2014年5月27日
決算情報メディアアイアール 日本インタビュ新聞社

テクマトリックス:医療情報クラウドサービス「NOBORI」は医療機関との成約が好調


■14年3月期連結の売上高は過去最高

 テクマトリックス<3762>(東1)の14年3月期連結業績は、売上高173億53百万円(前年同期比3.7%増)、営業利益11億18百万円(同6.4%減)、経常利益11億64百万円(同0.7%減)、純利益7億93百万円(同26.1%増)と過去最高の売上となったものの、営業利益、経常利益は減益であった。純利益については、繰延税金資産追加計上などで増益だった。

 減益は、医療情報クラウドサービス「NOBORI」の赤字による。事業戦略上医療機関へのクラウドサービス「NOBORI」の普及を進めるため、売切り型ではなく、複数年契約の従量制の月額課金のストック型の販売であることから、当面は売上の減少が発生し、損失が拡大する。しかし、2016年度までには、収益のストック化による収益率の大幅な改善が実現し、黒字化する計画。14年3月期は、医療機関との成約が好調で期初計画を大幅に上回り100件の新規契約を達成し、累計で150件となっている。

 同社は、ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業と、医療・CRM(顧客管理)・ソフトウェア品質保証・EC・金融を重点分野としてシステム構築・テストツール製品・クラウドサービスなどを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 情報基盤事業の売上高は111億95百万円(同6.0%増)、営業利益8億76百万円(同13.9%減)となった。売上高は過去最高を達成。減益となった要因の一つは円安が挙げられる。

 概況としては、主力の負荷分散装置の販売は堅調であった。セキュリティ関連製品、特にサイバー攻撃、標的型攻撃といわれるようなものに対する防御にあたる製品の販売は順調であった。一方、個人認証システム、Webサイト脆弱性監査ツール、統合ログ管理アプライアンス等は、対象市場の成熟度が進行したことや、製品の世代交代時期に差し掛かったが、製品の互換性をメーカー側が十分に確保できなかったことなどから一部の製品は若干見通しを下回った。子会社関連のクロス・ヘッド、沖縄クロス・ヘッド、NCLCも計画通りの数値を達成した。しかし、人材獲得競争が厳しく、少し機会喪失が生じている。

 アプリケーション・サービス事業の業績は、売上高61億57百万円(同0.2%減)、営業利益2億42百万円(同37.1%増)と減収ながら、CRMが利益に貢献したことから、大幅増益となった。

 分野別概況は、インターネットサービス分野では、スマートフォン関連のシステム開発案件等、既存顧客を中心に好調であった。金融機関向けリスク管理システム等、金融分野における受託開発案件の受注が前年度より大幅に回復した。子会社のカサレアルは教育事業及び既存顧客からの継続的な受託開発が好調であった。

 ソフトウェア品質保証分野は、組込ソフトウェアに関する品質向上、機能安全の必要性の浸透による需要の高まりは継続した。また、円高是正、それに伴う製造業の復調を背景に、テストツールを中心に受注は堅調であった。

 医療分野では、医療情報クラウドサービス「NOBORI」は先述したように好調に推移した。もう一方の遠隔画像診断のインフラ環境を提供する医知悟は、検診施設などの顧客の取り込みが進み、契約施設数、読影依頼件数、従量課金金額ともに順調に増加し、売上、利益共に計画値を超過した。読影依頼件数は検診を含めて、月間10万件から11万件を超えていて、日本最大規模のネットワークとなっている。

 CRMについては、大手システム・インテグレータとの業務提携やクラウド需要の増加等による大型案件獲得も含め受注が好調。過去最高の利益水準となった。

■医療情報クラウドサービスは年々拡大

 今期15年3月期連結業績予想は、売上高183億円(前期比5.5%増)、営業利益11億60百万円(同3.7%増)、経常利益11億60百万円(同0.4減)、純利益7億円(同11.7%減)を見込む。

 今期の基本方針は、前期と基本的に変わっていない。情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業の2つのセグメントを推進しながら、クラウドとセキュリティ&セイフティに注力する。

 「ネットワーク・セキュリティについては、いくつかの新しい製品・サービスを展開する予定です。医療につきましてもCRMと同様に、海外の展開を始めておりまして、幾つかの地域でPОC(概念実証)を行っています。CRMにつきましては、具体的な進捗をこれから発表できる予定です。インターネットサービスにつきましては、インターネットコマースをやっているような企業様向けに加えて、ビジネスインテリジェンス(ビッグ・データ分析)といった技術の活用に取組んでいます。前期は、そういった取組で大型案件を受注しました。ソフトウェア品質保証につきましては、従来のテストツールの販売に加えてコンサルティングを強化します。医療機器の輸出については、例えばアメリカに輸出するためにはFDAの機能安全基準をクリアしなければならないわけですけれども、そういったドキュメンテーションを含めたテストツールを使ったエビデンスの作り方をコンサルティングします。経済産業省も日本の医療機器ビジネスは産業の育成の目玉としていますので、特に日本の医療機器メーカーを対象にコンサルティングを強化します。」(代表取締役社長由利孝氏)と語った。

 同社が最も注力している医療情報クラウドサービスがどのような状況にあるか理解するために、矢野経済研究所が発表している医用画像システム(PACS)クラウド市場規模予測を見ると、12年355TB<テラバイト>(実績)、13年770TB(予測)、14年1935TB(同)、15年3050TB(同)、16年4100TB(同)と年々拡大すると見ている。

 クラウドの国内契約施設数も12年102件(実績)、13年205件(予測)、14年415件(同)、15年570件(同)、16年710件(同)と増加する。

 そのような状況の中で、同社が展開する医療情報クラウドサービス「NOBORI」は12年50件、13年150件と順調に契約数を伸ばしている。今期については、前期の新規契約の1.5倍を見込んでいることから、累計で300件を計画している。矢野経済研究所の見通しでは今期は全体で415件を見込んでいることから、同社のシェアは70%以上を占めることになる。

 医療情報クラウドサービス「NOBORI」の業績について、「今期が谷の一番深いところになります。契約の積み上がりと実際の売り上げ計上の追いかけっこになるのですけれども、今期のマイナスが最大となります。来期以降は、谷を越えて、V字回復を予定しています。」(由利孝社長)と語った。

 今期の業績予想は前期並みであることから、「NOBORI」の赤字を他の事業がカバーすることになる。16年3月期以降は、「NOBORI」の業績が急回復することから、同社の業績は再度成長路線に戻ると予想される。

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