星光PMC:第2四半期連結業績は減収増益
■通期連結業績予想については、下半期に収益性の高い製品を投入することで収益改善を見込む
製紙用薬品の星光PMC<4963>(東1)は20日、今期13年3月期第2四半期決算説明会を開催した。
代表取締役社長乗越厚生氏は第2四半期の概要、通期見通し、事業別動向、経営戦略の順で説明を行った。
第2四半期連結業績は、売上高107億36百万円(前年同期比7.6%減)、営業利益5億円(同16.7%減)、経常利益5億25百万円(同14.2%減)、純利益3億34百万円(同7.6%減)と減収減益であった。
主力の製紙用薬品事業においては、紙・板紙の生産量の減少により、樹脂事業では世界的な需要後退の影響を受けたことにより、共に減収となった。
通期連結業績予想については、下半期に収益性の高い製品を投入することで収益改善を見込んでいることから、売上高217億40百万円(前期比4.3%減)、営業利益12億60百万円(同18.9%増)、経常利益13億20百万円(同19.3%増)、純利益8億40百万円(同140.1%増)と減収でありながらも増益を見込む。
下半期(10月〜3月)の事業別の業績予想は、製紙用薬品事業の売上高は、78億62百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益6億32百万円(同82.7%増)と増収大幅増益を見込んでいる。売上高に関しては、幅広いソリューションの提供を通じて販売増を図る方針であるが、国内の紙需要の減少の影響もあり微増と予想している。一方営業利益については、販売構成の高利益率化、合理化等の収益改善策を実施することで、大幅増益を見込む。
樹脂事業については、売上高31億43百万円(同4.4%減)、営業利益1億28百万円(同14.3%増)と減収増益の予想。売上高に関しては、欧州の金融不安による記録材料関連製品の販売へのマイナス影響は続くものと見ている。
■中期経営計画「CS VISION−T」は目標達成のための第1ステージ
その様な状況の中で、同社は、6年後の2017年に設立50周年を迎えるにあたり、連結売上高350億円、営業利益率10%の達成を目標としている。
そのため、中期経営計画「CS VISION−T」(2012年度〜2014年度)は目標達成のための第1ステージとしての位置づけにある。
中期経営計画「CS VISION−T」の経営戦略の基本方針として、選択と集中、事業領域の拡大、外部資源の活用、筋肉質の企業体質と4つの方針を掲げている。
同社の強みが活きる成長分野・製品への資源の重点配分を行うことで選択と集中を図る。
事業領域の拡大については、中国・東南アジアを中心とした成長市場への業務展開を加速する一方で、エレクトロニクス関連材料、再生可能な環境材料に重点を置いた新規業務分野の開発と事業化を進めることで対応していく方針。
また、強みを補完する提携、事業領域の拡大を加速する企業買収を推進し、外部資源を活用することで事業の成長を図る。
以上のことを実行する中で、生産体制の統合・再編等を通じて柔軟で筋肉質の企業体質へ変換していく。
数値目標としては、2014年度売上高270億80百万円、営業利益26億20百万円、営業利益率9.7%を挙げている。売上高の内訳は、既存事業228億80百万円、海外事業30億80百万円、新規事業11億20百万円となっている。
■製紙会社の操業性を向上させ、品質の安定化、省資源に向けたソリューションを提供
製紙用薬品事業では、製紙会社の操業性を向上させ、品質の安定化、省資源に向けたソリューションを提供していくことで売上の拡大を図る。具体的には、「板紙アルカリ抄紙システムの推進」、「紙、板紙の軽量化、高灰分化に適した薬品システムの開発」、「紙力剤、サイズ剤等各種ソリューション提供の基盤となる薬品の高性能化」、「ロジンサイズ剤からASAサイジングシステムへの置換」といった同社ならではの商品力、技術力を提案することで、売上の拡大を実現する。海外については、中国での拡販を進める一方で、東南アジア(タイ、ベトナム等)での市場を開拓していく方針。そのため、今年の6月に海外戦略を一元的に遂行する海外事業本部を設立している。
樹脂事業では、水性化、VOC(揮発性有機化合物)低減による環境に優しい高付加価値製品の投入による製品ポートフォリオの組換えを推進していく方針。
■現在最も注目されているのが、新規事業のセルロースナノファイバー(CNF)に関する技術
中でも、現在最も注目されているのが、新規事業のセルロースナノファイバー(CNF)に関する技術である。セルロースをナノサイズまで解すことで得られるCNFは鋼鉄の5分の1の軽さで、5倍の強度を持ち、しかもガラスの50分の1の低熱膨張性といった特徴を有する。同社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業である「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」に、京都大学、京都市産業技術研究所、ならびに王子製紙、三菱化学およびDICと共に参画し、CNFを樹脂中に均一分散させることにより、樹脂の強度を従来の3〜4倍に、熱による寸法変化を2割程度に抑える技術を開発した。本プロジェクトの研究成果を本年9月に発表した。同プロジェクトは、来年の2月に終了する予定。
本材料の軽量・高強度という特徴を活かして、自動車用の部材に留まらず、家電、住宅、包装・容器等の軽量化・高強度化や、或いはガラス繊維などの補強部材の置換が期待されている。同プロジェクトでは、自動車メーカーや機械メーカーをアドバイザーに迎え、同材料の実用化について検討を行っている。
本技術の開発において、同社の製紙用薬品事業で培った技術が、親水性であるセルロースの改質による疎水性の樹脂との親和性の向上、ひいてはCNFの樹脂中への均一な分散に活かされている。この技術が同社の売上に貢献するのは、2017年頃からと見ている。用途範囲は広いことから、今後の売上拡大に貢献するものと思われる。
この他に、導電性材料の「銀ナノワイヤ」がある。同社のコア技術を活かして作られた新製品で、導電性、柔軟性に優れていることからタッチパネル用部材、フレキシブルディスプレイへの用途が見込まれている。
以上のように、製紙用薬品技術を活かした新製品の開発も進んでいることから、製紙用薬品事業、樹脂事業といったこれまでの安定した売上に新規事業の売上が加わることで、今後の成長が期待されている。
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