インテージHD:14年3月期は増収増益で、売上高、営業利益共に過去最高
■主力である市場調査・コンサルティングの業績は史上最高を記録
市場調査最大手のインテージホールディングス<4326>(東1)の14年3月期連結業績は、売上高425億8百万円(前年同期比6.5%増)、営業利益35億5百万円(同5.9%増)、経常利益33億82百万円(同5.3%増)、純利益16億42百万円(同31.4%増)と増収増益で、売上高、営業利益共に過去最高であった。
しかし、計画ベースで見ると、当初予想を下回る結果となった。主な要因は、医薬品開発支援とインテージ・チャイナの業績不振が挙げられる。
同社は、小売店パネル調査や消費者パネル調査などの市場調査・コンサルティング事業を主力として、システムソリューション事業などにも事業領域を広げている。グループIT基盤強化のためとして、14年4月にはインテージのIT関連部門とインテージ長野を統合してインテージテクノスフィアを発足させた。
M&Aも積極活用して11年9月にベトナムの市場調査会社FTA Research and Consultant、12年9月に医療情報総合研究所、12年11月に医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月に香港の市場調査会社Consumer Search Hong Kongを子会社化した。またアライアンス戦略では12年4月にNTTドコモ<9437>と合弁会社ドコモ・インサイトマーケティングを設立、13年10月に韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的な事業協力を締結、13年11月にインドネシアの市場調査会社DEKA Marketing Researchと合弁会社を設立した。
14年4月には、連結子会社アスクレップの臨床開発事業を新たに設立したエイツーヘルスケアに事業承継(効力発生日6月2日予定)し、同社の全株式を伊藤忠商事<8001>に譲渡(株式譲渡期日6月2日予定)すると発表した。今後、アスクレップは医薬情報事業をメインに事業をおこなっていく。
そのような状況の中で、主力である市場調査・コンサルティングの業績は売上高305億70百万円(同7.9%増)、営業利益30億20百万円(同5.6%増)と史上最高を記録している。売上高の内訳は、パネル調査165億80百万円(前年同期159億80百万円)、カスタムリサーチの既存型調査87億90百万円(同71億40百万円)、Web調査51億80百万円(同51億90百万円)となった。
パネル調査は、インテージのSCI―personalやクロスメディア、医療情報総合研究所の処方情報分析サービスが好調に推移した。カスタムリサーチの既存型調査は公的調査の需要が増えたことで売上が拡大した。一方、Web調査は、案件数は増加したものの単価の下落もあり横ばいとなった。
システムソリューションは、ここ数年間は減収減益傾向にあったが、顧客のIT投資が活発化したこともあり受注機会が増加した。特に医薬・旅行・健康情報分野の開発案件が増加した。その結果、売上高56億60百万円(前年同期比14.0%増)、営業利益4億80百万円(同222.9%増)と2ケタ増収大幅増益を達成した。
医薬品開発支援は臨床開発、医薬情報共に不振であったことから、売上高62億70百万円(同5.5%減)、営業利益△5百万円と減収減益となった。4月に発表してとおり、臨床開発部門は伊藤忠商事への売却を決定している。医薬事業については、EDC(電子的臨床検査情報収集)、DM(症例データの各種管理業務)の受注が増加してきている。また、この事業分野については業界の流れが紙ベースから電子化へ進んできているため、これまでの電子化への投資が結実しつつある。
前期業績についての説明の後に、同社代表取締役社長宮首賢治氏は第10次中期経営計画を振り返った。
「社長に就任した3年前は、10次中期経営計画がスタートする時であった。就任後2週間で大震災が発生した12年3月期は、売上高366億50百万円と何とか増収増益を達成、14年3月期は425億円だったので、この3年間で約60億円増加したことになる。また、震災以降も投資の手は一切緩めないという方針で積極的に投資を行うとともに、全事業のあり方についても見直しを行ってきた。その効果もあって、営業利益は35億円まで伸ばすことができたが、中国事業とCRО事業はシナリオ通りには進まなかったと言わざるを得ない。しかしながら、営業利益率、海外売上比率、RОE、EPSはすべて改善している。
海外については、この3年間でベトナム、香港、タイ、インド、インドネシアの5か国に展開した。その結果、海外売上比率は当時の3.3%から7.1%に伸びた。国内と合わせると全部で22社と、3年間でグループ内の企業数は倍増しており、リソースの充実を図った3年間だったと言える。」
第11次中期経営計画に関しては、基本方針は、「リノベーション&イノベーション」を掲げている。現在、価格競争の激化とともに、競合である企業が同社の得意領域であるパネル調査に入り込んできている。そのような状況下で、同社としては主力事業の再点検を行うと同時に、今まで作り上げてきた体制の中で次のイノベーションを目指す。
生活者をもっともよく知る企業として、「生活者起点」をキーワードに差別化を図っていく。特に、主力事業である小売店パネル調査を再強化し、市場価値の向上を図る。10次中計では消費者パネル調査に注力してきたが、今後は小売店パネル調査に注力する方針。
10次中計で重点的な投資を行ってきたモバイル&シングルソース、グローバル、ヘルスケア領域では11次中計での着実な成長を目指す。モバイル&シングルソースの領域では、ドコモ・インサイトマーケティングを中心に新たなサービスの開発を進め、確実に上市していく。
更に、「リサーチ」の枠にとらわれない、新たなビジネスモデルの模索と確立を目指す。リサーチだけでなく、ITの分野でもまだチャンスがあると見ている。今後はリソースを増やし、最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメントを強化して事業を加速していく計画。
15年3月期業績予想に関しては、アスクレップの事業譲渡完了まで譲渡資産の精査が必要として発表していないが、「当然、増収増益を念頭に置いています」(宮首賢治社長)と語っている。
配当については、今期30円と2円50銭の増配を見込んでいる。
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