Q.メタボリックが健康に良くないといわれ注目されています。「企業」にも肥満のメタボはあるのでしょうか。 |
企業にも当てはまると思います。人でも企業でも肥満体質は心臓などに負担のかかりやすいことがあります。人間でメタボは内臓脂肪型の肥満がメタボと呼ばれ、高血圧、高血糖、高脂血が重なると、厄介な病気を引き起こす元になるといわれます。このため、脂肪がついて太ることは要注意といわれます。でも、最近、テレビで紹介していました。脂肪がつくことは必ずしも悪いことではないと。脂肪のつく場所が問題というのです。皮下に脂肪がつくのは、むしろ脂肪を蓄える力があるというのです。細身の人でも糖尿病などに罹るのは、脂肪が皮下ではなく、細胞の中についてしまう「異所性脂肪」が問題だそうです。脂肪酸が細胞を壊してしまって、たとえばインシュリンを出すことができなくなるのだそうです。
人間でも、あるていど太って、恰幅のよさは見た目にも頼りがい、安心感があります。企業でも同じではないでしょうか。無駄なものは一切、持たないスリム型経営も悪くはありません。しかし、本社ビルがあり、保有土地があり、保有有価証券などの資産があるほうがなんとなく安心感はあります。
問題は、太り過ぎないことと同じように、企業も資産を持ち過ぎないことです。人は物を持ちたがる動物です。家賃より有利ということなら、本社ビルを持つことも悪くはないでしょう。対外的にも信頼感があるし、社員にも、自分たちの本社という誇りにもなります。
しかし、収益に寄与しない立派すぎる本社ビルを持ったりすることが問題です。あちこちに土地を買い、ゴルフ会員権も次々と買う。モノを持てば、固定資産税に維持費など多くの経費がかかります。仮に、借入金で資産を持てば金利が発生します。多くの資産を持つこと、つまり「資産肥大症」が問題です。資産肥大症のことを命名した博士の名前からギルマン症状と呼びます。
資産肥大症かどうかを見るには、四季報に全上場企業の総資産が掲載されていますので参考になります。総資産と年間売上を比べてみるとよいでしょう。「売上」÷「総資産」=回転で求めます。業種によって異なりますが、大体、1回転が目安です。
たとえば、四季報10年春号では、トヨタ自動車の総資産は29兆5525億円、10年3月期の予想売上19兆円です。19兆円÷29兆5525億円=0.64回です。「資産規模に比べて売上規模が小さい」か、「売上規模に比べて資産規模が大きすぎる」か、ということになります。
このほか、見た目では分かり難いのが、在庫です。人間なら、異所性脂肪といえるかもしれません。在庫も資産のひとつとして注意が大切です。売れない在庫を持ちすぎれば、資金繰りに大きく影響してきます。このように、企業の体格に合った資産かどうか。中肉中背型のバランスの取れた経営が大切のように思われます。成人病が怖いといわれるように、企業にとっても、資産肥大症は体力を蝕む危険な症状です。