Q.「投資をするに当って、マーケットの動きを見るうえで、個人投資家は日経平均とTOPIXはどちらがよいでしょうか。注意点もあったら教えてください。」 |
それぞれの歩みについて説明すると長くなりますので特徴を中心にお話します。日経平均は日本経済新聞社、TOPIX(東証株価指数)は東京証券取引所が、それぞれ発表しています。
対象銘柄は、日経平均は東証1部上場会社のうちの「225銘柄」、TOPIXは東証1部「全銘柄」です。さらに、大きい違いとしては、日経平均は「株価」だけが算定の対象であるのに対し、TOPIXは「株価」と「発行済株数」が計算のベースとなっています。いわゆるTOPIXは株価と株数を掛け合わせた「時価総額」方式です。単位は日経平均が「円・銭」、TOPIXは「ポイント」です。
こうした違いから、両者には、とくに「値動き」面において最大の特徴、違いがみられます。日経平均は、東証1部上場銘柄数1682社のうち225銘柄、全体の13%程度しかカバーしていません。しかも、株価だけが計算の対象です。つまり、値動きの大きい銘柄が225銘柄の中に入っていれば、日経平均の値動きは上下に激しいものとなります。かつては、ソニー、現在ではユニクロのファーストリテーリングの株価が動くことによって日経平均の変動は大きいといわれます。ひと握りの銘柄の影響を受けやすい特徴があります。一方、TOPIXは東証1部全銘柄の時価総額(株価×発行株数)方式ですから、仮に、人気銘柄の1、2銘柄が動いたくらいでは指数全体への影響は大きくありません。
日経平均と似た指数にNYダウがあります。こちらは、採用銘柄数が日経平均より、さらに少ない、わずか「30銘柄」です。良く解釈すれば、強い銘柄だけ30銘柄を集めた、「強いアメリカを象徴する」指標ということにもなります。NYダウの長い歴史の中で、最初から採用され続けているのは「GE」だけです。もちろん、GMは外されています。競争力が落ち、社会ニーズにマッチしなくなった銘柄は、どんどん入れ替えが行われます。NYダウは強いアメリカの象徴でなくてはならないからです。
NYダウも株価だけが計算の対象です。しかも、わずか30銘柄ですから、短期的には上下の動きが激しくなります。日経平均もNYダウも、こうした株価だけを算定対象とした指標であることを理解しておく必要があります。つまり、「日経平均はこんなに高いのに、自分の持っている銘柄は、ちっとも上がらない」ということが起きます。
その点ではTOPIXの動きがマーケット全体の動きに近いといえるでしょう。言い換えれば、「人気の日経平均」、「実力のTOPIX」とも言えるでしょう。
最近では日経平均が今年1月15日に1万982円と昨年来の高値をつけています。しかし、TOPIXは09年9月の高値987ポイントをいまだに抜けないでいます。TOPIXの方が、投資家の投資成果の実体としては近いのではないでしょうか。
政府の景気判断等にも日経平均がウオッチされます。個人投資家も先ず日経平均を見て、マーケットの人気的な強弱をつかんでください。そして、次にTOPIXを見て、マーケットの実体を見るようにすればよいと思います。