Q.個人投資家がアナリストに近い分析の目を持つことができるのは「営業利益率」を見ることだと教えられました。本当でしょうか。なぜ、営業利益率がよいのでしょうか?。 |
そうですね、分析のプロであるアナリストに個人が同じように分析で対抗することは無理です。むしろ、アナリストレポートを大いに活用するのがよいと思います。ただ、その際、個人の皆さんは詳細な分厚い「レポートを見るだけで頭が痛くなりそうだ」ということだろうと思います。 ぎっしり詰まったレポートはいくら内容がよくてもうんざりします。投資金額の大きい機関投資家には、業界分析から企業の生産、在庫等に至る詳細な分析は必要です。
しかし、投資金額が小さくて身軽に動ける個人には、それほど詳細な分析はなくてもよいのです。極論すれば『1株利益』と『配当』がどうなるかが分かればよいと思います。とはいっても、その企業の先行きがどうなるかという心配はあります。その兆し・気配を見るには、ご指摘の『営業利益率』の変動が大いに役立ちます。業界における競争力の向上、あるいは低下などが、営業利益率によって読み取れます。別の言い方をすれば、企業の強さは、この営業利益率に収束するといっても過言ではないでしょう。なかなかの優れものです。
営業利益は企業の本来の収益力を表すものです。メーカーの場合、物を作って、セールスマンなどの販売経費をかけて得た利益です。企業本来の儲けを表す利益です。
仮にA社の1株利益が50円程度で推移し、配当も10円を続けているとします。この企業の営業利益率が6%前後の推移から7%へアップすれば、このA社の1株利益は遠くない時期に55円とか60円へ上向くことが予想され、増配も期待できます。逆に、営業利益率が5%へ低下すれば、近い時期に1株利益の低下、さらに減配の可能性も出てきます。
営業利益率6%は、言い換えれば1個100円で売って6円の利益があったということです。それが7円に増えるか、あるいは5円へ減るか。売上規模が数億円、あるいは数100億円の会社にとっては1%の変動は大変な利益の開きになります。仮に、売上100億円の企業で営業利益率6%は6億円の利益です。1%アップして7%なら7億円の利益。反対に利益率が5%へ低下すれば5億円の利益です。
営業利益率がアップする場合は、(1)新製品等の寄与で販売価格が上がったとき、(2)安い価格の原材料へ切り換えたことなどによるコスト低下効果です。営業利益率がダウンする場合はこの逆です。つまり、営業利益率の上下変動は、企業の社会における存在感の強さ、弱さということにもなります。ぜひ、個人投資家の皆さんは、投資に当って「1株利益、」「配当」のほかに、もうひとつ「営業利益率」を加えてみてください。