四半期決算説明会を開催した。
代表取締役社長大島一哉氏は、第2四半期決算報告、財務諸表、通期見通し、市場環境と当社の対応の順に説明を行った。
第2四半期連結業績の受注高は、14,959百万円(前年同期比0.5%減)、売上高18,654百万円(同8.6%増)、営業利益610百万円(同35.9%減)、経常利益666百万円(同34.4%減)、純利益317百万円(同34.4%減)と増収ながら大幅減益となった。
受注高は、微減となっているが、これまで好調であった海外の受注が遅れていることと、国内は1月から3月までは前年同月比で減少していたが、4月以降はプラスに転じ、第1四半期の受注減をほぼカバーしたことによる。
売上高は、業務完成が計画を上回るペースで進んだことから、増収となっている。
一方利益面では、大幅な減益となっているが、経理上の処理の変更によるものが大きな要因。今期よりプロポーザルで作る費用を従来の間接費としてではなく、販管費として計上するようになったことから、前期の積み残しが売上原価として計上されているため、今期は2重の経費が出てきていることによる。当初より予想していたことであり、同社では想定内としている。また、今回の大幅減益は一時的なもので、来期より通常の利益率に戻る。
■同社の1件当たりの契約額は高く、大プロジェクトは得意
グループ売上高の概要は、建設技術研究所156.4億円、建設技術インターナショナル14.8億円、福岡都市技術7.1億円、地圏総合コンサルタント8.6億円となっている。地圏総合コンサルタントは今期より連結対象となる。
発注者別受注高は、国76億円(前年同期70億円)、公団・財団7億円(同11億円)、地方自治体44億円(同45億円)、民間5億円(同4億円)、外国政府・JICA14億円(同19億円)。
部門別受注高は、河川部門32億円(同32億円)、水工部門17億円(同15億円)、道路部門28億円(同26億円)、環境・都市部門21億円(同26億円)、情報部門18億円(同16億円)、地質部門11億円(同9億円)、実験部門5億円(同5億円)、海外部門14億円(同19億円)となっている。
契約方式別受注高は、プロポーザル53億円(同61億円)、総合評価落札方式21億円(同13億円)、特命随意契約(プロポーザル継続)10億円(同8億円)、特命随意契約28億円(同30億円)、指名競争入札35億円(同37億円)。
1件当たりの契約額を同社個別と上位50社の過去3年間(09年第2四半期、10年第2四半期、11年第2四半期)を比較すると、同社個別は11.1億円、12.2憶円、11.3憶円であるのに対して、上位50社は、7.6億円、7.2憶円、7.6憶円であり、同社の1件当たりの契約額が高いことが分かる。つまり、大プロジェクトは同社が得意とする分野といえる。
■地圏総合コンサルタントが今期より加わり、純資産は1.7%増
連結の貸借対照表については、流動資産は前年同期比で10.0%減となっている。これは、受注減により、受け入れ金が減少した影響。固定資産は0.5%増の114億円、流動負債は16.8%減の166億円、固定負債は33.0%増の11億円。純資産は1.3%増の197億円となっている。純資産が増えたのは、地圏総合コンサルタントが今期より加わった影響。
損益計算書については、売上高は8.6%増と増収になったことから、売上原価も9.5%増となっている。売上総利益も増収により5.9%増。販管費は18.7%増と伸び幅が拡大しているが、これは、プロポーザルの費用が加わり、地圏総合コンサルタントの経費が加わったことによる。販管費が増えたことで、営業利益は35.9%減、経常利益は34.4%減、純利益は34.4%減となった。
キャッシュ・フロー計算書については、営業活動によるキャッシュ・フローは、受け入れ金の減少により、35.1%減の73.5憶円となっている。従って、現金及び現金同等物の残高も20.2%減の111.5憶円となった。投資活動によるキャッシュ・フローは25.1%減。財務活動によるキャッシュ・フローは4.0%減。
今通期連結業績予想は、受注高33,000百万円(前期比9.4%増)、売上高33,000百万円(同6.7%増)、営業利益1,100百万円(同4.9%減)、経常利益1,200百万円(同6.2%減)、純利益530百万円(同16.4%減)を見込んでいる。
■震災発生の4分後の15時にBCP(事業継続計画)に基づき本社に災害対策本部を設置
業績に引き続き、今期の市場環境と、同社の対応について説明が行われた。
3月11日に発生した東日本大震災への社内の取組として、震災発生の4分後の15時にBCP(事業継続計画)に基づき本社に災害対策本部を設置。同日16時に東北支社に現地災害対策本部を設置。3月14日には、現地災害対策本部を東北支社事業継続本部に切り替える。3月15日には、東北支社への支援物資輸送、技術者の応援派遣を開始した。4月11日には社内に復興支援本部を設立した。7月1日、東北支社復興支援室を設立するなど、震災直後から迅速かつ適切な対策を出している。
社外対応としては、東北地方整備局では、北上川堤防被害状況調査、鳴子・郡山地区の緊急橋梁点検を行う。宮城県では鮎川漁港施設災害調査設計、関東地方整備局では茨城県北部道路被害状況調査、小貝川上流部構造物被災調査設計を実施。6月1日には釜石市の市街地復興概略検討業務をスタート。7月29日現在で、同社の震災関連契約高は、56件で約10億円となっている。「地震・津波の被害からの復興に関しては全体として少し遅れている状況です。また、予算不足もあるのでしょうが、50以上の市町村があり、復興の体制がとれていないのが現状です。しかし、復興はやっていかなければならないですから、これから進むのではないかと思っています」(大島一哉社長)。
政府では、東日本大震災の復旧・復興の予算は、第一次補正予算として約4兆円、第二次補正予算として約2兆円、第三次補正予算以降約13兆円を予想している。集中復興期間である当初5年間で19〜20兆円程度、10年間で23兆円かかると見ている。
限られた予算のなかで、より効果的な復興事業を実現するために、国土交通省では、技術競争が定着化している。現在の国土交通省の入札方式別契約金額構成比は、プロポーザル4割、総合評価方式4割、競争入札2割という割合に落ち着きつつある。
ある地方整備局の入札方式別契約件数の構成比は、プロポーザル50%、総合評価方式39%、競争入札9%、随意契約2%と技術競争が明確となっている。
技術競争に加え、価格競争も激化している。国土交通省における10年度の低入札発生率は26%、平均落札率は58%。ある地方整備局では、低入札発生率は66%、平均落札率は55%となっている。
■品質向上特別本部を設置し、ソフト系業務の向上を目指す
第2四半期までの事業を総括すると、技術者の増員については、新規採用が35名、中途採用10名の計45名であるが、中途採用が計画を下回っているので、下期に更に採用を進める方針。
また、品質については、品質向上特別本部を設置し、ソフト系業務の向上をターゲットとしている。通常であれば、設計業務の構造物について安全性に問題はなかったのかということであるが、その前の段階で、構造物を作る設計の条件も妥当であるのかということも非常に大事な問題。ここのところを建設コンサルタントとしても確認し、総括的に取組む方針。
コストに関しては、調達管理室を設置し、更にコストを低減するために、外部調達比率の1割削減を目標としている。
事業展開については、中国での事業を効率的にするために、広州事務所を設立している。一方国内については、国土交通省等からの発注者支援業務、点検補修業務の受注が増大している。更に、今後は、非土木系分野への進出も計画している。特に再生エネルギー分野への進出を計画している。この分野に進出して、受注の獲得を目指すというのではなく、計画の立案、計画の支援を目指し、エネルギー問題に取組む計画。
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