2013年04月08日
決算情報メディアアイアール 日本インタビュ新聞社

クリーク・アンド・リバー社:13年2月期は売上高、利益ともに過去最高を更新


■営業利益率が4.2%から5.5%と1.3ポイントアップ

 プロフェッショナル事業を展開するクリーク・アンド・リバー社<4763>(JQS)の13年2月期連結業績は、プロフェッショナルに対する需要が旺盛であったことから、売上高、利益ともに過去最高を更新した。

 売上高189億98百万円(前年同期比20.4%増)、営業利益10億45百万円(同54.8%増)、経常利益10億89百万円(同49.4%増)、純利益4億71百万円(同85.7%増)と大幅増収増益となった。

 セグメント別の売上高を見ると、クリエイティブ分野(日本)では、映像、ゲーム、Web等の既存の各分野で増収となったことから、111億95百万円(同11.7%増)となった。

 クリエイティブ分野(韓国)は、22億7百万円(同9.9%増)と、TV局数の増加により、派遣稼働数が増加したことで売上が伸びた。

 医療分野については、25億34百万円(同17.7%増)と医師の紹介事業が順調に伸長したことで、大幅な増収となった。

 IT・法曹・会計他については、すべての分野で増収となったことから31億45百万円(同82.7%増)と大幅増収を達成した。

 セグメント別の営業利益は、クリエイティブ分野(日本)6億20百万円(同36.6%増)、クリエイティブ分野(韓国)34百万円(同19.1%減)、医療分野3億39百万円(同46.8%増)、IT・法曹・会計他41百万円(前年△63百万円)であった。増収が大幅増益の要因であるが、営業利益率が4.2%から5.5%と1.3ポイントアップしたことも大幅増益の要因といえる。

■既存事業が順調に拡大している一方で、前期より、新分野での準備を開始

 既存事業が順調に拡大している一方で、新しい分野でのプロフェッショナルニーズもあることから、前期より、新分野での準備を開始し、将来に向けた取り組みを行っている。

 今年の1月16日には、建築分野に進出することを発表。既に、建築エージェンシー準備室を設置し、建築業界のマーケティング活動を開始している。

 建築分野進出の背景には、日本に約34万人の一級建築士、約73万人の二級建築士がいて、その活躍の場は海外に広がっている一方で、建築士事務所の仕事は長引く不況による影響で縮小している反面、公共工事は今後拡大傾向にあるという現状がある。

 そのため、同社では、人材の流動性が高いとは言えない建設・建築業界で、新たな仕事の可能性を提示することによって建築士の生涯価値の向上をはかり、設計事務所・建築関連企業の価値創造への貢献を目的として、建築エージェンシー事業を展開することを決定した。

 更に、2月27日には、ファッション・デザイナーのエージェンシー事業を本格的に開始することも発表している。

 人材の流動性が高いファッション業界で、新たな仕事の可能性を提示することによってデザイナーの生涯価値の向上をはかり、デザイン事務所および関連企業に価値創造を提供することを目的として、ファッション・クリエイター・エージェンシー事業を展開する。

 サービスメニューとしては、国内外のデザイン案件のプロデュース(案件の請負と紹介等)、デザイナーの紹介・派遣等を予定している。海外でのプロデュースに関しては、上海、北京、ソウルの現地法人や、台湾、東南アジア等の関連する企業からファッション情報を収集し、日本のデザイナーに多くのプロジェクトを紹介することを積極的に行なっていく。準備室を開設する前から、数多くの案件情報が既に同社に寄せられていることから、事業を開始することを決定した。

 このような新事業は、今期の業績予想には含まれていないが、数年後には、業績拡大のけん引役になるものと予想される。

 今期14年2月期連結業績予想は、売上高200億円(前期比5.3%増)、営業利益12億円(同14.7%増)、経常利益12億円(同10.2%増)、純利益5億50百万円(同16.7%増)と2期連続の最高益更新を見込んでいる。

■昨年は約400冊の日本の書籍の版権を中国・台湾・韓国で仲介、3カ国で同時に出版できる仕組みも作り上げる

 今後の事業戦略について、4月3日に開催された決算説明会で、代表取締役社長井川幸広氏は、以下のように語った。

 「プロフェッショナルに対するニーズはこの数年間継続しています。また、既存事業と共に、新規事業の加速によりさらなる成長を見込んでいます。日本のクリエイティブ分野の既存事業では、TV、ゲーム、Web等クリエイターへのニーズは引き続き堅調であります。また、既存事業から、枝葉のように新規事業を伸ばすことでて成長戦略を描いています。例えば電子書籍事業に関する電子書籍の取次ぎ事業です。現在、電子書籍のマーケットが急激に膨らんでいます。当社としては、楽天Kobo、Amazon Kindleの両方に書籍の取次ぎを行う契約を結んでいます。そのような中で、出版社の引き合いによる電子書籍の取次ぎ、あるいは作家自身からの要求も増えている状況です。将来的には作家エージェンシー事業へと進展させていく計画を立てています。それからSAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)事業ですが、これまでゲーム制作は請負で行ってきました。ところが、SAP事業は自社でゲームを開発し、DeNA、GREE等のプラットフォームで販売しますので、リスクを伴います。昨年は6本の自社開発タイトルを制作しました。これまでリリースしてきたタイトルの中からベストセラーに近い作品が出ています。これからは、請負とSAPを組み合わせ、リスクを軽減しながらこの分野にチャレンジしていく計画です。次に、アジアに対する出版事業についてですが、日本の書籍はアジアでは非常に人気が高いといえます。それで昨年は約400冊の日本の書籍の版権を中国・台湾・韓国で仲介しました。また、3カ国で同時に出版できる仕組みも作り上げています。」と現在の取り組みを紹介した。

■今期売上高200億円と見込んでいるが、新規事業の売上を含んでいないので、上ブレする可能性が高い

 次に、韓国のクリエイティブ事業に関しては、「韓国国内での競争激化により、利益率が低くなっていることが課題となっていますが、トップクリエイターの人たちが育ってきましたので、このマネジメントに注力することで、付加価値を高めていきます。」と利益率の改善について、方針を示した。

 医療分野については、「医師の紹介事業は引き続きニーズがあります。そのため、この足場をしっかり固めていく方針です。その一方で、医療機関、地方自治体向けのサービスとして、様々なサービスを作ることができます。このことを今期検討していく予定です。」と語っている。

 IT・法曹・会計については、法曹・会計は派遣・紹介を中心にしながら、一方で、ITに関しては請負受注を勘案しながら事業を進める計画。

 新分野としては、建築・ファッション分野でエージェンシーを立ち上げている。建設分野の市場規模を表す数値として、建設投資43兆円、建築士104万人、ファッション分野として、アパレル産業6.3兆円、ファッション・デザイナー3.2万人と発表されていることから、両市場ともに大きな市場といえる。

 以上のように、既存のプロフェッショナル事業は順調に拡大している中で、さらに他の分野でのプロフェッショナルへのニーズが旺盛であることから、今期より、建築・ファッション分野へ進出し、事業領域を拡大することで、事業規模の拡大を図る。これまでの既存のプロフェッショナル事業で蓄えたノウハウを生かすことで、新規事業への進出は効率的に進むものと思われる。

 今期売上高200億円と見込んでいるが、新規事業の売上を含んでいないので、上ブレする可能性が高い。なお、5年後には営業利益20億円を最低ラインとして計画したいと指標を示している。

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