Q.ギリシャの財政危機が言われています。日本も他人事ではないそうです。しかし、金額が大きくて、一般個人にはピンと来ません。相場にとって、財政危機はどうしてよくないのですか。身近な例で取り上げてください。 |
そうですね、数百兆円の数字で言われても、別の世界のことのように思われます。しかし、簡単に言うと、財政赤字は「借金」と置き換えることができます。借金を返すことができなくなったときが財政危機です。個人では、サラ金から取り立てが厳しくなって、夜逃げとか、個人破産となってしまいます。企業では、銀行など金融機関から借りたお金が返せなくなり、最近の例では日本航空のように倒産となります。
しかし、「借金」は決して悪いばかりではありません。経済の大原則は、「収入」と「支出」の関係です。個人、企業、国家もこの基本式から逃れることはできません。問題は、この基本式のもとで、借金を返すだけの収入があればよいのですが、収入と支出のバランスが崩れたときです。仮に、借金で立派な本社ビルを建てたものの、増えるだろうと見込んでいた収入(企業では売上)が不況の到来で見込み外れとなって増えるどころか減少したときなどです。
もちろん、個人、企業、そして国家もある程度の貯えは持っていますから、当面はなんとか乗り越えるものです。しかし、不況が長引き、収入が増えないと大変です。人はとかく収入に対しては、増えるものとして、楽観的です。たとえば、日本に100近くの空港があるのも、空港をつくれば利用客は間違いなく増えるという楽観論です。(敢えて、楽観論ということもあるでしょう)。世の中は厳しいものです。支出は放っておいても増えるのですが、収入は天空から、勝手に降ってくるものではありません。ここに、企業ではコスト削減、新製品開発などの企業努力の必要が言われるのです。
しかし、この企業の努力に比べると、国家の収入と支出の関係は甘いといわざるを得ません。政治家が、票が欲しいため、国民に努力せよといって嫌がられるより、お金をバラ巻いて受けを狙うのです。このバラ巻きでもっとも恐ろしいことは、「もっと、もっと」と要求が増えることです。要求というものは、決して、低下することはありません。子供のお小遣いとおなじです。JALが破綻したのも、給与等の要求が強まり、しかも、お金がなくなれば国が出していたからです。収入以上に支出が膨らんだためです。ギリシャも公務員の高給、50歳代前半からの年金支給など支出が増えたことが原因と言われています。しかも、ギリシャは観光産業のほかには収入を増やす産業も見当たらないようです。
今回、EU各国が資金を出して、資金不足を乗り越えるめどが立ったようです。サラ金に追われて大変となっている個人を親戚がお金を出し合って、ひとまずサラ金から逃れることができたのと似ています。もちろん、既に、皆さん、お気づきのように、今後、ギリシャが支出を削り、収入を増やすことができるかどうかにかかっています。すでに、給与カットに反対してストも行われています。治安が悪化すれば観光客が減って、収入の道が閉ざされてしまいます。結果、どこかの国のように国家としての体をなさなくなり、テロ国家に落ちぶれる懸念さえあります。借金が膨れ、収入とのバランスを欠いたときは、一気に個人も企業も国家も崩れてしまうのです。
人は、突き詰めれば、「遊び」か「勤勉」かにかかっています。社会を形成する多くの人が、「遊び」に傾けば、収入は減り、国家への要求ばかりが高まり、支出が増えます。今の日本は、民主党が政権を確実にするための方法として、支出増加策に力を入れていると思われます。しかし、仮に、このまま、「勤勉」より「遊び」(総理は友愛という)が中心となれば日本の先行きは、収入より支出ばかりが増える危ない状態となることが予想されます。日本には、昔から、『稼ぐに追いつく貧乏なし』、『よく学べ、よく遊べ』という教えがあります。日本がギリシャの後追いにならないためには、われわれ国民ひとりひとりの勤勉性を取り戻すことではないでしょうか。