Q.どうして少ない利益の株があがるのですか?不思議です。 |
株式投資を始めた人が早い時期にぶつかるのがこのことです。株もそうですし、人の世もそうですが、「安泰」と「変化」の間を行ったり来たりするものです。平穏な生活の時は、人は、退屈になって、アバンチュールを求めて火傷をする、という話はよく聞きます。
不景気になると、良かった時に無茶をしないで貯金しておけばよかった、平凡な生活がこんなにすばらしいものとは、と反省しきりです。株の場合も同じような感覚で動きますが、しかし、人の感情とは違って、かなりドライです。だめになって、消えてゆく企業の株は相手にしないという厳しさがあります。株には、現状維持の「安泰」より「変化」を好むところがあります。「今より明日」、「明日より明後日」です。
10年前に100億円の利益を上げていたが、今も同じ額の100億円では株は承知しないのです。人の世では立派な金持ちとして評価されますが株ではだめです。既に、100億円の企業には、それにふさわしい株価(値段)がついているからです。仮に営業利益100億円で5000円の株価がついていれば「株価水準」としては立派なものです。しかし、何年も利益が100円程度のままだったら5000円前後の株価水準はをキープできても2倍の1万円、3倍の1万5000円にはなり難いのです。
株初心者には100億円の利益を上げているのだから株価は2倍、3倍になるものという思い違いがあると思います。「安泰」と「現状維持」は大切なことですが、一面では、「安泰は衰退にもつながる」危険も内包しています。08年3月期に営業利益2兆円以上を上げていたトヨタ自動車<7203>(東1)が09年3月期は4500億円もの赤字に転落するように、利益額の大きい会社には下ブレの危険があることを覚えておいてください。むしろ、利益1000万円の会社が利益1億円となる企業の、株価の方が値上がりするのです。
仮に利益1000万円で株価50円だった場合、3年後に利益が実際1億円になっていれば株価も150円とか、200円になっているはずです。株価の「絶対値」(水準)と「変化率」(上昇率)は分けて考えることが大切です。「利益額の大きい会社は既にそれなりの株価に評価されている」、「利益額の大きい会社がさらに利益を2、3倍に増やすことは容易ではない」ということを覚えておいてください。